10、仮面舞踏会の本番
舞踏会場の中央、彼女は静かに立ち、ただ一人、周囲の視線を受け止めている。
その背筋の伸び方に、媚びはない。
その眼差しに、恐れもない。
誰よりも孤独で、誰よりも気高かった。
音楽が再び流れ出す。ゆるやかなワルツ。
しかし、誰も最初の一歩を共に踏み出そうとはしない。
それでもレジーナは、一歩ずつ進んでいく。
まるで、こちらから試すように。
「あなたたちは、どう動くの?」と問いかけるように。
すると――一人の若い騎士が、静かに彼女の前に現れた。
金の髪を後ろで束ね、制服の軍服に胸章が光っている。
誰もが知っている、名門侯爵家の次男、マルク・マーキース。
「おひとつ、踊っていただけますか、レジーナ嬢」
ざわめきが広がる。
まさか、彼が――と令嬢たちが目を見張る中、レジーナは静かに手を差し出した。
「ええ、喜んで」
その声は凛としていて、どこか挑むようだった。
彼女の唇に浮かぶ微笑みは、氷より冷たく、薔薇よりも鮮やか。
アリアンヌは微笑んだ。
グラスを唇に運び、琥珀色の液体を静かに飲み干す。
「始まったわね。
……“仮面舞踏会”の本番が」
マルクにダンスに誘われた時のレジーナの心情
(なんか楽しいかもー(*^^*)