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冒険者学園?

「まずは冒険者学園に入学するべきだろうな」

ちょっとまて。

なんだそれは。

「フェイはたしかにまだ子供、しかし、アリスもそれがしも成人でござるが……」

「ああ、君は冒険者学園を知らないか。無理もないな。この町ではほとんど見ないから。冒険者にも二種類ある。生きるためになる者と、自らを高めるためになる者だ。お嬢さんたちは前者だろう」

フェイとアリスには嫌な話ではないか。

そう思って二人の顔を見たが、まったくその通りだという表情しかない。

「これは別に彼女達を卑下しているわけじゃないのだ」

ハルキス伯爵は苦笑した。

「ハルキスに集う冒険者はそうした生きるために冒険者になる者が大部分だからね。だが、たまにいないかね?小迷宮あたりに場違いな綺麗な鎧を着て、いい武器を持っているが実力はさほどでもない者たちが」

うんうんと二人が肯く。

「それは自らを高めるために冒険者になり、しかし冒険者学園に入学するほどの実力がない、という半端者達だ」

「つまり、上流階級の冒険者志望者は、その冒険者学園に入学するのが普通、ということなのでござろうか」

「その通りだね。もちろん入学試験があって、それがまたなかなかの難関なのだよ。およそ志願者の五人に一人というところが合格率で、それも上位合格でないと意味がないと思う者も多い」

なにしろ主席から最下位まで情け容赦なく街中で掲示されてしまうから、とハルキス伯爵はいう。

「最下位合格であれば受からぬ方がまし、というのは不合格者の戯言にすぎないけどね」

「それはまた強き向上心をお持ちの方々でござるな」

「ん?ああ、自らを高めるために、というところか。高めるのは実力とか、精神力とかいう高尚なものもあるが、実家における継承順位とか、仕官の際の地位の高さとかであったりもするからねえ」

形而下的な利益も向上心の糧になるということか。

「それで、だ。その冒険者学園の敷地は竜人族のテリトリーに含まれている。竜人は強力な種族で、魔人も多い。魔王が出るならこの種族からかもしれないといわれているね」

「なるほど。その冒険者学園にも迷宮があり、そのいずこかで竜人族と接触する縁があるかもしれぬ、ということでござるな」

「ご明察だ。入学の手続きに関しては問題ない。今から急げば入学試験が始まる日時に間に合うだろう。試験そのものは君たちにとってどうというほどのものじゃない。それに、後から紹介するが、今年はハルキスからも入学希望者のパーティーを送るつもりなのだ。できれば彼女らの護衛も引き受けてくれれば助かる」

彼女ら?女性なのか。

微妙にひっかかるものを感じたが、話そのものはこちらの利益に叶うことだ。

「感謝いたす。所在については詳しくお教えいただけようか」

「もちろんだよ。外国に行くことになるので、注意してもらいたいこともある」

ハルキス伯爵によれば、ハルキスを含むエヴィアは近隣の諸国に対して遠交近攻策を取っている。

大陸の南西に位置するこの地方、ヴァンダールは南と東をを海に面し、北と西を大きく横切る山脈に画されて大規模な侵入も久しくなく、十四ほどの小国が覇を競いながら外敵に対してはゆるやかな連合関係にある。

使われている言語と文字は語彙の一部を除いてほぼ共通で、古代の統一帝国を源としている。それをこの国ではエヴィア語として使っているわけだ。

再統一を唱える国は一部にあるが、どれも都市国家三から五からなる小国で国力に大差はなく、攻め手に欠けるので、なるべく利害が被らない相手と同盟を組んで数の上で差が出ないように苦心するのだという。

エヴィアは迷宮以外では農業国であり、塩や海産物、貿易などで互恵関係にあるパサスと長年に渡る同盟を結んでいる。

逆に北部に面するクルサルダ、ベーメンの両国とは毎年のように小競り合いを繰り返す宿敵であり、牽制のために更に外側にある幾つかの国に婚姻や資金提供を通して友好を維持しているという。

「冒険者学園はこの離れた友好国の一つ、リディカの近くにある」

「近く?」

「うん。冒険者学園は数少ない独立した都市国家にあるんだ。名前をアルカディアという。冒険者の評議会に治められる都市で、その評議会の武力が近隣国に併合されない理由の一つだよ」

「なかなか面白そうな場所でござるな」

「そうだろうね。君のような力があれば。私はとてもご免だがね。ところで、注意といっても漠然としたものなんだが、いろいろな国から来ている生徒がいるが、出身団体には気をつけておいたほうがいい」

「お話にあったクルサルダ、ベーメンの出身者にであろうか」

「いや、しょせん冒険者志望者にすぎないし、そんな者に害されるような君たちでもないだろう?気をつけてほしいのは教師を含む聖職者だ。君のような存在はあまり歓迎されない可能性がある」

異端、異教ということか。

前世での異端審問を思い出し、我は戦慄と共に肯いたのだった。



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