44、定期考査
最近レジーナは気になっていることがある。
それはザラの行方だ。
つい5日前まではちょこちょこ見かけていたのに、最近は一切見つからない。
そんなレジーナの悩みさえも掻き消してしまうような大イベントがある。
昼下がりの鐘が鳴ると同時に、ざわざわと教室の空気が揺れた。
黒板の前に立つ担任が、一枚の掲示を手にしている。
「それでは、来週から始まる定期考査の科目を発表する。よく聞くように!」
その一言で、クラス全体が一気に緊張する。
ーそうだ。レジーナの言う大イベントとは、定期考査のことである。
「なんだ、そんなものか。」と思った人も一定数いるだろう。しかし、婚約者のいないレジーナのとっては、自分で職を探さなければならないため、最高学年の成績というのは結構大事なのである。
紙が黒板に貼られる音が「パサッ」と響いた。
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《中間試験科目》
一日目:国語・数学
二日目:歴史・理科
三日目:外国語・芸術理論(選択)
四日目:礼儀作法(実技試験)
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アリアンヌの個室サロンには今日も愉快な仲間が集まっていた。(ココスが勝手に収集した。)
「……げ、礼儀作法、出るのかよ……!」
マルクが椅子にもたれかかりながら頭を抱えた。
彼女の机の上には、すでに筆記用具が散乱している。
「実技なんて、日によって調子が全然違うのに……」
レジーナが小声でぼやくと、アリアンヌは肩をすくめて笑った。
「まぁ、前回みたいに靴を左右逆に履かなければ大丈夫なのではなくて?」
「……あれは偶然だよ!」
レジーナがむっと頬をふくらませる。
「国語と歴史はいいけど、理科がちょっと……」
と、マルクがしょんぼりノートを開く。
ノートの中はカラフルなマーカーでびっしり。だが、肝心の内容はどこか混沌としていた。
「マルク、図がシンプルなのはいいけど、“葉緑体”が正方形なのはどうかと思うよ。」
レオが苦笑まじりに指摘する。
「だって、緑で生きてるって感じがするから」
「……感性の暴走だな。」
ココスがぼそりと突っ込んだ。
アリアンヌはそんな4人を見渡し、ため息をひとつつく。
「さて、各自の弱点ははっきりしたわね。しっかり計画を立てて、余裕を持って取り組みなさい。
勉強会を開くのもいいわ。」
「勉強会!?」
とココスが目を丸くする。
「もちろん。ここで落第なんて許されないわ。特にレジーナは、1回目を乗り越えられなきゃ、就活の準備にも響くでしょ?」
「……合理的な理由だね。」
レジーナがどこからかと眼鏡を押し上げながら納得したようにうなずく。
「よし、なら俺が数学を担当してやる。」
レオが腕を組み、どこか得意げに笑う。
「俺は外国語。ココス、単語カード作るの手伝ってあげる。」
とマルク。
「じゃあ私は理科と国語をカバーする。」
アリアンヌがペンをくるりと回し、机にスケジュールを描き始めた。
そこにはすでに「休憩10分」「おやつ持参OK」の文字が。
「……アリアンヌ、鬼じゃなくて天使だね。」ココスが感嘆の声を漏らす。
「勉強のときくらい、楽しくやらなきゃね。」
外では放課後のチャイムが鳴る。
それぞれの表情に、少しだけ戦う覚悟が宿っていた。
定期考査――それは、彼らの友情をちょっぴり試す、もうひとつのステージだった。




