転生
「異世界の小僧とはね」
誰だ。
「トリテンハイム在の田舎者」
やめろ。
「魔術博士などと言われていい気になって」
我の脳を覗くな。
「火刑になった後もいいように使われて」
おまえはだれだ。
我は肉体を再度失い、而して新たな生を得た。
時空連続体の無限の地平に自我の泡が浮かび上がる……
「生まれ直したかい。小僧」
「誰だ」
「あんたのせいで用済みになった者さ」
「……この世界に神がまだいたのか」
「あんたみたいな半端ものの小僧にさえあっさり引き替えられてしまうくらいの間に合わせのね」
「それは申し訳ないことだったな」
「いいのさ。あたしには荷が重かった。上位者が一人もいなくなったんで押しつけられてね」
「それで輪廻が止まったのか」
「力不足だったよ。この世界は一筋縄ではいかない」
「我の背に負えればよいが」
「あたしは神じゃなかった。あんたは目を覆いたくなるくらいひ弱だが、とにかく神だ。希望はあると思うよ」
「ふむ。あんたが手を貸してくれるのかね」
「いやなこった。私は輪廻に戻らせてもらうよ。竜どもと遊んでやるには、我が一族にはあたしの力がいるのさ」
竜の形をした雲が超自然的な視界をよぎった。
「一人でやれというのか」
「助手はそこに待ってるだろ。手ぐすねひいてね」
「旧主の手の者はあまり……」
「贅沢抜かすんじゃないよ。小僧」
巨大な老婆の影が呵々大笑した。
「沈没しないように!漕いで漕いで漕ぎまくるんだよ!頼んだからね!神様!」
そして影も雲も我の前から姿を消した。
「……汝らの魂に祝福を」
理不尽だ。