妹に彼氏をNTRれたので仕返しがしたい件について。
*カオス。 書いた作者もカオス。
妹の部屋から、ギシギシ音がする。
――がちゃ。
扉を開くと、妹と彼氏が裸で………。
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「あ゛~~~!!! 死にたい」
「麗、もう焼けてるよ?」
お好み焼きを焼きながら、お昼過ぎに見た光景を思い出していた。
まさか、妹に彼氏を寝とられたとは…。麗の瞳はうつろだった。
手際良く、目の前の鉄板のお好み焼きの世話をしている友人の里香は、さっさと焼けたシーフードミックス+餅とチーズのトッピング付きに、ソースを塗っている。
その姿が、なんだか憎らしいと感じてしまう。
「……餅とチーズなんて邪道よ」
「えー。美味しいじゃん。って、あんたはドノーマルな、豚玉が命よね。ほら、食べなよ」
八つ当たりにも物ともしない里香に対して唇を尖らせて、「へいへい」と、だらけながらも手を伸ばし、しぶしぶと刷毛を持って、ソースを塗りたくる。そこに、里香が青のりと鰹節を振りかけた。
「で、浮気現場見た時、なにしたの? まさか、そのまま飛び出したとか? 泣いたとか?」
「………いや、頭の中が真っ白になって」
そう、本当に頭の中が真っ白になっていたのだ。
****
「お姉ちゃんっ!」
「麗」
妹のお気に入りの可愛いピンクのベッドカバーで裸の身体を隠しながら、二人はとても焦っている様子だった。
「な、何よ! お姉ちゃん、勝手に部屋にはいらないでって、いつも言っているでしょ! サ、サイテー」
妹が、彼氏を守るように、つっかかってくる。
だから、
だから、
私は、ふと目にしたアレで……。
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「アレで?」
里香は熱々のお好み焼きを、器用に一口サイズに切り分け、そのままヘラでがぶついた。
そして、ヘラを行儀悪く、麗の方に向け、話を促す。
「……あーうん。まずは、縛った」
「……そう」
****
無言で、回し蹴りを妹に食らわし、気を失っている所、落ちていたアレ…彼氏のネクタイで手首を縛る。
眼を白黒させている、彼氏のまだ元気なブツに彼氏の鞄の角を食らわし、そのまま顔を踏みつけた。
妹のお気に入りのピンク色のベッドカバー引き裂いて、彼氏もベッドの脚にくくりつけた。
そして、裸の二人をそのままスマホで撮影……するが、まだ気が収まらず、とりあえず、一階に降りて、洗面所に行き、父親のT字剃刀を持ってきた。そして、ジョリジョリと、二人の眉毛と、ついでに下の毛を剃る。机にあった油性のマジックで、妹のチーパイ(小さいパイ)とシモに三角ビキニを直接描いて、ついでに胸毛もほどこした。
彼氏には、定番にも額に「肉」と書いて、やはり胸毛をほどこし、腹の上に『俺のマグナムいんげん級↓』と書いて、スマホで撮影した。LINEかTwitterか学校内の裏BBSに拡散とかも考えたが、それは、ほんのちょこっと残っていた理性が止めたのだ。
そのまま、部屋を出ようと思ったが、また少しちょこっと残っていた良心で、二人の眉毛をマジックで1.5倍増量で描きあげ、里香に電話をしたのだった。
「里香、浮気された」
****
「こういう時ってさー、寝とられた側ってどうするの? 泣き寝入り?」
「えー、王道だと、仕返しに自分も浮気するとか?」
「それだ!!!」
麗は、すぐさま立ちあがり、ジョッキに入ったウーロン茶を一気飲みした。
「ちょっと、浮気してくる!」
「あーはいはい」
そして、勢いよく店を飛び出した。
――10分後
「おかえりーー」
「………里香、浮気って難しい」
「そーか。そーか。 ウーロン茶頼もうか?」
「うん」
*****
麗は浮気をする為に、店を飛び出した。
そして、獲物を捜す。
ギラギラした瞳、口からはよだれが出て、両手は前に突き出し、身体を揺らしながらもターゲットに狙いを付けた。
“あいつだ!”
道路を挟んで向こう側で歩いているのは、爽やかなイケメン男子高校生3人組。
部活の帰りだろうか、彼らの周りには、きらきらとした光が集まっているようで、別世界だった。
“ロックオン!!”
麗は飛び出した。
ここが交通量の多い道路というのも忘れて。
キキーーーー!!!
車のブレーキ音。
そんなの、なんのその!
どんっ!!!
脇腹に、車がちょっとキスをかましてきたが、それがどうした!
麗の脚は止まらない。
だって、あと少しで彼らを捕獲することが出来る。
きっと、彼らは麗の素敵な“浮気相手”になってくれる。
そう、未来予想図を描きながらも、麗は突き進む。
そして、後、数センチ! の所で…
「「「うわわわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」」
さすが、スポーツをやっている男子高校生。
脚が速かった。
麗が触れるか、触れない所で、顔を青ざめ逃げ出したのだ。
「貞子だ」という、懐かしいワードを残して……。
「逃げられた」
車に跳ねられ、長い黒髪が全部前にいき、額から血を流していた麗は、がっくりとその場に座り込んだのだった。
****
「…浮気って、やっぱりいけない事だと思う」
おしぼりで血を拭いながらも、少し冷めたお好み焼きを再度、鉄板の上に置き、温め直す。
「まー、相手がしたから自分もするっていう、こっちも分が悪くなるからね。よくはないよね」
「そっかーー。じゃあ、他にアイデアない?」
「………見返す? とか?」
「見返す?」
「よくあるのが、“美少女”になって、相手に振ったことを悔しがらせるっていうやつ」
「なるほど! ……どれくらい? どれくらいの“美少女”ならいいの?」
「……そういえば、忘れていたけど、麗って、全日本高校生美少女コンテストで優勝していたわよね…去年」
「じゃあ、今度は世界を狙えばいいのね!!」
「いや、ごめん。 そこまではいいと思う」
そう。麗は絶世の美少女だった。
行動が残念すぎるので、里香はすぐに忘れてしまうのだが、ちゃんとしたら美少女。
去年の美少女コンテストも、里香が「優勝したら、お好み焼きおごるわよ」の一言で麗は「よっしゃーー!! 豚玉5枚だからね!」と決めポーズをとり、見事優勝したのだ。
***
「ごちそうさま」
お好み焼き屋を後にし、麗と里香はとぼとぼと歩く。
麗が悩みすぎて大好物の豚玉を3枚しか食べられなかったのに、里香は心配した。
「麗さ……彼氏のどこが好きだったの?」
「顔」
麗は即答した。
「そっかー」
「うん。私の横に立っても、今行っている高校で見劣りしない容姿をもっていたのが、彼氏だけだったの」
公園で遊ぶ、子供たちの無邪気な声を聞きながら、二人の声は真剣そのものだった。
「大事だよね。顔って」
「うん。顔が大事だよ」
空が遠く、青い。
*****
落ち込んでいる麗の為に、里香は家まで送る。
麗は、家に入るのが怖かった。
また、二人が裸で抱き合っていたら?
狂った獣の様に、むさぼり合っていたら?
嗚呼、十代の男女の性欲の強さといったら!!!
そんな姿を見たら……今度こそ
―――ナニヲシテシマウカ。
玄関の扉付近で、人の影があった。
なにやら、こそこそとあたりを見渡している。
“泥棒?”
麗は、心臓をドクドクいいながら、近くにあった漬物石大の石を片手で持ち上げ、投げた。
ひょいっ!
ガコンッ!!
「ひゃああああ!!!」
「ちっ、外した」
「麗、こっちにも石があるわよ。いる?」
「よし! もういっちょ!!」
「わわわわ!!! 待って、俺だって! 俺!!」
泣きながら、両手を振って降参ポーズを決めたのは、額に「肉」を持ち、眉毛が1.5倍増量した――??? 男??
「はい! じゃあ、麗、コレ。次に投げるやつ」
「ありがとう! 里香!」
「お姉ちゃん!!!!」
ガッ!!
麗に飛びかかってきたのは、???。
女もまた、眉毛が1.5倍増量していた。
しかし、麗は女に飛びかかられようとビクともしない。逆に、腹筋の力だけで、女をはじき返した。
ドシン!!
足元で、尻もちをついた女………??
「誰?」
「え? 誰って、私よ! 妹の!」
「ん~」
「麗、ほら」
そう言って、里香が女のおでこを…眉毛を隠すように抑えた。
「ああ!!!」
そう、妹。
眉毛がいつもよりも立派になっていたので、麗は気付けなかったが、彼女は妹。
じゃあ、あっちの玄関の扉にしがみついているのは…彼氏?
「………」
「………」
「………ないわー」
「うん。言うと思った」
麗は、冷静になった。
誰だ、あの男は。あの男が、本当に私の彼氏だったのか?……と? だって、眉毛がおかしいじゃないか。 額に何か書いているし。うっすらシャツから透けている文字も、唯ごとじゃない。なんなんだ。変態か。そうか、あいつは変態だったのか。私は騙されていたのか。
麗は、自分がした事をすっかり忘れて、男を憐れんだ眼で見る。
そして、足元でまだ尻もちをついて…涙ながらに睨んでいる妹。
妹の容姿は、平凡だった。いや、身内びいきで見ての平凡だった。きっと隔世遺伝を起こしたに違いない。体系も、16歳になって、小学生も真っ青な幼児体型。75AAAAなんじゃなかろうか。因みに、麗は65Eだった。
思わず、元彼だった男に言う。
「よくこれで、勃ったわね」
「うるさい!!!」
「お、お姉ちゃん!! ひどい!!!」
妹は、麗のスカートを掴み、縋りついた!
「ひどいよ! 本当にひどい!! お姉ちゃんって、綺麗なのに、こんな男なんて彼氏にして! こんな顔だけの奴なんて!! だから、私頑張ったんだよ? さっきは、『サイテー』なんて心にもないこと言ってごめんね? 全部はあの顔だけ男を騙す為だったの。あいつ、全然だめなんだよ。お姉ちゃんと体験する前に、どんな腕前か試してみたんだけど……意味がわからないの。あいつのブツが小さすぎて全然だめだし。小指の方がましなくらい。へたくそだし。腰をガンガン振ればいいと思っている猿以下よ。不合格。あんなの、考えられない!!! あとね? お姉ちゃん、ありがとう。私、幸せものだよ。私の眉毛と胸毛を描いてくれて、しかも下の毛をわざわざ剃ってから、エコな黒ビキニまで描いてくれたんだよね! もう天才。これで、下着なくても過ごせるし。お姉ちゃんが、描いてくれたんだもん。消えないように大事にするね!! もう、超大好き。愛している! 綺麗なお姉ちゃんは、私だけが傍にいればいいの。ああ、また、回し蹴りしてくれる?」
そういえば、麗は忘れていたが、妹は重度のシスコンをこじらせての“変態”だった。
「ちょっと、待てよ」
顔を青ざめさせる元彼。
「……えっと、ごめん。名前忘れた」
麗は、元彼の名前を忘れてしまった。もう、それくらい興味を失っていたから。
それだけ、麗にとって“男は顔”だった。
「……」
「……」
微妙な空気感をやぶったのは、里香だった。里香は、麗のそばに寄りあるものを見せる。
「麗、これ見てみ?」
「えー何?」
「あー里香さん、お姉ちゃんから離れてくださいよ!」
里香のスマホには、隣の高校の一番かっこいい男子の写真。
「どう? あり?」
「んーーーー。妥協点かなぁ」
「………」
「妹ちゃん、また寝とったらだめだからね?」
無言で手を顎にやり眉間にしわを寄せている妹に、里香が忠告する。
「いや、でもここは、お姉ちゃんに相応しいか身を持って体験したいですし。 もし下手なら、お姉ちゃん好みに調教しておけますし」
真剣な眼で、麗と里香を説得する妹。
「……そういう事はさ、早く言ってよ」
麗は笑った。
妹の優しさに気付いて笑ったのだ。
「お、お姉ちゃん…」
「ごめんね? 眉毛、もっと可愛く描けばよかったね?」
「ううん。これがいいの。お姉ちゃんが描いてくれた、これがいいの」
抱き合う姉妹。
呆然としていた元彼に、里香が近づいた。
「ん」
スマホには、麗に撮られた…あの、あられもない姿。
「あいつの妹も写っているし」
こんなの脅迫になんねーよ。と、まだ強がろうとした。
しかし。
里香の表情は崩れない。抱き合っている姉妹を親指でしめし
「逆に妹ちゃんは、喜ぶと思うし。困るのはあんただけじゃない?」
と、言ってのける。
「………何をすればいいんだよ」
「んーー。本当は消えて欲しいけど、物理的に。でも、無理だから、麗の事、忘れて? 元彼だなんて思わないで? あんたと麗は元から付き合ってなかったの。でないと、あんたみたいな男と付き合っていたなんて事実、麗の経歴に傷がつくじゃない」
言葉が出ない。
女とは!! なんと恐ろしい生き物なんだろか!! 若干18歳で、彼は知ってしまったのだ! 女の恐ろしさを! 恐怖に押しつぶされそうになる心。女は悪魔だ。いや、悪魔の方が優しいんではないだろうか。さっきから手が、脚が、震える。震えが止まらないのだ。女という化け物に恐怖して。
のちに、元彼は語った。
「おんなのひとこわい」
そして、数年後。
彼は“薔薇”の世界に身を落とす事となる。
妹に彼氏を寝とられて、3日後。
麗に新しい彼氏が出来た。
もちろん、忠告は忘れない。
「今度は寝とっちゃだめだからね!」
「寝とるんじゃなくて、調教なの!」
今日も姉妹仲は良好だった。