十話目:棒読み少女
「お前は何者だ?」
…………………
……突然のことでみんな混乱してると思います。実際僕も混乱しています。事の発端は昨日の夜。ここはとりあえず省略して……
えーまず今日いつも通り学校へ行く。テストが全て終わる。それで下校するとき七組によって………まぁいまの状況に。昨日からいきなり今日の終わり、何ふざけてんのかって言われても困ります。えーとりあえずおいといて。
僕が言うよりずっと早くレイルは発言してしまった。しかし突然知らないクラスの子からいきなり、こんな失礼な上に返答に困る質問されてもねぇ……。
「………………………………」
案の定、目の前の彼女は固まっている。
―…ちょっと。いきなりそりゃ無いでしょうが。
とりあえずレイルには注意を促した。どうやら気づいたようだ。
「あっ……つ、つまりそれは、」
「……何なの急に?」
突然、黙りこくっていた彼女が口を開いた。
「こんな下校時間には訪ねてきてほしくなかったな。話なら休み時間中に言ってよね」
そう言うと、彼女は大きな欠伸をした。
「…ボク、この時間帯は眠いんだから」
「…………そっちか?」
さすがのレイルも呆れている。
しかし、ほんとになんなのだこの子は………
―一応さっきみたいに怪しい質問みたいにならない範囲で発言して。
僕はレイルに言った。レイルは身振りでボクに了解サインを出した。
「そ、それで君は、時々変な物が見えたりとか変な声が聞こえるとか、そんなことはないのか?」
「ボクの名前は素隙野 憂だよ。ボク、名前意外で呼ばれるの好きじゃないんだよねー」
「…じゃあ素隙野」
「名前だよ、な・ま・え・」
「…………憂、それで何か変なことはなかったのか?」
すっかり憂の要望を押しつけられていて、レイルは結構辛そうだ。……というか、赤面している。しかも少し「素」が出てきているように感じた。
「んー特に無し。たまに目の前に透き通っている物体が浮いていたり、煙っぽいのが見えたりとか、そんなことはあるけど別に変わった事じゃないしなー」
思いっきり変わったことでしょうが。
たぶんレイルも今同じ事考えていたと思う。
「あ、でも君の右斜め上あたりにある人型の薄い影みたいなのなんかは、滅多に見ないかな」
そう言って指さしたのは………はい、僕です。
―あーあ、やっぱり分かっちゃうのか。どうやら声までは聞こえないみたいだけどさ。
「あぁ……そ、そうか……じゃあ、今日はこれで。さよなら………」
レイルがもう会話を終えてしまった。
憂の方はまた大欠伸をして、それから全く気にしていない様子で帰っていった。
「……………私はまた一つ学んだぞ。人間にも、いろいろ種類がいるものなんだな」
僕も…………………………………………………………同感だ。