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悪魔の尖兵がテンプレ異世界で茫然とする  作者: papaking
デーモン!デーモン!
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大迷宮踏破・準備

ゴランの店では武器は買えなかった。

置いてあったメイスは我にとってはどれも軽すぎたし、フェイに合う格闘武器も見つからない。

そもそも危険な迷宮でわざわざリーチの短い格闘を主武器にする酔狂者はそういないのだ。

絶無というわけではないが、あえて格闘を選ぶ者は実力者が多く、ハルキスに留まってはいない、ということらしい。

ないものは仕方がないのでアリスの防具を板金を多めに使った重いものにし、フェイも金属鎧に変える。

これでも全く負担にはならないはずだ。

軽い盾を作ってみたというので予備としてそれも買う。

「鑑定はしなくてよいのか」

ゴランが以前とは違って言われるままに装備を出してくれるので聞いてみた。

「あんたとその仲間に最大限の協力をするように言われてるんだよ。伯爵から直々にな」

あんたら何をしたんだ、とゴランは真顔で聞き返してきた。


適当にごまかして次は冒険者ギルドに向かった。

「パーティー登録にいらしたんですね?」

すでにサリシアから聞いていたらしく、フェリシアが迎えてくれた。

「キレイどころを揃えてハーレムパーティーですね。ばくはつしろ」

茶を出しながらメイドのヴェンナが毒づいてきた。

大半の言葉の意味がわからぬ。

「こんな色気のない女と小娘で作るハーレムなどない。我等は冒険者パーティーなのだからな」

そういうとサリシアの顔がひきつり、女性メンバーから殺気が立ち上った。

真面目に冒険者として活動しているという意味なのだが……。

「あはは……ハイデンベルクさんの女性のお好みがよくわかりませんね」

「好みなどはないが、ハーレムというのは後宮のことであろう。後宮の策謀や女同士の陰湿な虐めなどを知っていれば足を向けたいとも思わぬな。それがしには仲間がおれば十分だ」

「……これはどうなの?ほめてるの?頼りにされてるの?」

「仲間……でも小娘……小娘だけど仲間……」

「ま、まあ迷宮を突破するためにはメンバー同士の絆とか大事だって言いますよね?魂の絆かー、うらやましいなー」

フェリシアの言葉にフェイとアリスは目を輝かせて何度も深く頷いた。

なぜだ。なにかしらの危険を回避したような気がするぞ。

訳はわからないが、フェリシアに感謝すべきなのか。


「倉庫掃除はいやあああああ!軽口じゃないですかああああ」

ヴェンナはフェリシアから倉庫管理人に引き渡されて引きずられていった。

哀れだが自業自得……前にも同じような光景を見たな。

「こりない奴だ」

「ハイデンベルクさんもあまり人のことは……いやいや、パーティー登録をしましょうね!」

「うむ。"混沌の渦"だ」

「珍しい名前ですね。海にちなんだ名前とかなんでしょうか」

「故郷の地名でな」

「へえ……まあパーティーネームに特に制限はありませんから何でもいいですけどね」

フェリシアは手早く書類の準備をしていく。

「では鑑定しておきましょうか。ハイデンベルクさんはそのままでしょうけど、他の二人はレベルもあがってるでしょうし、その情報を書き込むので」

来たか。我はともかくフェイとアリスは鑑定を拒む理由がない。

やむを得ぬ。

二人はそれぞれ鑑定石に掌を乗せた。

「これは……」

フェリシアの目が驚愕に見開かれる。

「聖戦士、と聖闘士?」

「フェリシア、少々訳があるのだ」

我はあいまいな言い訳を口に出そうとする。しかしそれはフェリシアにさえぎられた。

「わかってます。実は伯爵様からギルド長と担当者の私にお話があって。ハイデンベルクさんとそのお仲間の鑑定結果を『何があっても』秘密にしておきたいと。ギルド内でも、ということです」

ハルキス伯爵がそこまで言ったのか。フェイとアリスについて知らぬはずなのに。

彼の推論がどこまで正しいのかはともかく、今回の事態については正確に見通していたということなのだろう。恐るべき男だ。

敵対しないように気をつけなければなるまい。

「だからこの職業は記載するわけにはいきません。今までどおり戦士にしておきます。この短期間で75レベルまで上がっちゃうアリスさんも相当おかしいですけど、それは今まで例がないわけでもないですから」

我等のカードが赤紫の毒々しい色になった。"混沌の渦"という名前が追加されている。

「魔族撃退と"セイラン"救出の功により四級冒険者パーティーの条件を満たしたと判断します。フェイちゃんは経験不足ですけど、それを差し引いても十分だと思います」

「私、いきなりこんな級になっちゃっていいんでしょうか……」

「レベルは足りてませんね」

フェリシアは容赦なく言う。

「でもこれはパーティーとしての力量を示すカードなので。リーダーのハイデンベルクさんが認めれば何の問題もありません。フェイちゃんが後ろめたいというならそれに相応しい実力を養えばいいことです」

その言葉にフェイは小さく頷いた。

「ハイデンベルクさんの本当の目的が何かわたくしは知りませんが」

フェリシアが初めて見るように我の目をみつめて言った。

「ハルキスの冒険者としては次に目指すのは一つです。おわかりでしょうか」

「大迷宮踏破」

「正解です!」

フェリシアは微笑んだ。


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