冒険者学園
「君たちだってこんな得体の知れない男より、僕のほうが」
「「本当に殺すぞ」しますよ」
アリンディルは存外にしつこい。
二人の殺気が黒いオーラになる前に止めた方がよい。
「二人とも、よせ」
「「はい!!」」
アリスとフェイがこちらをむいて無邪気に笑った。
女冒険者に厳しいと思っていたが、男にも厳しいようだ。
アリンディルは少し涙目になっていた。
「すまぬな。この者らも慣れてくれば他のパーティーにも参加させようと思っているが、今はこんな調子なのでな」
愛想のつもりで言ってみたのだが返事はない。拗ねさせてしまったようだな。
「ありえないですー。いくらヨーハン様の言葉でもそれはないですー」
「ハイデンベルク様の言うことなら何でもしますけど、絶対にこんな奴のパーティーには入りたくないです」
うつむいた頭が一段下がった。
お前ら容赦がなさすぎるぞ。
「ほんとに懐かれてるねえ」
ロトノールが黙ってしまったアリンディルの代わりに言った。
特に怒ってはいないようだ。恩人の弟ということだったが、面倒を起こしているのだろうな。
そういえば、この馬車に乗る者を決める際にもアリンディルが乗ると知ると何人かの少女の間で小競り合いが起こり、面倒を避けるために全て乗せないようにしたのだった。
この顔と実力とで多方面に手を出しているのであろう。
しかし。
「ハイデンベルク様とそんなガキを比べるなんて」
「ヨーハン様とじゃ比べる対象にもなりませんよね」
フェイとアリスの目は冷たかった。
「そろそろ許してやってくれないか。これでも学園では先輩になるわけだしな」
「そうだな。お前たちもそろそろ他者と馴染むことを覚えてもよい」
我も口添えしたが、それでも二人はろくに口を聞こうとはしなかったのだった。
結局、ロトノールとアリンディルは次の休憩で別の馬車に移り、代わりに若い男子生徒が二人乗ることになった。
両方とも両腕を火傷している。
最初にファフナーを発見し、ロトノール達が来るまで対峙していたためだという。
年はフェイより少し下であろうか。
冒険者学園の入学は十歳から許可されているが、実戦訓練は最短で二年の座学や模擬戦などを経て行われる。
彼らの年齢からして入学年限を満たしてすぐに試験を合格し、ほぼ最低年齢で実戦を経験したわけだ。
今回のグループは低年齢の者が多い。もっと年がいった者でもわざわざ小迷宮で訓練を積まないと受からない冒険者学園に入っているわけだからそれなりの腕の持ち主なのだ。
「若いな。優秀なのだな」
何の気なしに言ったが、二人はぶんぶんと手と頭を振って、それから傷に響いて痛そうな顔をした。
「お二人みたいなことはとてもできません」
「上には上がいるんだって思いました」
フェイとアリスは途端にニヤニヤしはじめた。二人とも最近まで底辺冒険者だったので褒められることに慣れていない。
「あんたらけっこーわかってるじゃないの。さっきのバカとは雲泥の差ね!」
フェイがアリスの言葉に肯く。
「アリンディル先輩のこと、でしょうか?」
少し背の高い方がびっくりした顔で言う。
「名前なんか覚えてないですけど、本当にバカな人でした。ヨーハン様の御前じゃなかったら命はないです」
「刻んでやろうかと思ったわ~~」
やめろ。震えているではないか。
しばらくして我等は何事もなくアルカディアの冒険者学園に着いた。
貴族が入学するのは珍しくないこの学園にも、王族は多くない。
妙にまとわりつく視線は王女と同じ一団にいるせいであろうと思われた。
しかし、その注目が幾分間違った情報に基づくものであったことを我等はすぐに知ることになる。
フェイが聞いてきたところによると、王族の入学者は二組いることになっていたのだ。
まず、銀髪のバトルハンマー使いを護衛とするウルスラ王女。
これは何もおかしくはない。
しかし、凶暴な赤毛の美女と凶暴で可憐な美少女を護衛とする黒い鎧の大男。つまり我も王族であるという噂が広まっていたのだった。
なぜだ……。




