56、お疲れコヌル
(結局仕事を押し付けられなくて、夜遅くまでやってしまった、、、、)
コヌルがまだ眠くてしっかり働いていない頭を頑張って動かしながら、部屋の扉の前へ着き入るといつもと違って宰相の机の前に他の補佐官が机の周りを囲むようにして立っているのがわかった。
「おや、やっと来ましたか。コヌル君。」
「おはようございます。
何か重要な会議がありましたでしょうか。
遅れてしまい申し訳ございません。」
「いやいや、いいんだよ。一つ伝達を伝えたかっただけだからね。」
(伝達?このタイミングでか。)
「全員、今日の日没後に私の机の前に集まっておくれ。考えてもらいたいことがある。」
(、、、絶対アリアンヌ関係のことじゃないか。)
そんなことを考えながら、全員で了解の儀を伝え、自分の席に戻る。
「では、みんな。今日も頑張って働いておくれ。」
日没後、宰相の話が始まった。
「これを見て欲しい。」
そう言って差し出されたのは、一枚の紙。
間違いない。アリアンヌ達が作ったものだ。
覚悟はしていたが、いざ目の前に差し出されると少し焦る。
「このように、私に関するよくない情報が最近巷で出回っているらしいんだ。
いやー、困ったいたずらっ子もいるモンでね。
たかが紙だと放置しておいたら、いつの間にか町中に広まっていたんだ。」
宰相の声は穏やかで、どこか苦笑すら含んでいる。
「これが、子供のいたずらで終わるならいいんだけどね。」
紙を覗き込んでみる。
それは一見ただの噂話に過ぎないが、文の所々に普通の人では絶対に知らぬような細部が混じっている。
「王妃と宰相の間に不和協音が走っている?」
「宰相はすでに次期政権を企画しつつあり、王妃と宰相の間に信頼関係はない、、、、、、?」
(あまりにも信用性が低すぎるのではないか?)
会議室の空気がゆっくりと張りつめていく。
そこに場違いなほど明るい宰相の声が、部屋全体に響く。
「私は今すぐ犯人を探して欲しいなどと言うつもりはないよ。ただ、あまりにも情報が少なくてこちらも下手に出れないんだ。そこで、今回特別に調査チームを派遣しようと思っている。」
(これ、絶対私呼ばれるだろ。)
「コヌル君。少し詳しく調べてくれないかね?」
この調べてくれないかね?
の本当の意味は
誰が犯人なのか特定してくれないかね?
と尋ねられているようなものだ。
ここでこの要求を拒否すれば、自分はこの事に加担していると自首しているのと同じ。
「了解しました。」
次の瞬間、宰相はパッと顔を輝かせてお礼を言う。
「ありがとう、助かったよ。
みんな、コヌル君が困っていたら助けるんだぞ!」
(一体この中の何人が素直に私の言うことを聞いてくれるのだろうか。)




