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勧誘

「で、事実なんでしょうか?」

山猫のように唸り声をあげそうに警戒しているフェリシアを無視してイシドルスは再度尋ねた。

「事実だ」

実は神聖魔法ではなく暗黒魔法です、とは口が裂けても言えないな。

「おお!」

イシドルスが喜色満面の笑顔になった。

なぜこの男も顔を近づけてくるのだ。

興奮すると顔を近づけてくるのはこの世界共通なのか。

「ゼノギア神に感謝を!」

なんだと。


「ゼノギアス教会の神かな」

「もちろんそうです。貴方は異教徒だからご存知ないでしょうが、ゼノギア神はとても!素晴らしい神ですよ!」

「それは聞いているが、どうも話の筋が見えないのだが」

「そうでした。落ち着かねば」

イシドルスは深呼吸して、とんでもないことを言い出した。

「貴方、ゼノギアス教会に入信しませんか」

「なんだそれは」

「わたくし、ゼノギアス教会から命を受けて神聖魔法の使い手を集めておりまして」

「それがしは聖十字教会の信徒なのだが」

「改宗すればいいんですよ」

頭が混乱してきた。

「神聖魔法というのは神に愛された者が使う神のみわざではないのか。改宗してしまっては意味がないだろう」

「ああ、ビブラ司祭の話を真に受けてはいけませんよ。神聖魔法は神聖魔法です。どの神のものと言うわけじゃありません」

そういうことなのか。確かに我の暗黒魔法も悪魔の力を借りているというわけではなさそうだしな。

「ですが、無知な大衆には神聖魔法の使い手こそ真の聖職者であるという風潮が強いのです」

「だからその魔法の使用者を集めているのか」

「その通りです。ゼノギアス教会は信徒の割りに神聖魔法の使い手が少ないので、特に神聖魔法騎士団をかかえるギーグ教団などには見下されがちなのです」

「訓練して増やすわけにはいかないのか」

はあ、とイシドルスが呆れた顔になった。発言がまずかったか。

「貴方が神聖魔法を使えるようになったのもそうでしょうが、この魔法については訓練や教育でどうなるというものではないのです。ある日突然使えるようになるわけでして」

なるほど。やはり普通の魔法と同じというわけにはいかないのだな。

「そもそも改宗して何かいいことがあるのか」

「ゼノギア神にお仕えし、その慈悲にあまねく接することができるでしょう」

「具体的には何かないのかな」

「それで十分ではないでしょうか」

話が通じぬ。まるで石の壁に話しかけているようだ。

「改宗などという大事はそう簡単にやってしまっていいものではない、と思うのだが」

「あなたを改宗させれば私も本国に帰れるかもしれないんですよ。お願いします!」

フェリシアの額に青筋が走ってきた。この不穏な雰囲気の中勧誘を続けられるとはこの男、なかなか大物かも知れんな。


その後も長々と勧誘は続いたが、ついに怒り出したフェリシアがイシドルスのすねをがんがん蹴りはじめるに至って終わった。

「痛いです!やめてください!神罰を受けますよ!」

「あなたみたいな本国の教会で出世できずに左遷させられてきた方が何の神罰ですかねえ!」

「それは言わないで!痛い!勧誘はしませんから蹴るのをやめてください!」

「ギルド長に知られたらこんなもんじゃすみませんよ!」

最後に尻を蹴って部屋から叩き出した。

「ありがとう。しかしよかったのか、あんなことをして」

「まあ、ゼノビア教国の外交官ですからね、あれでも。あまりよくはなかったかもしれませんが、腹が立ったので。」

にっこりと笑った。

「反省はしているが後悔はしていない。というやつですね」

いい笑顔だな。


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