1つ目の決着(改編)
戦闘描写は難しい・・・
この世界にきてから分かった事がある。それは、元の世界にはない技術もしくは力に類するものがあるということ。こちらの世界にきた瞬間にかけられた何かは、首輪と翻訳関係のものだと騎士たちの言動から察した。そして、奉具使いの発現と拷問を通して気付く。それは魔の法。この世界に満ちる何らかのエネルギーを効率よく変換、行使するのが奉具であり、
決められた言葉によってエネルギーに指向性を持たせる。それがこの世界の技術であった。
この世界の技術が、世界に満ちる力を等倍に変換するとしたら、奉具はそれを数倍から数十倍に変換する事が出来る。だからこそ、奉具使いは英雄となりえるのである。悠斗が奉具に目覚めてから使わなかったのは力が無いと思わせておく為。牙がない獣を警戒する狩人は居ないのだから。だが、それも終わり。災厄の魔物と戦えば、どう転ぼうが用済みとして殺されるか国の兵器として使われるかだ。だからこそ、今その牙を目の前の災厄の魔物とその後ろに控えるこの国の騎士団へと向ける。
悠斗の奉具の力は、この世界にみちるエネルギーを意のままに操る事が出来る力であった。今の悠斗の動きの疾さは、悠斗がそのエネルギーを人工筋骨格のように身にまとっているから可能な疾さであった。それはこの世界でいう身体強化の魔法と類するものであり、その技術を知らなくとも悠斗の奉具は持ち主の意思に応え、力を与える。
(もっと疾く、もっと鋭く!相手よりも速く!!)
その身が更に速度を上げる。だが、それでも災厄の魔物は揺るがない。悠斗の拳がどれだけ当たろうとも響いてはいないようである。淡々と一撃をあてる為、悠斗に腕を振い続ける。当たれば今の奉具の力で強化している悠斗でも一発で戦闘不能に追い込む一撃を、機械のように振い続ける。それを悠斗は紙一重で躱す。自分のすぐ横を死が通り過ぎていく。その事に、悠斗は笑みがこぼれる。
(あぁ、俺は生きている!今、この場を!生きていると実感出来る!!)
元の世界では、ただ日々命を浪費するかのように仕事をこなしていただけであった。それが嫌とは思わなかった。だが、それでも心のどこかは死んでいた。他人との友情、愛情といったものが希薄にしか感じられなかった。1人の親友との関係を除いて。親子の愛は確かにあったのだとは思う。だからこそ、それが分からなかった。頭では親の愛を理解出来ても心では理解できていなかった。
だが、それも今は違う。旅立つ前に母からの愛を感じて、目の前に死を体現した魔物がいて、親友とあの彼女の為に戦えている自分がいて、自分は誰かの助けになると認める事がやっと出来た。
(だからこそ、お前にはここで消えて貰う!)
お前に外からの攻撃が通らないなら、中から通してやる。手に集めた力を相手の中で破裂させるイメージを描く。
「喰らえ!<内剄>!!」
悠斗の拳が魔物の体に当たる。だが、それでも魔物は止まらない。ただ悠斗を殺す為、いつも通り腕を振おうとした。その瞬間、堅固たる己の身に響く何か。
「???」
そして死を与える腕が止まる。その驚きは、まるで初めて痛みを感じた事に戸惑っているようであった。それをみた悠斗がラッシュをかける。その拳は相手を内から破壊する。悠斗から与えられる痛みに初めて災厄の魔物が咆哮する。
「!!!!!!!!!!!!!!!!」
そこに言葉はなくとも感じられる感情があった。初めて魔物は自分にとって脅威となる者に目を向けた。自分に牙をつきたててくる獲物に。その獲物に自分の存在意義である死を与える為に、災厄の魔物は本当の一撃を悠斗に放つ。初めて自分が意識的に振った攻撃であった。それは、大気を砕きながら悠斗へと迫る。だが、それすらもかわしてみせる悠斗。
(難易度レベルアップってか!だが、足りねぇ!足りねェな!!まだ!!!)
悠斗の攻撃は災厄の魔物にダメージは通る。だが、それすらも災厄の魔物へ死を与えるほどはない。喰らった瞬間から内部の組織は再生し、元に戻る。それが災厄の魔物の絶対的な力であり、力の源であった。倒すには、一撃のもとでその存在を消し去らねばならない。自分の攻撃が決定打とならなくとも、悠斗は攻撃を続ける。今回の相手を殺す役目は自分じゃなくて、明人の役目だから。自分は、生と死を観客に目の前の魔物とただ踊り続ける道化の役目だ。
明人は、目の前で魔物と戦っている悠斗を見つめる。先程から攻撃は苛烈を通り越して激烈にすらなっている。その攻撃を悠斗は笑みをもって躱しつづけている。その姿をみて、明人は悠斗が自分に託した役目を完遂するために力を練り上げる。
鞘から抜いた刀を上段に構え、目をつぶる。
(砥ぎ澄ませ、自分は刃。我が刃に断てぬものは無いと。燃やせ!己の魂を!!)
悠斗と魔物との戦いの音すら、聞こえなくなっていく。自分の力を自分の刀へと集め続ける。その心に浮かぶのは、親友とこの世界で初めてあった女性の姿であった。
そして、その眼を開く。そこには意思を燃やした金色の瞳が煌めいていた。
(絶対に君を助けて見せる!!君をもう二度と泣かせない為に!)
悠斗は自分の背中で膨れ上がる力を明確に感じていた。その膨れ上がる力に魔物も悠斗以上の脅威と認めたのか、明人の方へと攻撃の矛先を向けようとする。
「いかせねぇよ!明人の邪魔をするんじゃねぇ!!内剄六連!咲け!!<狂花>」
前後に3発、交差しながら計6発を魔物の体に撃ち込む。撃ち込んだ6発の打撃が魔物の体の中で同時に弾け飛ぶ。その一瞬だけ、悠斗の攻撃は魔物の再生能力を超え魔物動きを僅かながら止めた。その隙に、悠斗は自らの奉具の本当の力を行使する為、地面に手をつけ。
「魔装‘糸,」
悠斗の手袋から目に見えないエネルギーで出来た糸が生み出され、地面を通り魔物へと絡みつく。そしてそのまま魔物の動きを拘束し始めた。魔物も痛みから立ち直り、悠斗の奉具による拘束を破ろうともがき暴れる。だが、その力をもってしても悠斗の糸を破れない。
「またせたな、明人。準備完了だ!」
悠斗の合図が聞こえる。目の前の魔物は、その体を悠斗の手によって地面に縫いとめられていた。その身に向かって明人は、全力の一撃を撃ち込む為地を駆ける。構えられた刀には膨大な力が込められ、刀身が赤く染め上がっている。
「うぉぉぉぉぉ!!<龍炎咆火>!!!」
咆哮一閃、その一撃は悠斗の拘束している強靭な糸すらも切断し、魔物の体を肩から脇へと切り裂く。切り裂いた傷口から紅蓮の炎が噴きあがり、魔物の体を燃やし続ける。災厄の魔物は、その刃に身を切られ、炎に焼かれながらも攻撃してきた明人へ自分の存在意義を刻もうと、死を与えようと腕を振り上げる。それをみた悠斗は咄嗟に糸で動きを止めようとするが、静かに明人が呟く。
「龍の咆哮は二度轟く」
傷口から噴き出す炎の密度が増し、炎の色が紅から蒼い炎へと姿を変え、魔物の身を更なる業火に焼いた。そして、アレほどの存在感を放っていた魔物は灰となり散っていく。
チンっと明人の刀の唾なりが聞こえた時には、その灰すらもこの世界のどこかへと消えてしまった。災厄の魔物は、ここに倒された。たった2人の異界人の手によって。
本当に戦闘は難しいですね。。。予定ではここから先戦闘ばっかりです。
拙い文章で申し訳ありません。
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