表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

1. 吹奏楽部

悠斗が高校で吹奏楽部に入部した訳は、担任の長沼先生が音楽の先生で、吹奏楽部の顧問だからという、ただそれだけの理由だった。


そのとき悠斗は、長沼先生に頼まれて音楽資料室の片付けを手伝っていた。作業しながら、BGMとして流れていた吹奏楽曲に合わせて鼻歌を歌っていたら、長沼先生が雑談っぽく話しかけてきたのだった。


「塩野は、吹奏楽は好きか?」


悠斗はあまり考えずに素直に答えた。


「ちゃんと聴いたのはこれが初めてですけど、割と好きかもです」


「そうか。じゃあ吹奏楽部に入れよ。部活、まだ決めてなかったよな?」


全く未経験者な悠斗をあまりにも気楽に誘うものだから、気楽な部活なんだろうと思ってしまったのだった。

それに、音楽系の部活なら女子が多そうだな、という下心も少しあった。


◇ ◇ ◇


悠斗の目論見は見事に外れた。


まず、練習が厳しかった。悠斗たち初心者は基礎練習がほとんどだったが、それでも練習メニューが多く、練習時間が長い上に休む暇がほとんどなかった。さらに、基礎体力作りがあるなんて知らなかった。


「これ、ほとんど運動部じゃないか」


と悠斗がぼやくと、同じ1年の翔琉は、


「あぁ、みんな最初そう言うよ」


と、涼しい顔だった。翔琉は中学でもトロンボーンを吹いていた経験者だ。

全然気楽じゃねぇな…… と、悠斗は小さくぼやき重ねた。


そして、もうひとつの目論見。


吹奏楽部の練習室に初めて入ったとき、悠斗は


「げっ!」


と声を上げそうになった。

男子が半数くらいだったのだ。

女子だって半数はいるのだから多いはずなのだが、悠斗がイメージしていたのは圧倒的女子だったので、そのギャップはとても大きかった。


特に、トランペットパートは全員が男だった。

それを見た悠斗は、自分はトランペット以外の楽器にしよう、と固く心に決めた。が、そんな決心とは裏腹に、あっと言う間にトランペットパートに入れられていた。


悠斗がトランペットになった理由も気楽だった。長沼先生が、


「塩野は、資料室で手伝ってもらってたときトランペットパート歌ってたから、トランペットが好きなんだろう」


なんて言うので、その流れでそのまま決まってしまったのだった。

確かに、音楽資料室で聴いた曲のトランペットは音色が爽やかで、悠斗自身もかなり気に入ったのは事実だった。それにしたって安直な。悠斗はさらにぼやきを重ねた。



しかし、そうは言っても、入部してトランペットになったからには、やらねばなるまい。

悠斗は練習に励んだ。初心者特有の、やればやった分だけ出来ることがどんどん増えていくのも、悠斗には大きな喜びで楽しかった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ