欲望に正直すぎる神官が現れた
銀色の髪の女は以前フェイと一緒にいた所を見たことがある。
人形のように整った容貌なのだが、今は敵意をむき出しにしていて麗しくは見えない。
髪は地毛ではなく脱色しているようだ。
銀の髪の女という条件は、サリシアから聞いた宗教知識の中に一致するものがあった。
「ギーグ教団の神官戦士か」
大陸最大の神聖魔法使いの集団であり、人数こそ少ないが驚くべき影響力を各国に持つという。
「そう、神官・・・・神官戦士よ」
ちょっと声が小さくならなかったか?それに何か間が空いたぞ。
「神官ではないのか」
「るさいわね!もうすぐ神官試験に通るから神官戦士って言っても過言じゃないわ!」
「いや、それは過言だろう」
「黙れ悪魔!」
口汚い女だ。それでも神官志望なのか。
「やめて!私は自分の意思でヨーハン様のパーティーに入れていただくのよ!」
「あなたみたいな可愛い子がこんな悪魔みたいな奴を好きになるなんて!きっと洗脳されているのよ!あたしたちのところに戻っていらっしゃい!」
「ギーグ教団の神官候補と聖十字教会の信徒が同じパーティーというのもなにかおかしくはないか。ギーグ教団は他の信仰をあまり尊ばないということだったが。」
「茶々を入れないで、悪魔のくせに!可愛い子は正義、それだけよ!」
なんだこの女は。
欲望に正直すぎる。
「大体あんた、欲深すぎるのよ!レベルアップをエサに女冒険者をむりやり同じパーティーに入れて怪しい行為を強要してるそうじゃないの!その上フェイまでとか、ギーグ様が許しても私が許さない!」
いったい何の事だ。
「ナニいってやがんだ!てめェ!」
我が不快になるより先にアリスが猛烈な勢いで叫んだ。
「あら、あなたこの悪魔の毒牙にかかった女冒険者?結構カワイイじゃないの。うちに来ない?非処女でも歓迎よ!」
「コロス!」
アリスが顔から湯気をふきそうなほど真っ赤になって剣を抜こうとしたが、ここでの刃傷沙汰はまずい。
「まて、アリス・・・・・・・ギーグ神の神官、では今はない者よ。」
「正確を期してるんじゃないわよ!」
「それがしを悪魔と呼ぶなら調伏できるのであろうな」
「もちろんよ!」
「神官ならば魔法をもって語るか?」
「これがわたしの魔法よ!勝負しなさい!」
細い腕があり得ぬほど巨大なバトルハンマーを軽々と閃かした。
やはり脳筋であったか。




