クラスというもの
我等はアルカディアの広場の掲示板を眺めていた。
入学試験の結果とクラス分けが書き出されていたからだ。
冒険者学園に入学する者には前歴も実力もかなりの幅がある。
十歳が最低入学年齢、ということのほかに決まっているのは概ね卒業までに六年を要するということくらいのものだ。
年少クラス、中等クラス、上級クラス。
等分すると二年で上のクラスに昇格することになるが、もちろんそんなうまい具合に行きはしない。
それぞれのクラスに卒業試験が課されるからだ。
先日の"竜園"で会ったのは年少クラスの卒業試験に来ていた者たちである。
そして年少クラスの引率をすることによって上級クラスの卒業資格を得ようとしていたのがアリンディルだ。
これにも例外はある。
入学試験、もしくは各クラスの卒業試験で桁違いの力を示した者はいきなり上のクラスになり、もしくはその修行年限を短くされることもあるのだ。
ただ、そのような特例が認められる頻度は極めて少ない。
六年ですら過重と思われる課題が常に課される上、飛び級を行おうとする者には有形無形の圧力がかかるからだ。
結果として六年かかり、十五歳で卒業できれば優秀、一年、二年の延長でも当り前、というほどが冒険者学園の修行に要する期間であった。
入試結果を上から見よう。
この年齢では異例なほどの強さを持つウルスラ王女が一位通過、接近戦では騎士も顔を背けるであろうエルネシアが二位通過。
それでも飛び級は適用されず、年少クラスから地道に始めることになっていた。
ところで、我等"混沌の渦"は。
合格者の掲示板に載せられていない。
全体の名簿が一段繰り下げられ、次の文句だけが上に書き足されていた。
「冒険者パーティー"混沌の渦"。かの者等を一年限りの客人として上級クラスに加える」
素直に入学させてはもらえぬようだな。
「ええと、わたしたち、入学はさせてもらえた、んですよね?」
フェイが自信なさげに言う。
「飛び級ってやつじゃないの?すごく強い人はたまにえらい人のクラスにいれてもらえるって話だったでしょ?」
アリスはなにかあいまいな理解をしているようだな。
「入学という形ではないが、一年限りながら参加はさせてもらえるようだ。結果としては同じだ」
同じ、という部分に反応したのだろう。二人が肯く。
面倒になったらしい。
「"混沌の渦"の方は上級クラスとの面談がありますのでこちらに」
職員が案内に現れた。
フェイが無遠慮に聞く。
「上級クラスってあのアリンなんとかって子のいるところだっけ?」
「アリンディルは既に卒業資格を得ました。加わって頂くのは今年上級クラスに上がった者達です」
「ふーん」
「それがしもこの両名も一応新入学ということになる。一年限りとはいえ生徒にそのような丁重な態度をとらなくてもよいのではないかな」
「いえ、あなた方は生徒としては扱わないように指示が出ておりまして」
「そうなのか?では我等の扱いはどうなるのだろう」
「ですから客人ということでですね」
職員にもよくわかっていないらしい。額の汗が大変なことになっている。
「そうか。わかった」
あまり問い詰めても仕方があるまい。
「新しい上級クラスに編成される者は七十名、三つの組に振り分けられているところですが」
嫌な予感がする。
「待て、各組に一人ずつ入れというのではあるまいな」
「は、はい。そういうことになっているのですが」
これは、フェイとアリスを個別に懐柔しようとする腹なのか。
たしかに我を制しようとするなら最も可能性の高いやり方だ。
しかも、敵対的な行動ではないから断る理由も表向きはない。
そして、我自身特に断らねばならないとも思えないのだ。
二人を眷属とすることにより、その自由意思を掣肘してしまっている可能性を考えるなら、いくらかでも距離を置くのは悪いことではない。
ただし、説得は難しそうだ。
「無理です」
「代わりに夜同じベッドにしてくれるならいいです」
何を言う。




