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パーティー結成?

「いきなり女性を連れ込むような方だったんですね。幻滅です」

その棒読みはやめろ。

「事情は今話した通りだ。一部屋用意できるか。迷惑がかかるかもしれぬし、無理そうなら城外ででも露営する」

「宵闇通りの奴隷商人ですわね?」

「宵闇通りというのか、あそこは」

「ハイデンベルク様。ハルキスに奴隷がいないとは言いませんわ。でもこのお嬢さんが連れていかれそうになっていたのは違法な店だと思います」

「ずいぶんおおっぴらにやっているようだったがな」

「大部分の奴隷は鉱山労働だったり、迷宮の下層で採取を延々と繰り返させられたりするもので、罪を償うために期限付きで落とされる事が多うございます。勝手に売買していいものではありません」

宵闇通りでは食うに困った難民を本人の同意の下に奴隷と称して売買しているらしい。自由はなくなるが、衣食住を一応保証されるので売られる側にも利点はないわけではない。

だが、アリスを奴隷にするのはそれとは意味が違う。

強引に取り返しに来たりすれば、今静かに行われている事実上の奴隷売買がご破算になる可能性すらあるので、まず危険はあるまいというのがサリシアの見立てだった。

「それに、もしそんな不埒者がいましたら、この宿の者も戦えるところをお見せしますわ」

サリシアは好戦的な笑みを浮かべた。


ゆっくり寝たせいか、翌日のアリスはいくらか美しくなったように見えた。

「本当にただ泊めただけなんですね……」

サリシアが朝食の給仕をしながら小声で言う。

「当たり前だ」

「よくわからない方ですわ」

「?」

アリスがパンを頬張りながらきょとんとした目で見ている。

こやつ何も考えていないな。

「アリス」

「ハイ!」

「稼ぐあてはあるのか。貯蓄でもあればいいが」

「うう……」

「奴隷商人どもは町の中では騒ぎを起こすまいが、迷宮では意趣返しをしてくる可能性もある。できればほとぼりが冷めるまでは城内にいたほうがよい」

「無理です。最近パーティーを組めてないので銅貨2枚しかなくて、採取ででも稼がないとって思ってました。それに。」

黙り込んだ。

「昨日ばらまいた銀貨のことか。あれは気にしなくてよい」

「でも!あんな大金あたしのために使わせてしまって」

「勝手にやったことだ。それに今そんなことを言っている場合か。自分が明日どうするか考えよ」

「でもあたし不器用で町の中の依頼とか出来ないし」

それはそうだろうな。

9級の中には商店の会計手伝いや食堂の調理などのいわゆる一般依頼というのもあるが、アリスがそうしたことが得意なようには見えない。

はあ、とため息が出た。

アリスが身を震わせる。迷惑をかけていると思っているのだろうな。

だが、昨日から我が感じているのは一種の高揚だった。

奴隷が嫌いなのは自らが使い捨てた奴隷たちへの慙愧の念に耐えぬから。

危険を冒してまでもアリスを助けたのは助けようとしてさらに深みに落としてしまった我が故郷の事をいくらかでも埋め合わせようとする卑しい気持ちから。

これから行うことも言わば個人的な贖罪、自己満足に過ぎない。

「アリス」

「……ハイ」

そんな涙でいっぱいの目をするな。

「パーティーを組むぞ」

「え?」

我、ヨーハン・ハイデンベルク、初パーティーの相方は不器用な女戦士アリスである。


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