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負け無し召喚士《サモナー》の召喚

「何処だここ?」



気がつけば何処かの部屋の一室、立体状の大理石で出来た部屋の床は、何故か赤い血液で円を描かれていた。


はて、何がどうなのやら、と白来(はくらい)麻野(あさの)は首を傾げる。


確か、小学校時代に遊んだカードゲーム"デュアルサモン"を押入れから見つけた為、久しぶりにデッキを組んだ際、急に振り出した眩い光に目が眩み、気がつけば見た事も無い部屋へとやって来てしまった。


とりあえず此処は何処か、現状を把握する為に、辺りを見回せば、丁度真後ろに、人が居た。


―――何故かその連中は、白いコートを羽織り、腰元に黒いベルトを巻いて、そのベルトにはポーチが付いていた。


ポーチ、と言うよりかは、カード入れである。


丁度"デュアルサモン"のデッキががすっぽり覆える程の大きさで、その白い服の連中は、何故か俺を見て、何やらコソコソと喋っている。


はあ、何いってるのか全然分っかんねー、日本語喋れ、日本語をよ。


そう思いながらその連中をみていたら、不意に一人のマントを被った白服が、そのデッキ入れからカードを一枚取り出して、大声で何かを宣言した。


その直後、俺の耳の奥から風船が割れる様な音が聞こえて、頭が一瞬悲鳴を上げた。


膝を突き、蹲る中、その痛みは瞬時に治まり、誰かが奇声をあげている。


その奇声は、段々と聞き覚えのある言葉になっていき、ものの数秒を越えればそれは日本語として聞こえるようになる。



「え、何これ?」



マントを被った白服は、マントの脱ぐと、其処から長い髪をした黒色の女子が垣間見える。


凛々しい顔立ち、柔和な瞳には蒼色が染まり、黒色の髪は背中まで伸びている。


残念ながら白いコートを羽織っているせいで体付きは見えないが、胸元に盛り上がる胸が、随分と締まる所は締まっている素晴らしい体付きをしていると知らせてくれる。



「え、と。はじめまして、私の言葉、分かりますか?」



えぇ、分かりますとも、先程まで救急車の物まねばかりしてましたが、今回は聞こえます。


言葉が分かる事を告げると、その金髪の女性は大いに喜び、そのまま跳ねる。



「やりました、召喚の成功、です!!」



「はあ……召喚、とはどう言う意味で?」



俺がここは何処だ、と言う意味も込めてその女性に聞くと、それ以上の情報を教えてくれた。



「ここは、召喚士(サモナー)が住む、召喚都市です、貴方の手に持つカード、それがあると云う事は、貴方も召喚士なんでしょう?」



何だそれ?まあ確かに、小学生の頃はそれなりに負け無しだったが。


やっぱり!と喜んで、金髪の女性は俺に抱きついてきた、ぁ!?



「私、リイム=ディアルスと言います、召喚都市、召喚魔術学院の三期生です」



あ、あわわ、や、柔らかい、柔らかいぞ、何が柔らかいって、胸元に当たる二つのたわわな果実が―――


「えぇい!!何をしている、リイムから離れろ!!」



―――何故か真横から正拳突きが炸裂した。


乱暴に振るわれたその一撃は、俺のこめかみを撃ちぬくと、二、三回転して壁に激突する。



「エワード、何て事を!!」



本当ですよ、何てことするんですか。



「ふん、コイツが何処の者かは知らないが、この俺の目の前でリイムに抱きつくなど、万死に値する」



いや、お前の目は節穴か、節穴ですね?確実にそのリイムさんが抱きついたではありませんか。


故に俺は関係ない、それとも喧嘩をすると言うのなら買いましょう。



「フン、貴様の様な華奢な男が、俺の様に鍛え抜かれた肉体に、適う訳が―――」



取り敢えず色々とムカついたので、そいつの金色の髪を掴んで思いっきり下へ落とす。


それと同時に膝を蹴り上げるように上に振れば、グシャ、と鈍い音を立ててその男が鼻から血を流す。


まあ、生憎だけど路上の喧嘩は慣れてるんで、ここ部屋だけど。


数年前、路上で生活してきた俺に絡んできた酔っ払いのおっさん、ドロップアウトした不良、刺青が目立つヤーさんに理不尽に挑まれて死に物狂いで戦って生死を潜り抜けた俺に適うと思うなよ、戦闘経験が違うんだよ、戦闘経験が。



「こ。の、ガキ―――強い」



「五月蝿ぇ!!売られた喧嘩だ、俺が買ってやるよ!!」



そこら辺にあった木の箱を蹴り壊して、木材を振りかざす。



「ちょ、ちょちょちょ、待てぇ!!こ、こう云うときは召喚士として"競う"のが儀礼だぞ!!」



「……あン?何よ、"競い"って」



何其れ知らん、俺にとって一番馴染みの無い言葉だ、何を競うの足の速さ?でも昔から足が速くてモテるのは小学生までだって言われなかった?


まあ、俺は小学生の頃、足が速くてもモテなかったんですけどね。



「えっと、"競い"とは、貴方の持つカード、"デュアルサモン"を使用した、決闘の流儀です」


言うなればカード遊びって訳ですかそうですか。



「ふーん、ま、いいんじゃね、いいよ、それで」



元々殴られた分は今さっきの膝蹴りでチャラにしたし、カード遊びも余興として楽しめるだろう。


けど、それが終われば俺は家に帰るぞ、今日の夜、見たいアニメがあるんだよ。



「ク。クク、肯定したな、決闘に、その血の流れに、さあ、始めよう、命を賭した決闘を!!」



その言葉の直後、赤いペンキで描かれた円が燃え上がり、その円内に不可視の台が形成される。


ハワードとか言う男は、黒いベルトからカードの束、デッキを手にして、それを不可視の台に乗せた。



「え、何?命を賭した?それ本当の話?」



「……え、もしかしてしらないんですか?」



燃え盛る業火の外から聞こえるリイムの声、いや、この在り得ない状況が興ってるから、命を賭した云々は信じるけど。


なに、これマジで命賭けるの?あんな出来事をきっかけに?


……………ちょ、見たいテレビまでに終わるかな?




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