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戦闘

どちらに加勢する?

この世界で悪魔騎士がありふれた存在で、なおかつ人間の大敵であるということは考えられた。

そうすると人間側を助けても町に連行されて即座に縛り首になるだろう。

悪の勢力であろう奇妙な大男たちなら、悪魔の姿の方が受け入れられやすいのかも知れぬ。

だが、明らかに人間側が不利な状況で、大男たちに加勢することで得られるものは少なかろう。

聖職者同士の勢力争いでも、敗北が確定しそうな時に助けてやることで多大な恩を売ることができた。

なにより、悪の勢力においては、こうした場合に加勢することが必ずしも善意の証とは取られぬ。

獲物を横取りしに来たと思われかねないのだ。

まず人間側を助け、受け入れられないとわかれば、悪の勢力を探して実力を示し、支配下に置くという流れがよかろう。

まずは情報である。

我は魔術師。

この世界における最初の一撃は魔法によるべきであろう。

「地獄の女神の名において命ず……」

生命に対してのみ効果を発揮する"死の指"の術が背を向けている大男に向かって放たれた。

「……?」

効いていないように見える。

術は確かに発動した。だが、いわく言いがたい感触が伝わってくる。

言わば、弾の入っていないマスケット銃を撃ったような。魔力がこめられない。

我の魔力の源は地獄の霊どもとの契約であり、この世界では、我の知る地獄界との距離が遠すぎるのかも知れない。

想定しておくべき事態であった。オールドワールドでも、真に神聖な場所では我の魔術が届かないことはあり得たのだから。

すでに護衛の数は七人にまで減り、これ以上の遅滞は好ましくない。

自分の防御能力が不明な状態で接近戦はしたくなかったがやむを得ない。

気を引くために走りながら大声をあげる。何人かが振り向いた。

折り取った大枝を最も近い大男の腹に叩きつけると、槍のように貫通して地面に縫いとめた。

それでも死なずに騒いでいる。恐るべき生命力だ。

そやつの手から落ちた両手剣を拾い、素振りをくれてみた。

バランスが悪く、おまけに錆だらけの鈍らな青銅剣だ。

しかし軽く振ることが出来る。剣術など修道院に入る前、父上の護衛騎士に手ほどきを受けて以来であるので扱いやすいのはありがたかった。

剣の平で死に切れぬ串刺しの大男の頭を叩き潰す。

今まで気づかなかったが、我の体格は怪物じみた大男たちをしのぐ。

騎士たちの最も背の高い者より頭一つは抜きん出ているであろう。

なるべく近寄らせないよう、剣を片手で長く持ち、弧を描いて振り回した。

手ごたえなく、二つの首が飛ぶ。

いまだに大多数の大男は此方を向いていない。戦いの狂熱に支配されているのであろう。

好都合だ。道を固めているものどもを含め、飛び道具を持っているものはいない。

頭をめがけ、横なぎに剣を叩きつける。頭蓋骨の割れる音が響き、即死した大男がけいれんしながら転がる。

何度目かで、剣が折れた。

つかみかかってくる大男の頭をを左手で掴み、折れた剣を別の敵に投げつける。

"蝕み"

頭の中で声がして、掴んでいた左手が何かを奪い取った。

大男はもう叫んでいない。死んではいないが、一回り小さくなったように見え、顔色が何日もたった死人のように黒くなっている。

悪魔騎士の体に備わった力なのか。

手を離すと、大男はふらふらと背を向け、剣を振り回して仲間に突っ込んでいった。

生命力を奪い、強制的に魅了する力というわけだ。便利ではあるが、いかにも邪悪で、人前で使うようなものではない。

死体から奪った剣を両手にそれぞれ持ち、ところかまわず振り回す。

魅了している大男も巻き込んで殺すのがよかろう。


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