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63、クリアランス・フェス

更新が遅くなってしまって申し訳ありません。


次の日の昼休み。

学園の中庭は春の風が気持ちよく吹き抜けていた。


「だからどう?レオも! 一緒に行こうよ!クリアランス・フェア!」


ココスが頬を輝かせながら尋ねる。


「うん。コヌル補佐官が“頑張って担当したから”って誘ってくれてさ。

 アリアンヌの気晴らしにもなるって。」


レジーナはにっこり笑いながら、ベンチに座るレオとマルクに視線を向けた。


「でね、あそこって珍しい雑貨とか、昔の職人の品がいっぱいあるんだって。

 コヌル補佐官、すごく詳しいんだよ。」


ココスはわくわくした声で続ける。


「レジーナとアリアンヌと3人で行くつもりだったんだけど……ねぇ、レオとマルクも来る?

 ほら、定期考査も終わったし、遊びとして!」


レオは、目を丸くした。


「俺達も参加して、いいのか?

 補佐官殿って、オフの日めちゃくちゃ厳しそうなイメージあるんだが……。」

「むしろ、こういうときのコヌル補佐官は穏やかなんだよ?」


レジーナが肩をすくめた。

マルクは腕を組んで、半分呆れながら笑った。


「まあ、レジーナが行くなら俺も行くよ。

 レオ、お前は?」

「……しょうがない、行くか。

 新しい剣が欲しいと思っていたんだ」

「いや、お前の目的だけやけに戦闘寄りだな……」


レジーナがくすっと笑った。


「どうしたの?2人とも。

 随分と仲良くなってそうじゃない。」

「お前らのおかげでな。」


ココスが宣言する。

「じゃあ決定ね! 今日の放課後、みんなで古商区へ行こ!」



こうなった背景には、ココスの野望(と言う名の息抜き?)があった。


アリアンヌが部屋で学校からの課題をしている最中、

エレーナが手紙を持ってきた。


「お嬢様、手紙がお届きです。」

「ありがとう。」

 

エレーナが手渡してくれたペーパーナイフを受け取り、開ける。

内容はコヌルからのものだった。


「アリアンヌへ。

 久しぶりだな。

 長時間の労働による疲労のせいで体力がないから手短にさせていただく。

 来週末にクリアランス・フェアがあるのは知ってるな?それに一緒に参加して欲しい。掲示板がたててある大広間で待ち合わせだ。返信は不要。」

「……はぁー」

「お嬢様?」


アリアンヌは顔を上げてエレーナへ言った。


「来週末に予定を入れてちょうだい。

 それから、手紙を書く用意も。」

「かしこまりました。」


ということで、レジーナとココスへ話が伝わり、今に至る。




放課後。

学園の門の前で、コヌルが腕を組んでみんなを待っていた。


「遅い。……と言いたいところだが、時間通りだな。」


今日のコヌルは珍しくゆるい服装で、威圧感が三割ほど消えている。


「あれが補佐官殿か……初めて会うな。」

「聞こえているぞ。」

「!すみません。」


そんなやり取りに、アリアンヌは苦笑しつつ頭を悩ませていた。


(……何のために私たちを読んだのかしら。

 買い物をしたかったから?そんなまさか……)


「補佐官殿。お誘いありがとうございます。ところで、何の理由があって私達をお呼びしたのでしょうか?」

「おい、直球すぎるぞ。」


ココスが慌てて注意する。だが、尋ねるなら単刀直入にするべきだろう。


「ふっ、そんな緊張するな。そんな深い理由はない。

 こんなところで立っているのもあれだ。行こう。」


だが、その目の奥に一瞬だけ“別の色”がよぎったのをアリアンヌは見逃さなかった。


(何か……探っている顔。)





王都の外れ、石畳の古道を抜けると、

昔ながらの商人たちが集まる「古商区」が現れた。

色とりどりの屋根布、古びた看板、香辛料の香り。

まるで時間がゆっくり溶けていくような、不思議な雰囲気。


「すごい……」


アリアンヌが思わず呟く。


「わぁ! 見てレジーナあれ! 小鳥の笛だって!」


ココスが飛び跳ねる。

レジーナも隣でにっこり。


「可愛い……。この辺、王族御用達だった職人が昔いたんだよね。」


レオとマルクも男同士で盛り上がっていた。


「なぁマルク、見ろこれ! 謎の武具の部品だってよ!」

「武具にしか反応しないのかお前は。」


みんながわいわいと各店を見始める中、

コヌルは軽く咳払いをした。


「さて。私は少し回りたい店がある。

 アリアンヌ……少し付き合ってくれるか?」

「え? 私たち?」


レジーナが首をかしげる。


「“紙を作る店”を見たい。」


アリアンヌの瞼がピクっとなる。

レジーナとココスは完全に買い物モードだったが、

アリアンヌは違う意味で息を呑む。


(やっぱり……噂の紙について、調べに来たんだわ。)


コヌルは小声で続けた。


「ここには、城の文庫にも残っていない“古い紙の様式”を再現している店がある。

 噂の紙の材質と似ている可能性がある。

 ……買い物は表向きだ。」

「わかったわ。」

「随分と素直だな。」

「隠しててもあなたは黙らないでしょう。」

「話が早くて助かるよ。」


アリアンヌは面倒くさそうな顔をした後、お決まりの愛嬌でみんなに事情を伝えた。


「私達、お目当ての本屋があるの。 

 かなり遠いから馬車で行くわ。

 ちょうどお昼時になったら、帰ってくるから貴方達

 は楽しんでいてちょうだい。」

「え、私も行くよ。」


とレジーナ。


「ごめんなさいね。これは宰相からのお願いなのよ。」


そう言われたら、誰が出ても黙るしかない。


「わかった。私たちはこっちで楽しんでるから言って来な。」

「ありがとう。」

(さすがココスね、話が速くて助かるわ。)


ということで、アリアンヌとレジーナ達は一度別行動を取ることになった。

コヌルの元へと戻って来たアリアンヌは、予想外な言葉をもらう。


「哀れだな。」

「何が?」


意味がわからず聞き返すアリアンヌ。


「レオという名の男が、随分とお前を気にかけていたようだが。」

「幼馴染なのよ。」


そんな会話をしながらも、馬車を捕まえて乗り込む。

御者が扉を閉めているのをみながら、アリアンヌは話した。


「私このクリアランス・フェス楽しみにしてたのよ。」

「安心しろ。調査七割、買い物三割だ。」

「あら、思ったより比率高いじゃない。」




古商区のいちばん奥、木造の小さな工房。

外には乾かされた紙が何枚も吊るされており、革のノートやしおり、万年筆などが売られている。

コヌルが店主に声をかける。


「すまない。この紙の材質について聞きたい。」


いつもの補佐官モードに戻ったコヌルの雰囲気に、

アリアンヌは背筋を伸ばした。

店主は、年配の紙職人だった。

コヌルが差し出した“噂の紙の切れ端”を見ると、目を細めた。


「ほう……これ、昔の“反骨紙”に似てるな。」

「反骨紙……?」


ココスが問う。

職人は静かに続けた。


「王政に反発する者たちが、昔よく使っていた紙だよ。

 破れにくく、燃えにくい。

 そして――“書き手が誰かを隠せるよう”、特定のインクを弾く。」


コヌルの目が鋭くなった。


「つまり、これは……意図的に選ばれた紙だと?」

「間違いない。こんな紙、普通の市民は手に入れられん。」


コヌルは思わず隣に立っている少女を見た。

彼女が何を考えているのかはわからない。


(そろそろ……本気で取り掛からなければいけなそうだな。)

「あ、そうだ。後もう一つ。」

「何だ!?」

「この紙にはもう一つ仕組みがあってな、目の視力が弱い老人向けに作られているんだよ。」

(何だ。そんなことか。)


コヌルは思わずそんなことを考えてしまった。

これは今回の事件とは関係ない情報だったから。


「ありがとう。助かったよ。これが鑑定料だ。」


紙職人はそれを見るとからっと笑って言った。


「なぁに、そんなものはいらないよ。いつでもおいで。」

「感謝する。」


2人はそこで紙工房を後にした。






そのとき、入口の方でレジーナとココスの声がした。


「おーい! 紙の店に入ってたのかー!?」


コヌルはため息をついた。


「……アリアンヌ、彼らたちを適当に買い物に連れていってくれ。

 私はここで抜ける。」

「わかったわ。

 でもコヌル補佐官、全員で来たのに仕事のしすぎではなくて?」

「遊びに来たと思ったか?」

「……おかしいわね、さっきと言ってることが違うわ。」

「私はお前に仕事をなすりつけられて苦労してるんだ。」

「あら、恐ろしい。」


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