二話目:最初の出会い
僕はもう一度よ〜く目の前の人物を確認してみた。
…………やっぱりどっからどう見ても自分だ。
………あれ、じゃあこの考えたり驚いたり時々説明口調になったりするこっちの僕は、いったい何?
「さっきから何をしているのだ」
いきなり目の前の自分が話しかけた。
思わずうわっ、と声(?)を出して目の前にいる自分の方を見た。
「………腰が抜けたのは分かったが、とりあえず立ったらどうだ」
相手が言った。
―ああ、そういえばそうだね。
僕はいつも通りよいしょっと立とうとした。…
うわっ!
なんとそのままいきなり体がふわっと宙に浮いてしまった。
………なんだか体がめちゃめちゃ軽い。
紙切れよりも軽いみたいで、ちょっと力を入れるとすぐにふわっとどこかに飛んでいってしまいそうだ。
―……何これ?
「分からないか?今、おまえの魂がそこに浮いているのだ」
へ?
そう思って僕の体を見てみると、案の定、目の前の自分と全く同じ見た目だったものの、体はしっかり透けていた。
―えぇぇ!僕、どうなっちゃったの?
驚きのあまり声(?)をあげてしまった。
「……どうやらおまえがその本を開いてしまったために、私がおまえの体に入り込んでしまったようだ」
目の前の自分ははぁ、とため息をついた。
「しかし、ここは何処なのだ?」
―それは僕のセリフだよっ! 君こそ僕の体に入り込んで、いったい誰なのさっ!
僕は目の前の彼を激しく問いただした。
「…私の名はレイル。おまえ達とは違う『魔族』の王……だったはずだ」
いきなり語尾がしぼんでいった。
「………しかし、ここは何処なのだ?何者かによって封印されたのは覚えているが…………えぇぃ! ここはいったい!」
―ち、ちょっと落ち着きなよ……
彼―レイルは少し落ち着きを取り戻すと、再び口を開いた。
「悪かった……で、ここは一体…」
―風見中学校の書庫。ここに君が言ってるその本があったんだよ。
僕はさっきの本を指さして言った。
「学校の書庫? ふっ、私もずいぶん落ちたな………」
―…で、君は一体何者なのさ?さっき『魔族』って言ってたけど………
「ああそのことか」と、レイルが口を開いた。
「簡単に言えば、人間とは違う別の種族だ。翼を持つもの、牙を持つものなど様々だが、その力はすべての種族におけて最強のものを持っているのだ」
―へぇ……じゃぁ、その王っていうのは、一体どれくらい強いのさ?
僕はまだ少し怒りながら言った。
「今は分からないが……昔はこの建物など、指一本の力を加えるまでもなく、崩壊させたぞ」
そ、そんなばかな………
一体どれだけお強いんだ?レイルは……
「……それほどの力を持つ種族だ。人間は様々な手段を使って我々を封印しようとしてきたぞ」
―へぇ。何で魔族を倒さなかったの?
「結論から言うと、不可能だからだ。ましてや魔族の王を倒すなど、同じ立場のものにしかできないからな」
…………よっぽどなんだな。彼らの強さって言うのは。
なんだか目の前に立っている自分が、急に恐ろしく見えてきたよ。
やっぱり中身は魔族の王だからかな。
「まぁ、それで結構な時間封印されたのだが………どうやらかなり封印の力が衰えていたようだ」
レイルは本を横目で見て言った。
「そんな状態の時、おまえがこの本を開けたりするから………………」
―…………しょうがないよ。それより、何でこの本が、こんな学校の書庫にあるわけ?
「さすがにそこまでは私も…」
レイルが言いかけた時だった。
「知我ぁ! さっきから何やってんだぁ!!」