#1 - 2
教室に着いた後はいつも通りの学園生活の始まりだ。
当たり前に授業を受けて当たり前に昼を食べて当たり前に下校。
俺は部活に入ってないので帰宅部だ。
文芸部に入ろうか悩んだが文芸部は主に小説を書くことに専念しているため
俺向きではなく小説も書いている良太向きの部だろう。
しかし良太は文芸部に入らず何故か俺と一緒に帰宅部だ。
良太は運動神経もいいほうなのである程度運動部にもはいれるはずだ。
いつか気になって良太になぜ部活に入らないのか聞いたときがあった。
その時の良太の返答はこうだ。
「なんでって……お前といるほうが面白いからな!」
本当にいいやつだ。
「しかし神楽坂さんの微笑みを見れるなんて羨ましいな」
帰り道に良太が唐突にそういった。
「そんなに珍しいことなのか?」
「当たり前だ! 神楽坂さんが特定の人物に微笑みかけるなんてそうそうないぞ!」
俺はそれを聞いてますます首をかしげた。
「じゃあなんで初対面の俺に?」
俺がそうつぶやくと良太も思い出したように言った。
「そうだよな。そういえば今日初対面って言ってたな。なんでだろうな」
2人であーだこーだ言ってても結局結論が出ず、分かれ道に着いた。
「じゃあ今日は俺こっち行くから」
「あの丘へ行くのか」
「あぁ。なんとなくな。良太も来るか?」
俺が良太に尋ねると良太は両手を挙げて
「今日は姉貴が帰ってくる日だから早く帰らないと」
と困ったように言った。
「おう。お前の姉貴かなりブラコンだもんな」
良太の姉は現在社会人で働いているのだが一週間に一度実家に帰る。
働く前まで良太と良太の姉は仲がとても良いと評判だった。
一度良太が姉が帰る日に俺の家に泊まったことがあったのだが
その次の週の姉の機嫌がとっても悪かったらしい。
それ以来良太は姉が帰ってくる日はちゃんと寄り道しないようにしている。
「それじゃあな。せいぜい姉貴と仲良くな」
「仲は悪いわけじゃないよ。お前も暗くなる前に帰れよ?」
そういってそれぞれ分かれた。
「さてと……丘に向かう前に本屋へよるか」
俺は近くの本屋に行って今読んでいる小説の最新刊を買った。
先週が発売日だったのだが最近読み始めたばかりなので追いつくまで買っていなかったのだ。
俺は目的地に着いた。
商店街を抜けてちょっとした山道を抜けたところに丘がある。
その丘からは俺たちの街を一望することができるのだ。
そこは俺達のちょっとした穴場でそこで本を読んだりするのだ。
人も来ないし何とも言えぬ安心感がある。
落ち込んだり悩んだりした時にここに来るとなんだか元気が出るのだ。
俺はそこにある座るにはちょうどいい感じの石に腰かけた。
そして鞄から買った小説を取り出して読み始めた。