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五月。ごわすの小指を埋める。  作者: さわみずのあん


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3/6

石焼き芋

 人という字は、人と人とが、うんたら。

 なんてことはなく。

 人という字は、土の中に石があるから、二股なのだ。

 又根またね

 大根ニンジンさつまいも。

 スーパーなんかで見られるそれらは、どいつもこいつも、イケメン美人。

 まっすぐしゃんと、綺麗な見た目。

 けれどそれは、農家さんの努力の賜物。

 ブスは間引かれ、ブサイクは規格外。

 味や栄養。中身なんて関係ない。

 売れる野菜は、見栄えが良い野菜。

 人というのは、見のみ、見のまま、見た目で判断する。

 はーあ。

 おっといけない。

 劣等感横断鉄道が暴走機関車。

 話のレールから外れている。

 甘薯休題かんしょきゅうだい

「っっっきゃああああああああっっっっっ」

 キングコングがエンパイア・ステート・ビルディングにスタンディング。

 右手にむんずと、セクシーさつまいも。

 ただ、この、セクシーさが、いけなかった。

 少なくとも、中二には。

 又根のまたに、また、根。

 だんの、こんが、ぶらり途中下車の旅。

 だんのこんがキングコングが、他の女子の悲鳴によって、これに気づく。

 県大会決勝で、ハーフライン前からのブザービートを決めたという、ゴリラゴリラゴリラの豪速球。

 きゅうきゅう、きゅうきゅう、き ゅ う

 き  ゅ  う、き    ゅ    う

 き        ゅ        う

 き                ゅ                う

 き                                ゅ

                                             

                      ゅ                                   

                                         

                ゅ                            

                                                

                                             

                                               

                                           

                       ゅ                         

                                               

                                                  

                                                     

                                                

       ゅ




























                       ゅ




 一日千秋スローモーゾーン。

 いや、これは。

 死ぬ瞬間、周囲の景色が、ゆっっっくりに見えるってやつだ。

 迫り来る、セクシーさつまいも。

 剛腕からの豪速球が止まって見える。

 球の棒がはっきりと見える。

 眼前に、顔面に、完全に、芯をとらえた、フルスイング。

 さつまいもの擬音といえば、ほくほくだが、生のさつまいもの擬音は、撲撲だ。石裂き芋だ。

 あっ、そういえば、固いよね、いもけん、

「ぴっ」

 薩摩示現流は一撃必殺。

 これ、っがっ、芋剣。

 ぴっ、ぴっ、ぴっ、ぴっーーーーーーーー。




「このイモっ。生きてるんっ、だけどーっ」

 私を指す言葉。

 くすくすくすと、周囲のクラスメイトも私を嗤う。

 くすくすの間に、ブス、とか、ブサ、とか、シネ、とか。

 私を刺す言葉。

 かさかさの心の柔らかい部分をぐさぐさと刺していく。

 熱い。苦しい。

 なのに、みんなは私を囲んで楽しそう。

 私は、石焼き芋じゃないっ。

 火の中で、弾ける。栗より上手い、十三里。

 心拍を取り戻した私は、保健室のベッドの上。

 良かった。全部、悪い、夢。

 ……じゃなかった。

 枕元で、全裸のセクシー薩摩藩士が、タオルを硬く、絞っていた。

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