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ステータス?

衝撃は思っていたよりも少なかった。

少なすぎた。

意識さえ途切れず、我は自分の体が跳ねる回数を他人事のように数えていた。

濛々と上がる砂埃の中、四度叩きつけられてようやく止まった。

だが、痛みはほとんどない。

魔法の手足を発動していないのに立ち上がることができる。

これが「体を与える」という言葉の意味か。

我が落ちた場所は大きな岩の上だったようだ。

砕けた細かい砂が足元にたまっている。

ようやく砂埃が収まって、自分が落下でできたクレーターの中にいることに気がついた。

この体には偽の主イアルダバオトの加護があるのか?

肉団子となって死んでいてしかるべきなのに骨も折れていないようだ。

ひさしぶりに掌を開いて、握り締めると、入っていた小さな石が潰れた。

異様な手だった。

盛り上がった鱗が畝をなして生え、見た目は騎士の鉄手袋のようだ。

煤のようにつやがない黒で、どう見ても生き物の色ではない。

我は呆けながら肩や胸、足を触った。

胸や腰の鱗は大きく、板金めいて滑らかだ。

足の先には曲がったかぎ爪が生えていた。

掌には感覚がある。全身鎧を着ているわけではないのだ。

顔もまた棘のある甲羅のようなものに覆われ、目だけが露出しているようだ。

なんだこれは。

我はこの体に似たものを見たことがある。

偽の主イアルダバオトの近衛兵、悪魔騎士。

高位のエーテル生命体で、物質界に顕現することは滅多にない。

しかし、我が堕ちた時に混ざったのはそれだったのではないか。

混り者……低位悪魔を防護なしで召喚してしまった愚かな術士の末路である。

すぐに意識が混濁し、最終的には悪魔でも人間でもないどろどろした塊になってしまう。

これほどの高位悪魔と、このような形で混り者になった場合、どうなるかは例がないのでわからないが、覚悟はしておくべきであろう。

そもそも我は廃棄された者なのだ。


我はいらだって顔の前で手を振った。

視界が晴れぬ。

もしや混ざったときに眼球になにかを巻き込んだか。

目の前の空中に教会の帳簿の頁のごときものが浮いているようにみえる。

しかしそれは文字と枠線だけで、下地は透けてクレーターの内側が見えるのだ。

文字は見たこともない形だ。

ルーン文字に似て、角ばっているが、読めない。

我はオールドワールドで通用する全ての文字と言語と暗号に通じ、地獄の官吏が使う堕落文字にも通暁している。

読めない文字があるのは不本意な心持がして、まず文字の印形を確認しようと目をすがめた。

すると突然、文字の意味が心の中に入ってきた。

ステータス、だと?


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