表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Kの証言  作者: T.K.I.K
4/6

追憶2

暖かいから暑いと感じる季節に入り、カーディガン、セーターを着る生徒はさすがにもういない。



純吉がバイクで登校して謹慎処分となってから3日が経った。


そして、今日が謹慎明けである。今日学校へ行けば明日から夏休み、ということもありジュンは揚々と教室に現れた。


「うぇーい、ジュンちゃん謹慎明けましておめでとう」


「おう、雄大はバイクどこ停めた?」


「彼女ん家に止めた。5分のとこに住んでるから」


「まじか、俺は公園に停めてきた」


「ばっか、またお前ばれるぞ?」


「ブルーシート被せたから大丈夫。パッと見ホームレスの家っぽいから」


純吉と雄大は前にバイクを公園に停めているところを近隣住民に学校へ通報された。しかし雄大のバイクは公園には無く、結果的に純吉だけが罪を被ることになった。

雄大のバイクは最初に停めた場所から100mほど離れたところで見つかり、奇跡的に無傷であった。


4月生まれの純吉は高校入学して間もなく教習所へ通い遅れること 一ヶ月、雄大も教習所へ通い始める。そして謹慎の一週間前に二人とも免許を手に入れた。


1限目が始まり、純吉は教科書を立てて携帯をいじりだした。




『あーかったりー(/_;)早く帰りたい』




ホームページのリアルと呼ばれるブログに投稿し、満足げな表情をして机に顔を伏せ睡眠を始めた。





「ジュン!起きろよ!いつまで寝てんだよ」


将太と雄大が起きない純吉の体を揺らしている。


「…今、何時」


「残念だな、まだ1限終ったとこだよ」


「次は体育だぞ」


「まじか!」


純吉は飛び上がり体育着を持って走り出した。



プールサイドで見学をする純吉と雄大。将太は水泳が得意であり一度も見学はしていない。純吉は見学しかしていない。目線はスクール水着を向いており、そのまま雄大に話しかける。


「お前、あの中なら誰がいい?」


「俺は美咲ちゃんかな」


「スタイルいいもんな、胸はないけど」


「確かに。彼氏いたっけ?」


「いや、居なかった気がする。プロフには好きな男性のタイプのところは何にも書いて無かったし」


「ジュン、お前アイツのプロフ見たことあんの?」


純吉は携帯を出して雄大に美咲のプロフを見せる。


「なんかね、慶太のプロフの友だちリストの中に入ってた」


「そっか、中学一緒だったからか」


「そうそう。慶太は美咲とあんま面識無いとか言ってたけど」


「じゃあなんでリストにいるんだよ」


「慶太に聞け」


はっと思い、純吉はぷいっとそっぽを向き携帯をいじり始めた。そこに生活指導の相楽が近づいてきた。


「大島、携帯、没収」


純吉の手元にあった携帯はするりと手から離れていき相楽がしっかりと握りしめた。


「謹慎明けで反省してるかと思ったら携帯いじるわ、見学するわで。お前は何を考えてんだ?」


怒ってはいないが、無機質に、諭すように話しかけてくる。純吉は相楽には何も出来ない。


「すいません。もういじらないんで携帯を…」


「あとで取りに来い」


「あっ...」


純吉の表情を見て雄大は声が出ないよう顔を隠して笑った。そんな雄大の頭を軽く雄大がはたく。


「なあ、雄大」


「へっ?」


あまりにも表情が急変したので返事をした雄大の声が裏返った。


「慶太」


「うん」


会話に慶太と言う名前が出てきたことに少しばかり混乱したのがすぐにわかる。そんな表情を二人はしていた。純吉は続ける。


「俺は未だに実感が湧いてないんだ。プロフもあるし」


「まだ慶太のプロフあったんだ」


「ああ」




慶太は死んだ。死んで一年が経つ。慶太のプロフの最終更新日は2008年7月9日。バイト先に向かう途中、何者かに拉致され行方不明となった。数日後、身元不明の白骨遺体が発見され慶太と判明した。一ヶ月後、犯人と思われる男性が都内の公衆トイレ内で死んでいるのが確認された。


慶太は死ぬ直前、純吉にメールを送っていた。それ以降、慶太は登校することはなかった。











放課後、純吉・将太・雄大は公園に向かっていた。美咲の話で軽く盛り上がったあと、純吉は、あえてこの話題に触れてみた。


「慶太がさ...」


「やめろ」


雄大がすかさず遮る。


「なんだよ」


「慶太の話は、もういいよ」


「雄大、もう一年が経つんだよ。別にいじゃねえか」


「俺は...」


言葉に詰まる雄大。


「どうしたんだよ、二人とも」


将太は状況がつかめていない。







体育の授業が終わった後、携帯を返してもらった純吉は慶太のホームページを開いた。







学校終わったらバイト。初日頑張るぞ。

な~んてね。



2008.07.09.wed







リアルのタイトルは、〈Kay Talks〉


慶太のリアルのコメント欄には追悼の言葉が沢山書き込まれていた。


そこに書き込まれたとあるコメント。




いっしょうかけてでも

つぐなうことはできない

またこのいたみをかんじる

でもこのいたみは

もともとだれもかんじてはならない

ゆめはさめなくともかんじ

る、たわむれるだけではだめ

さけずにすすみつづけろ

ないてすがればさいご

いっしょうさることはできない






不自然過ぎるコメント。慶太は何をしたんだ。









いつまでもゆるさない












評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ