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アリス、受難の日

「倒せ」

「え、あたし狂い狼とか倒したことないんですけど!」

「今までと同じことをしていてレベルなど上がると思うか。行け」

「が・がんばります!」

小迷宮の三階。

ふぎゃああああ、と情けない声を出して狂い狼と打ち合うアリス。

すぐにぼろぼろになるが、後ろから"邪悪なる治癒"が飛ぶとなんとか狂い狼を倒すことができた。

「傷が治りました!」

「いくらでも治す。どんどん行け。多すぎるようなら調整してやる」

アリスが3匹以上の狂い狼に囲まれるか、ジャイアントアントに襲われそうになったときは石を投げて援護してやる。

基本我は座ったままだ。

「おしっこしたいですうううううう」

「さっきすませておけといったろうが!休憩は昼までなしだ」

「も……もれるうううううう」

異臭がしてきたような気がする。


「崇めます……貴方様を崇めます」

アリスがぶつぶつ言っている。洗脳効果はないはずなのだが。

「だからトイレ休憩ください!」

土下座してもそんなものはやらん。

「もっと余裕をもって倒せるようになれ。そうすれば粗相せずにすむ」

「剣もボロボロですし、いったんハルキスに帰った方がいいと思います……お風呂はいりたい……行水でもこの際文句いわない……」

後半心の声が漏れているぞ。

「ほれ」

ゴランのところで仕入れてきた剣を渡してやる。

「ええええ、お金がもったいないですよう……」

心底嫌そうだ。

「心配するな。まだまだある」

鞘に入った剣がつまった麻袋をがらがらと鳴らす。

「11本持ってきているからな。少なくともこれを全部つぶすまではやる」

「鬼?ここにいるのは鬼なの?」

錯乱するな。

「笑ったり泣いたりできなくしてやるからな!」

冗談だ。泣くな。


アリスが粗相をせずに狂い狼をさばけるようになるまでに2日を要した。

初期レベルは7。

スキルは初等剣術と初等防御術。

絵に描いたような底辺冒険者だ。

それを二日間で、本人によると12まで上げることができたという。

ついでに剣技も閃いた。

剣技"犬狼突"。

別に犬族にしか効かないわけではない。上下の突きを組み合わせた攻撃で、MP5を消費するが威力はなかなかのものだ。

剣の技術なのにMPを消費するのがどうも納得がいかないが、役には立つ。

MPが低いうちは、いざというときの隠し玉にしておくのがいいだろうな。

「もう狂い狼とか、雑魚ですね!」

フンスッっと胸をはるアリス。

「そうだな」

「かえりましょうかえりましょうお風呂はいりたいしおいしいものもたべたいですもうねずみはいやです」

「次はボーンゴーレムだな」

「はい?」

「それが済んだらオーク」

「えええええ?」

「今回はオークリーダー討伐までいきたいと思う。おい、涙とよだれを拭け」


結果としてアリスはよくがんばった。

ボーンゴーレムに頭を割られかけ。

オークにさらわれて苗床にされかけ。

オークリーダーとその眷属十匹の中に取り残された時はさすがに死んだと思ったようだが、直前のレベルアップで取得していた『頑健』と剣技『連続斬』、"邪悪なる治癒"とたまに飛ばす影の刃の援護もあってついにオークリーダー単独討伐に成功したのは九日目の朝。実に半日近い激闘の末だった。

「うう…よかった…おしっこしか漏らさなくて本当によかった・・・ありがとうお母さん、天国で見守っていてね……」

別のものが漏れそうになっていたのか。

いろいろな体液と血にまみれていたが、アリスが最後の尊厳を守れたようで本当によかった。

レベルは22。各種技能も増え、冒険者としての実力は確実に上がっていた。

「どこかの川で水を浴びさせて!あと洗濯もさせて!」

「ハルキスに帰ってからやればよかろう」

「い・や!」

拒否にも迫力が出てきたようだ。


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