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小迷宮下層

迷宮の奥にはボスが現れる。

ボスが現れるかどうかがただの怪物の巣窟と迷宮を分ける差なのだという。

ボスはその迷宮の怪物の中で最強の存在であり、隔絶した力を持つことが多い。

ボス討伐によってその冒険者は迷宮を"クリア"することを得る。

その名は迷宮踏破者として記録され、永遠の名誉を授かるであろう。

「それなりの報酬もあります。初回クリア限定報酬が設定されている今がお得ですよ」

いきなり下世話な話になった。

数回に分けたアリスの鍛錬が一段落して、次の依頼を探している我らにフェリシアが提案してきたのは小迷宮のボス攻略だった。

「これは依頼というわけじゃないんです。言わば腕試しですね」

いつまでも貴方のように非常識な冒険者を小迷宮で遊ばせて置くわけにはいきませんし、と失礼極まりないことを言う。

「わかってませんね、ハイデンベルクさん。貴方剥ぎ取りを面倒がるでしょう」

アリスがとなりでうんうんと同意する。

「小迷宮はただでさえ初心者にもやさしい迷宮なんですよ。貴方の後ろをついていくとおこぼれがもらえるんで、ますます自堕落な冒険者が多くなってしまっているんです」

「剥ぎ取りはしているぞ。主にアリスが」

「アリスさんが剥ぎ取りをやると貴方が主に討伐することになって討伐数が非常識なことになるじゃないですか。手が回らないから討伐部位を取ってあとはそのまま放置せざるを得ないわけです」

「……うむ、了解した。そろそろ小迷宮は卒業しよう」

「わかっていただけたようで幸甚です。迷宮ボスの素材は貴重なのでちゃんと剥ぎ取ってくださいね」

「しかし、迷宮ボスというやつ、何回も出現するのだろう。二度三度と同じ者が討伐すれば大量に剥ぎ取れるのではないか」

「迷宮ボスの討伐は一生に一回だけですよ」

「はぁ?」

またこの世界の謎が顔を出した。


6階地下墳墓の入り口を守るオークリーダーとその眷属をアリスがなぎ倒す。

ゴランの店で買ったはがねづくりの長剣と短剣を両手に持ち、銀細工のラメラーアーマーに身を包んだアリスは前回の鍛錬でレベル25に到達しており、もはやオークなど相手にならない。

呪術師を投げ矢でつぶしてしまえば、あとは流れ作業のようなものだ。

討伐を完全にまかせてしまったので、我は暇である。

「たとえば四人パーティーで二人が討伐経験有り、他がなしだったらどうなるのだ」

この迷宮ボスの討伐回数ルールは冒険者の中では常識に類することらしい。

アリスがリーダーの耳を切り取りながら得々と説明する。我に教えるのが楽しいようだ。

「それは無理ですね。経験有りのメンバーを外さないといけません」

「ではそのパーティーに荷物持ちがいたとして、その者だけが以前同じように荷物持ちとして討伐に参加していたらどうなる」

「うーん、荷物持ちは迷宮踏破者の資格がもらえないから大丈夫じゃないかな」

「つまり討伐パーティーに迷宮踏破者が一人でもいればボスは出現しないということか」

「そうじゃなくてボスの部屋にはいれないんですよ」

ボスがいる部屋は特別な罠で守られているという。

地下墳墓は人工的につくられた迷宮で、出現する怪物も上層五階とは趣が違う。

六階は小部屋に区切られており、部屋にはそれぞれ守護者が出現する。

「空ろなる騎士、か」

空っぽの鎧がぎこちない動きでこちらに寄ってくる。ゴーレムの一種なのだ。

なぜ空とわかるかというと鎧が相当にボロボロな代物で、あちこちに穴が開いており、中身が、というか中身が何もないことが見えてしまっているからだ。

この怪物に討伐部位はない。

壊してもすぐに蘇って自分の受け持ち部屋に戻ろうとするために、素材として持ち帰ることも出来ない。

つまり、先に進まない限りこやつの相手は完全に徒労でしかない。

ガイドブックにそう書いてあったために地下墳墓で戦ったことは今まで一度もなかった。

アリスを抑えて我が前に出る。

一部屋に四体の空ろなる騎士が配置されている。武器は錆のういた剣や有り合わせの棒で、あまり強そうには見えない。

「木偶めが。控えおれ」

影の刃は肉をもたない者には有効ではない。

前に出た空ろなる騎士を持ち上げ、そのまま叩きつけると転がって動かなくなった。

剣と投げ矢を武器にするアリスには相性が悪い。

力押しに押しつぶすのがよかろう。


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