54、宰相と迷える子羊4人
アリアンヌ達との会議へ行った次の日、コヌルは宰相の執務室の前にいた。
「では、これにて私失礼させていただきます。」
「ありがとうございました。」
ここまで案内してくれた侍女にお礼を言って、下がるのを確認した。
扉の前で、一度深呼吸をした後、扉をノックする。
「リシェル様、コヌル・ベリタでございます。」
すると、「ガチャ」っと言う音の後にドアが開いた。
「君が新しくここに配属された、コヌル・ベリタですか。」
「はい、よろしくお願い致します。」
その後は、仕事の役割について説明された。
宰相の仕事は、君主ーここでは王妃と共に政治を行うことだ。だから、宰相の補佐官となる自分はそれが円滑に進むよう調整するのが主な仕事である。
「私が国政を順調に進めるために不可欠な存在となるのが君だよ。そんなに緊張せず、楽に励みたまえ。」
「ありがとうございます。」
コヌルに用意されたのは、全部で八人いる補佐官のうち、宰相から見て2列目の左側の席だった。
ここでコヌルは自分の推測が正しかったことを理解した。前にいればいるほど、宰相との関わりが多くなるため優秀であるということになる。つまり、自分は
『3番目に宰相に気に入られている優秀な補佐官』
となるわけだ。
3番目に優秀な補佐官という立場は、補佐官になったばかりのコヌルに務まる立場ではないから。
(やはり私をここに放り投げたのは、観察をするためといったところか。そしてアリアンヌもそれをわかってそれを黙認したってわけか。)
コヌルは心の中で大きなため息をついた。
今の状況を把握したことで、大きな懸念点が二つできたからだ。
一つ目は、他の補佐官の妨害が入ること。
私は女であり、若手だ。であるにもかかわらず出世した私に絡んでくる奴らが少ないとは思わない。大事な書類を盗まれたら困る。
それで、そんな呑気なことを言っているが、目の前には聳え立つ書類の山。
コヌルはずっとどうやってアリアンヌに押し付けるかを考えていた。
宰相がずっとコヌルの方を向いていることも知らずに。
その頃、街の広場では
「噂が広まるのは、随分と早いんだね。」
レジーナが呟く。
理由は簡単だ。掲示板の前に宰相の私兵が立っていたから。だが、これもアリアンヌからしてみれば計算内だ。むしろ意外であった。
「おかしいわね。宰相程に頭の切れる人ならこんなに早く対処はしないわ。」
「どういうこと?」
「こんなに早く抵抗するということは、まるでこの噂の内容を否定していると言うことに捉えられかねない。噂はほっとくのが一番なのよ。」
「、、、言われてみればそうだよね。」
ココスはそんな2人の会話を聞きながら首を傾げていた。
「じゃあ、どうやってこれから宰相の噂を流すのさ。」




