19、通し稽古
レジーナは鏡の前に立ち、深く息を吸い込んだ。脇ではレオが位置につく。アリアンヌは正面で腕を組み、冷静に見守っている。
「今から鏡の間を通してみるわね。
マルクがいつもの一文を言ったら、レジーナは出てきてね。
じゃあ、始めましょう。」
アリアンヌの一言で、場面は幕を開けた。
「君を失うくらいなら、死んでもやろう。」
マルクがいい終わる。
すると、鏡が開き、中からレジーナが出てきて美しい歌声を響かせる、、、はずだった。
いつまで待っても美しい歌声は聞こえない。
「レジーナ、大丈夫?」
アリアンヌが呆れたように言った。
「は、はい。すみません。」
レジーナは申し訳なさそうな顔をして言った。
「このまま治らないようなら深刻ね。具体的な解決策を考えないと。」
そうなのだ。問題は、これが初めての通し稽古ではなく、すでに10何回目の通し稽古であることだ。
レジーナは、最初から1人で歌い始めることができるのに、マルクの後に歌い始めると言うことができないのだ。
(何で、こんな簡単なことができないのかしら?)
とアリアンヌは不思議に思っていた。
「今日はもういいわ。才色競演会まで後2週間よ。心してかかりなさい。」
そこで練習はお開きになった。
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ランタンの炎が唯一の心元となる部屋で、アリアンヌともう1人の女性、ココス・タリマンは話あっていた。
「お疲れ様、ココス。
それで、新しい情報は?」
「帰ってきてそうそう仕事の話?よく飽きないね。」
「わかったから早く情報をちょうだい。」
「はいはい」
ココスが腕に抱えていた数個の書類の束をアリアンヌに差し出す。
「それで?」
「それでって何よ?」
「あんたがわざわざここにくるっていうことは、何か相談したいことがあったんじゃないの?」
「、、、貴方のこと尊敬はしてないけど信頼はするわ。」
「それはそれは、どうも。」
「ねぇ、ココス。」
「何?」
「人に対してトラウマがあって、人に向かって喋れない女の子が、多勢の前で喋れるようになる方法は?」
ココスが不思議そうな顔をした。
「珍しいね、アリアンヌがそんなことを言うのは。
いつものアリアンヌなら率先して才色競演会に間に合うために克服計画を立てて直してる頃じゃないか。」
「そのために、図書館まで行って、専門家に話まで聞いたわよ。全て当てにならなかったわ、、、まあ、最初から期待なんてしてないけど。」
アリアンヌが不満そうに言った。
「じゃあ迷えるお嬢さんのために助言を出してあげるとするか。」
「悔しいけどお願いするわ。」