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58、コヌルのお一人調査

次の日、コヌルは噂の紙が張り出されるという掲示板に行ってきた。どうやら宰相の話によるとこれ以上噂を拡大させないために私兵を置いて見守らせているらしい。


(改めて自分は、何も聞いていないんだな。)


そんなことを考えながら目的地に着く。

掲示板に近づくだけで私兵から注意された。

コヌルはポケットから一つのバッジを取り出す。

それを見せただけで私兵はサッと掲示板の前から離れた。


「よろしくお願いします。」


私兵を退かせるばかりか、頭を下げられるとは。


(私も偉くなったものだ。)


近づいて立ってみると、そこに貼られている紙は確かに例の紙であった。

だが、驚いたのはその枚数だ。

一枚どころではない。

同じ紙が数枚至る所に貼ってある。

そして、内容も微妙に違う。


「文体が統一されていない。」


コヌルは小さく呟いた。

一枚は流暢で流れるような字、もう一枚は子供が書いたかのようなグチャグチャな字。

一つは丁寧な言葉遣い、もう一つは下衆い言葉遣い。


(こちらは誰が関わってるか知ってるから楽だが、何もしらぬ宰相側からしたらだいぶ厄介な案件だろうな。)


「失礼ですが、一つお聞きします。

 宰相閣下は、今でも掲示板への張り紙を許可されているんですか?」


私兵が答えてくれた。


「はい。ですが、宰相閣下が目を通された物のみという制限がかかっています。」

「それはいつのことですか?」

「数週間前のことです。」

(数週間前に廃止したのに、未だに広がり続けているだと、、、どういうことだ?)


周囲の人々が距離をとりながらも、ちらりとコヌルのことを見ていた。彼女が宰相と何か関係のある人だとわかっているのだろう。

何か言いたげだけど決して口を開かない。

コヌルは何も言わずに紙を一枚だけ剥がした。

裏面を見ると、紙の端に、あるものが押されていた。

それは一見普通の人から見ると、ただのインクのシミのように見えるが、長年扇動者として活動してきたコヌルにはわかる。

交信印だ。


(吟遊詩人、、、この印と何か関係があるのだろうか。)


思わず笑みが溢れる。

呆れたような、だけど誇らしいような。


「失礼、ベリタ補佐官。」


突然背後から声をかけられて、コヌルは振り向く。


「何をされているんですか?

 宰相閣下がお呼びでしたが?」

「宰相が、、、今?

 聞いていないんですけれども。」

「そうですか?おかしいですね。

 今すぐに と確かにお伝えされてるはずなんですが。」


コヌルは眉を顰めた。

「今すぐに」ということは何か緊急のことでもあったのだろうか。










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