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夏生詩集2

ある人に

作者: 夏生

今、ある人に手紙を書いています


ある人は命の灯が消える日を

知らされても

愛する人を憂い、心砕いています


ひとつの怒りを握りしめて

いました

ある人の手から鮮血が落ちてゆくのを

見ました


震える手で訴えていました

心なき者によって愛する人の

瞳から光を奪われたと


心なき者に向かって

怒りの礫を投げても投げても

音ひとつたたず、消えていく


襞がうごめく音がきこえ

愛する人の名と自分の名が

落ちて

引き裂くような音をたてて

粉々に飛び散った、と


ある人は

怒りに言葉をのせながら

語っていました


誰に向けて語っていたのか


風のような存在、とある人は

自分を称していました


風は誰のもとにも

吹いています


誰とも目を合わすことも

言葉を交わすこともない

存在している、それだけだと



ある人は

うちひしがれた心のかけらを

持つと、

言葉を震わせていました



傍観者である私は

ある人の肩にそっと触れる

ような言葉を

思いつく限り書いています


贈ることのできない

手紙を





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