死神、魔鬼結華
クリスマスに街を歩く少年が居た。黒のコートを纏い黒い艶やかな髪と紅い深紅の瞳をした少年。ぱっと見まだ中学生程の彼だが、かなり周りから浮いている。白く、恐ろしく整った顔をした彼は、死神と呼ばれる部類の存在である。一人の男が彼の傍を通った。少年は進む事を止め、先程自分とすれ違った男の後をつける。
「ねえおじさん」
男に声を掛けた少年の顔は、不敵な笑みを浮かべ、恐ろしく整っている。見た目こそ中学生くらいにしか見えないが、何十年もいや、何百年も生きてきたかのようだ。
「なんだい坊や?」
「ふふっお迎えですよ」
「は?」
「だから、お迎えですよ。あなたは今日死ぬことになってますから」
「何言って―」
「死神の決めた寿命は絶対だ。それ以上も以下も無い」
「……」
「はあ……本当はもう少し楽して連れてってあげたかったんだけどなあ」
一瞬で男をねじ伏せた少年は、そう静かに呟いた。
「水無月。後は任せた」
「はいよー」
先程まで少年と男しかいなかったはずの路地に現れた長い黒髪の男は気絶し、動く気配のない男を背負い、どこかへ消えて行った。少年は静かに路地を離れる。
魔鬼結華それが少年の名前だ。冷酷で完璧主義の彼には、他人に明かせない過去があった。