孤児院再訪
フィリフェインはこの世界における強さの新しい基準になった、と言えるだろう。
脅威というほどの敵に遭ってこなかったため、我はレベルアップについては急いでいなかった。
迷宮主といっても、アリスに倒させていたからそれなりに時間がかかったが、本気を出せばものの二合も打ち合うことなく倒せる。
だが、魔族というのは底が知れない。
フィリフェインにしたところであんな手を使わなければあっさりとは倒されてはくれなかっただろう。
負けはしないにしても逃げられたりすることは十分あり得た。
魔族がどのような能力を持っているかはっきりしない以上、なるべく能力を高めておくのは意義があるはずだ。
現在の経験値は199,251。
このまま上げてもよいのだが、祝福を受けておかないとどうも気が引ける。
言い訳に利用したという負い目があるのだ。
もう一度孤児院を訪れるとしよう。
アリスには宿に残ってもらった。
聖銀鍍金の小剣を渡してやると、大喜びで素振りや双剣の型をやりはじめたので、帰るまでになれておくように言いつけたのだ。
フェイに会わせると面倒になりかねない。
孤児院はいくらか子供が増えているようだった。
ビブラ司祭は前回あんなことがあったにもかかわらず暖かく迎えてくれた。
「その節は失礼いたしました。フェイが病み上がりでおかしくなっておったのを勘違いしてしまいまして」
しかし司祭のフェイへの評価は甘すぎるのではないか。
あれを病み上がりのせいと申すか。
「フェイは今小迷宮に入っています。いつも貴方のことばかり話しておりますぞ。あれは父を不幸な事故で亡くしておりましてな」
我に父の面影を見たというのは無理がありすぎないか……。まあよい。
「また祝福を授けていただきたいのだが」
「ああ、小迷宮を制覇なされたそうですな。おめでとうございます。こちらへどうぞ」
簡素な祭壇と祝福はそのままだが、供物がいくらか増えている。
我の喜捨が多少役に立っているようで何よりだ。
「水によって自在、魚によって豊穣たり、舟は聖所にむかうべし」
『経験値変換』
「全て消費してもよろしいですか。現在の経験値を限界まで消費すると42レベルまで上げることが可能です」
"ステータス"の声が聞こえる。
肯定。
「レベルアップしました。
全能力値上昇しました。
HP、MP値が上昇しました。
MPの値が最低値を上回り、非道の翼が使用可能になりました。
レベルの値が最低値を上回ったことにより、悪逆の翼の封印が解かれました。
MPの値が最低値に満たないので使用不可です。
無道の翼の隠蔽が解かれました。
封印中です。
技能「魔物使役・小」のレベルが上がりました。
技能「魔物使役・小」が「魔物使役・中」に進化しました。
技能「極限剛力」のレベルが上がりました。
技能「肉体を武器に」のレベルがあがりました。
技能「肉体を武器に」が「鋼鉄の獣」に進化しました。
技能「暗黒魔法」で呪文「邪悪なる祝福」選択できます。
邪悪シリーズの呪文が増えた。もうだまされんぞ。




