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立場逆転  作者: 夏樹
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あの日?…って、どの日?

※建内蓮が気持ち悪い

「大高、俺の事好き?」


「……まぁふつうに」


「そっかぁ。俺も大好きだぜ!」


「……どうも」



この男、どんな大層な神経をしているんだ。

自分の事が好きかと聞いたら「普通」と返って来たんだぞ。俺も大好き、なんてよく言えたもんだな。

感服だ。ある意味感服だわ。


ていうかさっきから鬱陶しい。建内が鬱陶しいのは今に始まったことではないが、明らかに、あまりにも距離が近い。

現在、私と建内はお互いの隣を歩いている。

想像してみて欲しい、2人の距離は成人男性ひとつぶんの拳ほどしか離れていないのだ。

私はパーソナルスペースが広い方だと思う。こんなにも近いと不快感しか沸かない。

しかも相手が建内の野郎と来れば私の不愉快ゲージはMAXだ。


いや、MAXどころか突っ切ってる。ゲージ破裂してる。

嫌すぎる。頼むからこれ以上距離を詰めて来ないでくれよ、と無駄なテレパシーを奴に送る。



「ど、どうかした?あんまり見つめられると……その、照れる」



見つめてねぇよ!睨んでいたんだよ!


何を勘違いしたんだか、奴は私に見つめられているものだと思っていたらしい。アホか。好きで見ていた訳じゃないわ。


しかし。ここで「勘違いしないでよね!」なんて言おうもんならツンデレ疑惑を立てられてしまいかねない。

そうなったら最悪だ。やっぱり大高は俺が好きで好きで仕方ないんだ!素直になれないだけで!となるのは目に見えている。


徹底してツンツンするしかない。氷のような冷たさに耐えられなくなった建内が逃げていくまで。

こういうのを確か……つ、つ、つんどら?だか何だかって言ったような。



「建内くん。私、今週はトイレ掃除の当番だから。遅くなるから一緒に帰れないの」


「あ、そうだっけ?なら待ってるわ」


「……遅くなるから、帰れないの」


「へーき。トイレ前で待ってるからさ」



私は二度も帰れないと言った。二度も言われたら普通は察しないか。

「帰れないんじゃなくて帰りたくないんじゃ」って。

遠回しに伝えるのはやはり無駄か。成績はむかつくほど良いくせに鈍感キャラとは本当に腹立たしい。


しかも、どこで待ってるって言った?

トイレ前で?


なるほど。逃がす気ゼロって事か。

女子トイレの前に長時間居座るという行為に対しての羞恥心は持ち合わせていないって事か。なるほどね。



「トイレ前に居られると恥ずかしい。私は建内くんと帰る気分じゃないの、だから先に帰ってって言ってるの」



はっきり、きっぱり、言った。

言い切ってやった。


ふふん。どうだ、ここまで完璧に拒否られると流石に気付くだろう。

罪悪感は……まぁ無くはないが、この際仕方ない。

鈍すぎる建内が全面的に悪い。私は常日頃から精神面に被害を受けている。私は悪くないはずだ。


喋らなくなった建内を横目で見ると、何やら神妙な面持ちで考え込んでいるようだった。



「もしかして、さ」


「ん?」


「……大高、あの日?」


「あの日?…って、どの日?」


「だ、だから、その」



もじもじしながら頬を赤く染める。


気持ちわる…なんだコイツ…。

男ならズバッと言い切って欲しい。私は建内と違って成績優秀でもなければオツムの出来も違うんだ。馬鹿は「あの」だの「これ」だので察するなんて不可能なんだ。


気恥ずかしそうに視線を泳がせていた建内が、意を決したように私を見た。



「…………生理?」


「…………はぁ?」


「生理始まってイライラしてんじゃないかって。トイレ前に居られると恥ずかしいってのも、掃除の後にアレを取り替えるつもりでいたから……って、大高!?」



なんで先行くんだよ、置いてくなよー!と私を追いかける奴の声が聞こえる気がするが、どうでもいい。

さっさと学校に行って授業を受けたい。


心なしかずきずき痛む頭に顔をしかめながら私は走る速度を速めた。

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