歩き出す
帳簿じみた文字は全てこの”ステータス”とやらを補完するもののようだ。
名前:ヨーハン・ハイデンベルク
種族:ハーフデーモン(地獄騎士)
称号:堕ちた者
称号:折れた魔杖
……このステータスとは我のことを表すものなのか。
ヨーハン・ハイデンベルグとは我が俗名、ハーフデーモンというのは混り者であることを示すようだ。
称号の下にもいくつもの項目があるが、解読できるのは一瞬で、意識をそらすとまた意味を示さぬ記号にもどってしまう。
恐ろしく気力を消耗する。あまり注視しないほうがよいのかもしれぬ。
目をとじても、そらしても消えないので、目障りではあるが無視するよりほかにない。
”ステータス”の始末に見切りをつけた我はクレーターの上にあがった。
杖も、護符もない。移動しようと思えば歩くしかない。
いつ終わるかわからぬ、それも半悪魔の命ではあるが、未知の土地を見るのは好奇心が刺激された。
体は最初ひどく軽く、たよりなく思えるほどだったが、岩から人の背丈の半分ほども飛び降りると硬い地面にくっきりと足跡がついた。
かなりの重さだ。軽く思えるのは筋力が高いせいだろう。
岩の上から、周囲には森しかないことがわかっていた。
目的地などないし、この世界にどんな生き物がいるかもわからぬ。
強力な敵対者がいて殺されるかもしれぬが、それはもうあきらめるしかあるまい。
我は奇妙なほど明るい気持ちで森の中を歩き始めた。