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8話 うち貧乏なんすよ

 サリナさんやギルマスに根掘り葉掘り聞かれたけれど、結局俺が答えられる事は多くなかった。

 答えられる事は、ほぼ全て受付で話していたし……。

 だけど、モシュネーは違った。

 観測者とか言うギフトの効果を最大限に使って、何頭のワイルドバイソンが集まっていたのか、それがどのような状態でそこに居たのか、ボスとなっていたワイルドバイソンが恐らく特殊個体か上位種ではないか等々、色々と追加報告していた。


 まあ!正直その辺りはどうでもいいんだ!

 問題はさぁ!俺の事がバレてるっぽいことでさぁ!


 そして現在、銀の風亭に今日もとった俺の部屋で、俺は土下座している次第です。


「あんまりお金はありませんが、俺の空間魔術的なものについては内密にしていただければと……!王女様に色々面倒な仕事押し付けられそうなので……!」

「え!?いやですから、さっきも言ったっすけど、別に言いふらしたりとかそんなつもりないっすよ!」

「……じゃあ、なんで俺なんかに近づいてきたんだ?自分で言うのもなんだけど、俺は、王都だとかなりの爪弾き者だぞ?」

「あぁ……なんか、そうみたいっすねぇ……。そもそもなんすけど、どうして侯爵家のぼっちゃんが、こんな風に新人冒険者なんてやってるんすか?軍でだって結構活躍してたっすよね?それなのに、皆何故か忘れてるみたいだし……」

「あぁ……俺のギフトについて詳しく知っている訳じゃないのか?」

「そんなの知らないっすよ?なんか変だなー、って思っただけっす」


 その、なんか変だなーって発想自体、Sランクギフト持ちじゃないと普通は無いんだけどな……。

 もうここまで来たならと、俺は自分のギフトについて話した。

 モシュネーは、最初随分驚いていたみたいだったけれど、話を聞いているうちに何か決心が固まって来たらしく、また誘ってきた。


「やっぱり、私とパーティ組まないっすか?きっと役に立つと思うっす!」

「具体的には?」

「ジルさんの功績じゃなくて、私とのパーティの功績になるんで、忘れられる確率が減るかもしれないっすし、ジルさんが話しても忘れられるような内容でも、私が間に入れば忘れられないかもしれないっす!」

「それ、モシュネーにメリットあるのか?」

「あるっすよ?」

「そうなの?どういう面で?」

「ズバリ金っす。うち貧乏なんすよ」

「金……」


 いっそ潔い理由だった。


「お金稼がないといけないのに、自分には大した才能も無いっす。冒険者としても、基本的には戦闘ではなく、何かを探したり調査するのがメインってくらいなんで。そんなときにジルさんの事を知って、金の匂いがするなって思ったんすよ!!」

「正直で宜しい。でだ、パーティ組むとして、どの程度の分け前を要求するつもりだ?戦う力はあんまりないんだろ?確かに俺としても何もかも忘れられるのは都合が悪いから、お前が間に入ってくれるっていうなら助かる面はある。けど、だからって限度ってものがあるからな?まずはその辺りすり合わせて行こう」

「は……はいっす……!」


 俺の問いかけに悩みだすモシュネー。

 うんうん唸っている辺り、もしかしたらどの程度の取り分で交渉するとか全く考えていなかったのかもしれない。

 俺としては、もうパッと決めたんだけども。


「じゃ……じゃあ言うっすよ?」

「どうぞ」

「1割でどうっすか!?」

「は?」


 コイツは今、何を言ったんだ?


「流石に欲張り過ぎたっすか!?あの……1日銀貨5枚くらいでも十分ではあるんすけど……」

「いや、山分けじゃないのか?」

「……はい?」

「定額だと俺が稼げない時に困るから、その日の報酬の山分けでって思ってたんだけど、1割?そんなもんでいいのか?」

「いやいやいやいや!えっと……山分けで結構っす!」

「よし!決まりだな!」


 これは運が良い……。

 俺の事を忘れない上に、報酬の半分しか持って行こうとしない善良な奴が仲間になったぜ……。

 ククク……なんてついているんだ!

 これが軍の奴らだったとしたら、確実に9割は要求されてたぞ?


「じゃあ、仕事は明日からでいいか?」

「それはまあいいっすけど、何やるかとか決めているんすか?」

「いいや全く。今日依頼を受けたとしても、多分明日には忘れられているから」


 冒険者への依頼は、額が大きいものになればなるほど、即日で終えられるものではなくなる。

 狩猟対象が強くて時間がかかるというタイプであれば、俺であればすぐにクリアできるから問題ないんだけれど、遠すぎるとか、どこかへ誰かを護衛して行けとか、そう言う依頼を受諾するのは、俺のギフトでは難しいんだ。

 別に不可能では無いけれど、毎回「え?お前誰?」って話になるのはちょっとな……。


「忘れられるのが問題なら、私が何か受けてくるっすよ?さっき良さげなのあったっす!」

「なんだと……?お前……もしかしてすごい優秀なんじゃ……?」

「こんな事でそんな感心されるとは思ってなかったっす」


 もしかしたら、俺にとってすごく魅力的な相棒なのかもしれない!

 やっぱり、俺は運が良い!


「じゃあその依頼を受けよう」

「いや、依頼の内容を聞かなくてもいいんすか!?」

「正直、俺の事を忘れられたら達成不可能になるようなものじゃなければ、どんな依頼でも達成する自信がある。どこかの国を落としてこいって言われてもイケるんじゃないかな?」

「そんな怖い依頼絶対ダメっすよ!」


 モシュネーが俺に常識についてあーだこーだ言いながら、依頼が張り出されている掲示板へと向かい、1枚の依頼書を剥がして持って来た。

 なんだか、随分長い間張り出されていたような雰囲気の、色あせた紙だな。


「デオス山脈でワイバーン10頭の討伐っす!」

「ワイバーンかー……。塩と胡椒は持って行かないとな」

「……食べるんすか……?」


 こうして俺は、素晴らしい仲間と、儲かる仕事を手に入れた。






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