玉座の間
黒い玉座に座った女が言う。
「フィリフェインが死んだ」
白い男が答える。
「聞いている」
玉座の女が支配する王国は地下に広がっている。
彼女の王国は限定され、臣民も多くはない。
だが彼女の王国は強い。
それは彼女自身の絶大な力と過酷極まる環境によって鍛えられた強さである。
彼女の王国の事を知るものは少ない。
だが、いずれ多くの者が彼女とその王国について知ることになる。
それはそう遠い未来ではない。
「黒い戦士が殺したと」
「そうだ。何者か」
「わからない。しかし拘るべきではない」
「あれは私の弟」
「肉親の情に拘ってはならない」
白い男がなだめるように言う。
「情ではない。これは統治権の問題」
「フィリフェインは気侭な男だった」
「しかし私の臣民」
白い男は頑固な主君にそれ以上言うべき言葉を持たない。
「ではこのオスタードが奴を殺す。それでよいか」
「不十分だが、魔族の世が来るまではそれで耐えよう」
オスタードと呼ばれる男は一礼し、玉座の間を去る。
女は残る。
彼女は闇エルフの女王ツィリオル。
彼女は魔族の一人で、その悲願をすべての魔族と共有している。
彼女の王国は地上の住人が大迷宮と呼ぶ遺跡をその版図に含んでいる。




