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ウェポンクリエイター

「おかしい事でも申しましたかしら」

「何でもない。この先もこのように固まって進むのでは訓練にもならぬと思っただけだ」

リーティカはちらと我を見た。

その目。

なにかおかしい。

我は目に力を込めた。

ぐるりと景色が入れ替わる。

「いや、何故そなたを少女などと思ったのだろうな」

今、我を睨んでいるのは三十代半ばのきつい目つきだけが目立つ平凡な顔立ちの女だった。

背すら伸びていた。

女性としてはかなり高い方だろう。

「もうばれたかい」

悪びれもせず、焦った様子もない。

うまくスキルにかかってしまったということだろう。

我自身は精神抵抗スキルを持っていないし、レベルも低めに抑えている。

考えがあってのことだが、そうも言っていられないかもしれない。

「もともとそんなに長い間かけていられるスキルでもないが、貴方は抵抗スキルもないのにかかりにくいなあ」

「他の生徒やマリエル教官はどうした」

立ち止った我等に誰も気を向けていない。

不自然なほどにこちらを見ない。

「誰も操ったりしちゃいないよ。バカバカしい。注目されないように、もし注目されてしまっても自分のイメージを歪めるようにしているだけ」

フェイの孤影掌を弱めたようなものらしい。

「そなたは何だ」

「それ聞くか……聞くよなあ、そりゃ。本当は正体を明かすとしてももうちょっと深層に行ってからのつもりだったんだよ」

「もう無駄だ。話してしまえ」

「アルカディア十人評議会の者さ」

リーティカはあっさりと告げた。

「レンデュライの仲間か」

「うん。彼は頼りになる男だよ。ちなみに、この企てに彼は関係ない。もし会っても責めないでやって」

「責めるも何も、意図を聞いていないが」

「落とし穴から下層に放り込んでちょっとしたピンチを演出しようか、とね。その場合、わたしは途中で無理のない形で抜けることになったろう」

「正直だな。それがしが怒るとは思わないか」

「そもそもピンチになる遥か前に見破られているからね。少々自信をなくしたよ」

「なぜそのような事を考えた」

「途中で助けに入って恩を売るとかかなあ。そこらへんの動機については一人で考えたことじゃないから、なんともいえんね」

嘘はついていないようだが、本当の事ばかりでもないだろう。

しかし、本当に十人評議会の者であれば、敵対は避けるべきだ。

「ばれてしまったのならそうした馬鹿げた行為はもうない、と思ってよいのだな?」

「わたしに関してはね。他の人はどうだかなあ」

「わかった」

「え、いいの?」

リーティカは意外そうに言った。

「どうせ、今すぐどうにかしようとしても無理だろうからな。我がアルカディアと冒険者学園にとって害でないと納得してもらえるように行動いたそう」

「うそくさいなー」

勝手な事をいう奴だ。

「で、この後の行動はどうするのだ。パーティーごっこはもう終わりだろう」

「あー、いや普通に六階までいこうか。当初の目的通り」

「何のつもりだ」

「あなたのような存在にどういう武器が与えられるか興味があるんだ。恩を売るのは私の目的にも叶うしね」

そういうと周りの戦闘には頓着せずに歩き出した。

「後ろについてきて。スキルの範囲を伸ばすから」

「パーティーが一つ消えることになるぞ。マリエル教官には伝えた方がよい」

「もう言ってあるよ。彼女の中では私たちは用事があってもう帰還したことになってる」

「彼女の中では、か」

操っていないというのは限りなく嘘に近いな。油断ならぬ。


「いくつかショートカットするよ。ついてきて」

リーティカは絶妙な速度で前を進む。

敵らしき影は決してこちらに近づけず、入り組んだ道を何の迷いもなく歩いて行く。

"ショートカット"というのは階と階をつなぐ特殊な階段のことらしい。

それを使えば手早く迷宮を降り、昇ることができるようだが、どこがどのように繋がっているかを絶対に覚えさせないように先導しているのだ。

「わたしたちしか知らない道があるっていうのは十人評議会の強みの一つでね。圧倒的な数の敵に攻められたら迷宮に籠って持久戦をするんだ。そういうのが過去百年で二回あった」

このように話しかけてくるのも道を覚えさせないようにする手管の一つなのだろう。

「武器を作ってくれるという機械は、アルカディアの祖先が作ったものなのか」

「いや。誰が作ったという話は伝わっていないねえ。竜人が作ったならわたしたちに自由に使わせるのは変な気がするし。とにかくずーーーっと昔からある、変な仕組みの一つなのさ……そこ降りるよ」

迷宮の本道から外れた場所に下に向かって開く坑道の切り羽のような道があった。

かなり狭く、天井が低い。

「もうすぐ着くよ」

降り始めてから一時間とは経っていないだろう。

「早いな。もう六階か」

「六階の一部だね。ここからほかの区画にはいけないんだ」

降り立った部屋にはたしかに外に通じる道が一切なかった。

その真中に奇妙なものが鎮座している。

「アルカディアが誇るワールドアイテム。"ウェポンクリエイター"だ」

しかしそれは機械というよりは巨大な青白い肉のかたまりのように見えた。


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