雨降り
何というか、勢いで書きました。というかこの連載は勢いで書くことが多くなりそうです。
「退屈」
唐突に、環汰が言った。
「…良かったな」
遊斗は読んでいた本から一瞬だけ顔を上げて、馬鹿じゃねえのコイツ、という目で環汰を射抜きながら言った。
「あーーーーーーーーーもーーーーーーーーーーーー超退屈ーーーーーーーーーー!!」
椅子の背もたれにがっしりと抱きつきながら、環汰は絶叫した。
「人様のクラスで騒ぐんじゃねえ。OK?」
遊斗は今さっき環汰に向かって振り下ろした拳を見せつけるようにしながら問うた。
「お、おーけー」
環汰はじんじんと痛む頭を両手で押さえて、涙目になりながらもそう応えた。
「相変わらず馬鹿だなー、環汰は」
「咲…酷え…」
あははと笑いながら環汰の頭をばしんばしんと、割と強めに叩く咲夜を、環汰はじっと睨みつけた。
「だって俺だって暇だし」
「だよなあ…。屋上にも行けねえし…」
「今日は雨だもんね」
環汰の睨みが咲夜に効くことは無く、咲夜はしらっと言い放った。環汰はため息を吐きながらも同意し、それに秋が続いた。
そう。今日は雨の日。何時も昼休みに使っている屋上にも行けず、遊斗以外はやることも無く。遊斗を除いた三人は、暇を持て余していたのだった。
「何か喋れ、環汰」
「ええ!?俺!?そういうの無茶ぶりって言うんだろ!?無理無理無理」
「え、環汰の一発ギャグ?うわあ、楽しみ!」
「ちょっと秋さん?可愛い顔して何言ってんの?今何気にハードル上げたよね!?」
「環汰の全身全霊を込めた一発ギャグか…これは期待だな」
「ちょっ遊斗!?君今の今まで本読んでたよね!?何でこうゆう時だけ会話に混ざってくんの!?そして何で更にハードル上げたの!?」
「「「良いから早くやれよ(やってよ)」」」
「……いや、やんないけどね?」
環汰が言うと、環汰を除く三人は一斉にため息を吐いた。
「うわあ…最悪」
「今ので一気にこの場の空気が白けたな…」
咲夜と遊斗が舌打ち混じりに言う。
「え、ちょ、そんな…最初からそんな盛り上がってなかったじゃん…」
環汰が慌てて言うと、二人は更に言った。
「何言ってんの。さっきまでの盛り上がりは今日の最高潮だったよ。なあ、遊斗」
「ああ。今は環汰のおかげでマイナスの方向に最高潮だとは思うけどな」
二人に攻め立てる様に言われて、環汰はうっ、と唸った。
「あ、秋はそうは思って無いよな?」
環汰は、環汰の「やらない」発言からずっと黙ったままの秋に助けを求めた。
「……」
「………」
「…………」
「……………」
「「………………」」
無言の攻防戦の中、遊斗が言った。
「一向に目を合わせようとしないな」
続けて咲夜が言う。
「つまり、秋も俺達と同意見ってことだな」
二人とも楽しそうに笑いながらの発言だった。
「こ、この」
環汰がふるふると震えながら絞り出す様に呟く。その姿はまるで小動物の様だった。
「ん?何だ?聞こえねーよ?」
遊斗が耳に手を当てて「聞こえない」アピールをする。良い笑顔であった。
「この、どS野郎共ーーーーーーーーーーーーー!!」
うわーん、先生に言ってやるー!!等と言いながら駆け出すその姿は、とても現役高校生男子には見えなかった。
「あーあ、行っちゃった。ってか、ガキかあいつは」
咲夜がくすりと笑って言った。
「二人とも、やり過ぎだよー…。環汰可哀相」
「決定打が何を言う」
秋は咲夜の言葉に何のこと?と首を傾げる。これが腹黒とかでなく、完璧に天然なのが秋の恐ろしいところである。
そして諸悪の根源、遊斗は、
「あー、五月蝿いのが居なくなって清々した」
と、再び読書を開始。
「…まあ、退屈が紛らわせて良かったわー」
咲夜は言って、自分の席へと帰って行った。
「環汰、大丈夫かなー」
秋は始業のチャイムが鳴る3分前に、そう呟きながら自分のクラスへと帰って行った。
退屈なのはお前だけじゃねえんだよ。
雨の日は災難。by環汰
環汰はある友人をモデルにしています。というか、『青春』の子達は普通な子達ですよねー。和みます。
いや、自分の作品の子達は皆可愛いですけどね。友人に小説の挿絵とかを描いて貰った時の私の喜び具合は半端ないです。