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霊界喫茶、Human world
Human world(=人間世界(訳))
ドアについた鈴が高らかに店内に鳴り響いた。
一斉に視線がドアに集まる。魔鬼はギョッとした顔をして、店内に足を踏み入れた。
魔鬼が真っ先に向かったのは、カウンターだった。そこは、魔鬼の定位置でもある。
「珈琲一つ。砂糖多めで」
「はいはい、いつものだね」
「あ、ああ」
「しかし、相変わらずだねえ」
「何がだ」
「ここに来るのは久々だろ?」
「まあ、確かにな」
「この店の中で一番視線を集めてると思うが」
「……だからどうした」
「いや、相変わらず目立つと思って」
「そういえばマスター、今年で何歳になる?」
「もう、百二十になるかな」
「そんなに歳とったんだ……」
「何か文句あるか?」
「初めて来たとき、まだマスター二十歳くらいだったのに」
「まだ、あいつが生きてた頃だな」
「まだ僕は十二だったな」
魔鬼は昔を思い出し、少し切なそうな顔をした。