七話目:テスト開始!
今、僕『達』は一年四組の教室(つまり僕の教室)にいる。
そして現在朝の会で(と言ってもまぁ、健康観察とかするぐらいなんだけど)『光』が自分の机に座っている。…………つまりレイルが座っていて、僕は案の定隣でふわふわ浮かんでいる。
一見何気ない学校生活の一コマだけど(まぁレイルが僕の体に入り込んでいる時点で、すでに非日常的だけど)今現在までくるのには、実際はとても大変だった。
というのも、レイルが挨拶した友達全員が『声が低い』って言ってきて…………………先生が来るさっきまで何人かに囲まれてしまったのだ…………
―うぅ………僕ってそんなに声高かったの?
「知るか! 私に聞くな」
…………………………。
「しかし、おまえはそんなに人気があるのか?」
……………が。
―いや全然。友達はいたけど、そこまで人気者って訳じゃなかったから……いわゆる普通の男の子だったよ。
……………ちが。
「ふっ。私には、ずいぶんお前は変わり者だと思うが……」
「知我ぁ!! いるなら返事!!」
僕らの耳に(まぁ、あえて突っ込まない)突然澪先生の声が響いてきた。
「えっ? は、はい!!」
げっ!
突然のことだったからか、今のレイルの声は、思いっきり裏返った。
『!!??』
予想通り、クラス全体がざわめいた………………
…………………が
「なんか知我君、いつもと違う感じだね」
「今日の光君、なんか大人っぽいね………」
「知我、今日はどうしたんだ………」
「おいおい知我、どうしたイメチェンか?」
と、先生までなんか盛り上がってしまっている。
「な……なんだこの騒ぎは…………」
―それは…………………………………僕が聞きたいよ。
このざわめきは僕にとっては予想外で、なんかショックだった。
というか、さっき誰か『大人っぽい』って…………
……………そんなに今までの僕は子どもだったのか!?
「……さてと、とりあえず、今日はテストだ! みんな今日までの努力の成果をしっかり出せよ!」
先生が再び口を開いた。
まぁ…僕らはちっとも努力なんかしてないんだけどね……
そのとき、ちょうどチャイムが鳴った。
さっきまで出来た人の山も完全に引いて、いよいよテストだ。
といっても、僕は隣で見守ってるだけの存在で、実際にテストを受けるのはレイルだ。
回答用紙が配られる。
遅れて問題用紙が配られる。
レイルがペンを握る。
―レイルぅ!! なんか分からないところあったらとりあえずは僕に聞いて…っていや、とにかくなんかあったら僕に何でも聞いて! あれ、でもこれってカンニング?
…と、隣で僕が言っていた時…
レイルがペンを置いた。
―……へ?
僕はすかさず回答用紙をのぞき込んだ。なんと……
そこには最初から最後まで、しっかり書き込まれた解答用紙があった。
しかも僕の見る限りではおそらくほとんど正解。開いた口がふさがらないとはまさにこのことだ。(……口、無いけどさ)
―すっ……すごいよ!! 昨日たったあれだけやっただけなのに、完璧に暗記してたの?
「…まぁな」
レイルが小声で言った。
「たかがあれだけの暗記量、私には紙切れよりも軽いものだ」
―へ、へぇ……
僕はまだ驚きを隠せなかった。
―……あ、でも後の時間どうするの?あと四十五分も残ってるけど?
「私は待つが………お前はどうせ退屈だろう。どこかへ飛んできたらどうだ」
レイルが少し意外なことを口にした。
―えっ! いいの? 飛んできても……
「時間までに帰ってくれば問題ないだろう。それに……」
少し間をおくと、またレイルが言った。
「『今のお前は周りの者達とは別の場所に存在している』 だから他のものにはお前の姿が見えないのだ。私は、現在おまえがいる場所も見えるからお前が認識できるが、その場所に存在しているわけではない。だからお前にはふれることが出来ないのだ」
レイルは話を(小声で)続けた。
「……だからここに見えているものはお前の世界には実際、存在していない。だからお前には答案用紙も、人も、リンゴも、鉄筋コンクリートの壁もすり抜けられるぞ」
―……へぇぇ、違う場所かぁ………なんか変な感じがするけど、自由に飛び回れそうだね。分かった! ちょっと行ってくるよ!
僕はレイルに言った。
「まぁ、なるべく早く来い……………もしおまえがいない時に何かあったら、『私が』何とかするぞ」
う…………ちょっと不安になってきた……………………
―じ……じゃあね……
とりあえず、僕は教室の壁をすり抜けて(!)レイルを後にした。




