表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/130

八級、そして更なる面倒

「八級おめでとうございます」

ギルド事務員の女がカードを渡してきた。

オークリーダーですでにギリギリまで上がっていたため、ボーンゴーレム討伐ですぐに八級になったということらしい。

カードの赤みが少し増した。"八"の文字が光る。

「痛いです!フェリシア姉さん!」

フェリシアはヴェンナの顔をつまんで上下に伸縮させながら地下の倉庫に向かった。

少々あわれにならないでもない。

あとでおやつでも差し入れてやるか。

「ハイデンベルク様にはいくつか指名依頼が入っております。八級より指名依頼が可能となりますので、それ以前から昇級待ちで指名があったということです」

「名指しで依頼ということかな」

「はい。ギルド宛に相応の指名料金がかかりますので、わざわざ指名するというのはよほどのことです」

「ありがたい、というべきなのだろうな」

「まあ、わざわざ指名するのには訳があるので、内容と報酬を吟味してください、としかギルドとしてはいえないですね」

ギルド職員は苦笑した。

「今日はもう時間も時間ですし、一応内容だけお知らせしておきますね。」

1.騎士団の討伐訓練に同行

依頼者:騎士アリアス

期間:一週間

報酬:三十ターラー

2.神聖魔法の研究会

依頼者:冒険者ギルド

期間:一か月

報酬:百ターラー

3.闘技場での模範闘技

依頼者:剣闘士ギルド

期間:闘技場開場中

報酬:時価おひねり

……どれもろくなものではない。

パーティー依頼も来ていた。大半が九級のパーティーで、その中にあの孤児院の少女フェイの名前もあった。

パーティーを組むかどうかはさておき、そのうち孤児院には顔を出さなければなるまいな。


宿への帰りにいつもとは違った道を通ってみた。

裏通りにその町の真の姿が現れる、と言ったのは古代の賢人だったが、真実ではあろう。

ハルキスの場合も、あまり美しくない真の姿がすぐに見えてきた。

「奴隷市場か」

宿や商店で大々的に奴隷を使っているところがなかったので、この世界には奴隷制がないのかと勝手に思っていたが、そんなことはなかったようだ。

夕闇に沈む裏通りで、うつむき加減に立つ人々には、例外なく首輪がつけられていた。

男女半々くらいではあるが、やせて、あまり健康そうでないところを見ると債務奴隷なのであろう。

「あんた、競りに参加するのかね」

嫌な目つきをした男が聞いてきた。じっと見ているので興味があるのかと思われたようだ。

「奴隷は好かぬ」

「へっ!じゃあそんなとこでぼさっとしてんな!どけよ!」

たしかにこの国の法に沿っているのであれば我が何を言うことでもない。

おとなしくその場を離れようとした時、騒ぎが起こった。

「離せよ!あたしがなんで奴隷なんか!」

「ふざけんな!お前のパーティーに金を貸してるんだ、お前が返すのは当然だろ!」

赤く、短い髪の女がなにやら争っているようだ。

聞いていると内容がわかってくる。

四人組の男たちと臨時パーティーを組んだところ、そのうちの一人に借金があり、逃げてしまった男の代わりに赤毛の女が金を返すことになった。

しかしそれは到底返すことなどできない金額で、というわけだ。

つまり、この女ははめられたということなのだろうな。

しかし強引なことをするものだ。こんなことで丸め込まれる人間などいないだろう。

「オラァ!」

女がついに剣を抜いた。

奴隷商たちもそれぞれ武器を抜いたり、護衛を呼ぶなどしてあたりは騒然となった。

我はそれを見るともなく見ていたが、ふと横の路地に四人組の冒険者らしき男たちがいるのに気がついた。

なにやら怪しげな言い争いをしている。

「大騒ぎになっちまったじゃねえか」

「はやく行かないと大変なことになるぞ」

「ちょっとまってくれよ……」

「お前があいつに惚れたからなんとかしてやろうっつーのに、めちゃくちゃになっちまうぞ」

なんだこいつら。

あの女の仲間なのか。

「おい」

「ヒッ!」

「誰だ!え?ノール潰しの?」

「いやゴーレムマッシャーの?」

「名前などどうでもよいわ。おぬしらあの女の仲間なら助けにいかないと手遅れになるぞ」

「でももうどうしたらいいのか……」

「とりあえずあの騒ぎは止めてやる。あとはなんとかせよ」

「え、どうやって、ですか?」

「こうするのだ」

我は奴隷商人どもと女がにらみあっている中に割って入り、女の剣を取り上げた。

そして奴隷商人どもが女を捕らえようとするのを片っ端から殴り倒した。

立っている奴隷商人がいなくなったところで女を抱えて宣言した。

「この女はそれがしが買い受けた。文句があるなら冒険者ギルドまで参れ。ヨーハン・ハイデンベルクが尋常に相手いたそうぞ」

そして適当な額の銀貨をばらまいた。倒れている奴隷商人が受け取るわけはない。

貧民の誰かが拾うことであろう。


二・三度手ひどい目に合わせると追ってくる者はいなくなった。

そこで、赤毛女と男どもをつき合わせて事のあらましを聞きだしたのだが、まさに脱力するような話であった。

まず、赤毛女アリスに惚れた四人組の男の一人レジスがわざと借金をこしらえる。

そして借金の返済の催促がうるさくなったところで、金を返さないままアリスとパーティーを組み、しばらく姿を消す。

アリスが事情を知らないまま借金取りに債務奴隷に落とされそうになったところで颯爽と現れ、助け出すとアリスがその恩人に惚れる、という筋書きだったようだ。

何を言っているのか。

このアリスという女がなぜ迷惑をかけられただけの相手に惚れなければならないのだ。

そういってやると男どもは目をふせ、アリスは毒虫を見るような目で彼らを見ていた。

とりあえず金はきちんと返すというので、男どもは解放してやった。

あまり相手をしたくない。

そもそもアリスは単に何回か臨時パーティーを組んだだけのレジスという男の顔も名前も覚えていなかったようで、実に哀れを催す話ではあった。

肩を落とした男たちが立ち去った後、アリスの顔をよく見てみたのだが、美女というわけではない。

狼のように痩せ、手もごつい。男に混じって冒険者などやっているのだから当たり前だが色気などはかけらもない。

レジスという男はどこに惚れたのか、そして奴隷商人どもはこの女を奴隷にしてどうやって借金分の儲けを出そうとしたのか。

どいつもこいつも見る目がなさ過ぎるぞ。

じろじろ見ていると何を勘違いしたのかアリスが顔を赤くしている。

「アリスとやら」

「ハイ!」

「今日は一緒に泊まってもらうぞ」

「え、そんな、困ります……いや、困らないかな……でも急すぎて……」

奴隷商人が取り返しに来るかもしれないというのに暢気なやつだ。

「心配するな。ちゃんと別の部屋をとってやる」

なんだか不機嫌になったような気がするぞ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ