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女中頭サリシア

「びっくりするくらいの勢いで覚えておられますわ。元々知っていたのじゃないかと思えるくらい」

「俺と話をしていたのが全部スキルを使ってたっていうことのほうがびっくりだけどな」

「それは間違いないと思いますわ。姫様のことをご存知ないのも本当だと思います」

「まあお前が言うのなら信じるが」

「世間知らずというのか、私がアリアス様の妹だって信じてしまうくらいですから、ちょっと心配になってしまいます」

「そういうのはやめてくれよ……」

「わかっています。ちゃんと訂正しておきますわ。妹あらため妾のサリシアです、とね」

「いや、こういう関係はあまりよくないのはわかっているんだがな」

「私が望んだことですもの。文句を言うつもりはありませんわ」

「……まあいい。話を戻そう。他に変わった点はあるか。」

「食事の量が少ないように思えます。外出して食事をされるのは懲りたようで、こちらでお出しするものをおとなしく食べておられますけど、あんなに大きな方なのに、半分も手をつけていないことがよくありますわ」

「外出時や、滞在時に不審な者との接触は」

「ありません。こう申してはなんですけども、あの方がどこぞの外国のスパイなんてことはど素人の私が考えてもあり得ませんわ。目立って仕方ありませんもの」

「それは俺が考えることだ」

「差し出口をいたしました。すみません。」

「いや、いい。ただどこの手の者かわからないし、意図も全くわからん。手がかりになりそうな情報がほしい。まるでそのへんの空中から現れでもしたみたいに痕跡がない」

「故郷やそれに類したことの話は一切されません。この一週間のうちに何回か色仕掛けめいたこともしてみましたけど、あんな鎧を着込んでいるせいで、ちっとも色っぽい雰囲気になりません」

「おい!」

「心配なさらなくても大丈夫ですわ。とても紳士な方ですし」

「そういう問題じゃないだろ、はあ……。あの鎧は相変わらず脱がないのか」

「たまに裏の井戸で水をあびていらっしゃいますけど、その時も兜すら脱いでいませんね」

「怪しすぎるぞ」

「ご本人も自覚していらっしゃいますわ」

「どうすりゃいいんだ。姫様は連れてこいとうるさいし、伯爵様からも報告を急かされてるのによ」

「ご本人にもお勧めしておきましたけど、冒険者になっていただくのが一番いいと思います。その時には自然な流れで鑑定石を使えるわけですから」

「ゴランじいさんとこの鑑定じゃダメか」

「見せてもらいましたけど、あれじゃ何もわかりませんわ。大変な戦士なことと、その割りに妙に体が弱いこと、見たこともない職業についておられることくらいで」

「体が弱いってのはともかく、ほかは見ればわかるようなことだよなあ」

「だから冒険者ギルドですわ。あそこの鑑定石ならもっと詳しいことを教えてくれます」

「なんで騎士団のほうじゃだめなんだよ」

「だってそのまま召抱えていただくわけにはいかないんでしょう?」

「う……怪しすぎるもんなあ……俺もアレの身元引受人にはなりたくないし」

「だったら冒険者ですわ!私もあの方が冒険者として活躍するところを見てみたいです」

「お前本当に好きだな」

「父も一時やっておりましたし、"冒険者の町"ハルキスの者が冒険者に肩入れするのは本能みたいなものですわ」

「お前、そういう個人的な趣味で……」

「それに優秀な冒険者が増えるのは町のためにもなります」

「とってつけたような理由を今更言いやがって」

「それにもう手遅れですわ」

「なんでだ」

「もうお出かけになりました。ゴランじいさんのところで剣を受け取ったらその足で冒険者ギルドに行って受付を済ませてくるそうですので、姉のフェリシアのことをお教えしておきました」

「これまでの話はいったいなんだったんだよ!先に言え、そういうの!」

「『ヨーハン・ハイデンベルク』様はきっと素晴らしい冒険者になってくれると思いますわ」

「人の話を聞けよ……」


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