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ステータス欺瞞

ゴランなる者が営む鍛冶屋は早朝から営業していた。

「いらっしゃい」

なにやら作業をしながら、ゴランらしき老人がこちらを向きもせずに挨拶した。

オールドワールドでは鍛冶屋といえばドワーフだったが、ゴランは人間だった。

この世界にはドワーフはいないのかも知れない。

「アリアス様がいってたのはあんたかい。得意な得物はなにかね」

「剣ガホシイ」

「ふむ、力は強そうだがな……珍しい鎧を着てるなあ」

ゴランはじろじろと無遠慮に肩や腰の辺りを見てくる。このままだと触ってきかねない。

「ナンデモヨイノダ」

「ステータスを見せてもらってもいいか。うちで合う剣があるかわからねえ」

「……"すてーたす"ガ見ラレルノカ」

「鑑定石があるからな。うちで使ってるのは武器や鎧を使うのに必要な数値を見られるだけで、冒険者ギルドが使ってるような高級品じゃねえが」

「出来合イノ剣ヲ売ルノニ"すてーたす"ナド関係ナカロウ」

「心配すんなよ。アリアス様はあんたが訳ありだっていってたけどよ、うちの鑑定石じゃ名前もわからねえんだから」

自分の腕を偽って業物を買い求めようとする者が多く、はっきり断るために鑑定石を置いているのだとゴランは笑った。

「こいつに掌を乗せてくれ。そうそう、そこだ」

押し切られて鑑定をすることになってしまった。だが、いい機会かもしれない。この世界では"ステータス"で人を測るのは普通のことのようなのだ。避け続けられるものでもない。

自分でもステータスを開き、見比べてみよう。

鑑定石は奇妙な青色に光る半透明の石だった。右側に水晶の薄板が延びている。この水晶に数値が写るのだそうだ。

「ほう、やっぱりすげえ力だな。敏捷性も問題ない。力が252って、200越えた奴もほとんど見たことないぞ……なんだこの職業:ジャガーノートってのは、聞いたことがないが、戦士系の上位職なのか」

ゴランが面白そうに調べている間、我は忙しく集中を切り替えて二つのステータスを見比べていた。

違う。

明らかにステータスの数値が違うのだ。

力の数値は鑑定石だと252だが、こちらの画面では3766。敏捷性は鑑定石が174、こちらが2954。ほかの数値も全て違う。耐久力に至っては鑑定石の115に対して9500などというふざけた数値であり、職業の欄は真:アパサル・オブ・イーヴル(偽:ジャガーノート)という二重表記になっていた。

こちらのステータスに光る場所がある。

技能という欄で"欺瞞の翼(自動使用中)"という文字がゆっくりと明滅を繰り返している。

これのせいか。探知呪文に対する防御を行うようだ。

「いいもん見せてもらった。ちょっと体が弱いようだが、一流の戦士なんだな、あんたは。一週間見てもらえればあんたに見合う剣を打てると思うぜ」

それまではこれでも持っとけ、と自分が今仕上げていた剣を放り投げてきた。

「代金ハ」

「銀貨二十枚、といいたいとこだが、アリアス様の顔もあるし、十五枚でいいぜ。もちろん剣と引き換えだ」

礼をのべ、工房を出た。鎧の類は着られないし、片手持ちの盾は扱っていないそうなのだ。

アパサル・オブ・イーヴル……悪の使徒。我にふさわしい名だ。蛮神の化身を模した人工悪魔であるジャガーノートも、戦士の一種と思われればちょうどよい。

人間と完全に決別するまでは、我が真の"職業"は隠し通さなければならない。


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