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◯顔を見たい

作者: モトヒール

まさか担任一発目が6年生とは夢にも思わなかった。

しかも6年生というと半中坊みたいなもんで反抗期に入っている子達もチラホラいて注意したりしても反抗してきたりする。

綺麗事を言っても仕方がないから言うけど私は反抗したりされたりするのが大嫌いだ。

超エリート女子大を首席で出た私がなぜこんなガキたちにナメられなきゃいけないのと思ってしまう。

普通の教師なら生徒と打ち解けるのが仕事と思うのだろうが私は一切思わない。

小さい頃から勉強も運動も1番で周りから怒られたことがないからこういう性格になったと自分でも理解している上でのことだ。

この仕事に就いたのも子供が好きだからという理由でもなく教師になって第二の私のような最高の人物を育てたいという周りから見れば変態的な理由だ。

今年で23歳だが彼氏なんて出来たことない。

いや、出来ない(Can't)のではなくしない(Don't)のだ。

告白された回数は0だがまあ周りの男たちの見る目がないということでしょう。

そんなこんなで結婚は無理と判断したので生徒を子供と思って振る舞おうとしたのだが現実は言う事聞かなかったりイタズラをしたり最高の人物というダイアモンドになれる原石はなかった。

そこで私は別の目標を掲げた。

それはクラスメート全員の泣顔を見ることだ。

陽キャも陰キャも問わず泣顔をコンプリートしたくなったのだ。

天才とバカは紙一重という言葉があるが私はまさにその類なのだろう。

6年生といっても所詮は小学生。

皆の前で一人だけを標的にして叱れば羞恥心で勝手に泣いてくれる。

それでも泣かない子は個別に呼び出して執拗なくらい責めると泣いてくれる。

そういうことを繰り返しても親たちは何も言ってこない。

超エリート女子大首席というブランドもあってか先生の言うことは間違いないという風になっているからだ。

そんなこんなで殆どの生徒を泣かしてきたけど一人だけ何をやっても泣かない子がいた。

あと一歩でコンプリートなのにどうしてこの子は何をやっても泣かない。

泣かないどころか叱ったりすると笑顔を見せてくるのだ。

私が見たいのは笑顔ではなく泣顔なのに。

しかし悪いことをしたら自分に返ってくるというもので一人の生徒がスマートフォンで私のやってきた行いを録画して親に見せたらしいのだ。

そのことがきっかけで私は教師を辞めることになってしまった。

「はぁ、短い間だったけどお世話になりました〜」

教師生活最後ホームルームでぶっきらぼうにそう言った。

今まで散々なことをしてきたので教師を辞める現実を知らせても悲しむ生徒は一人もいなかった。

と、思ったのだが一人私の前に走ってくる生徒がいた。

それは私が最後まで泣顔を見れなかった子だった。

するとその子は私にお礼を言ってきたのだ。

「先生だけだよ。ちゃんと僕を怒ってくれたのは」

どうやらその子は小さい頃から勉強も運動も一番で周りの大人から一切怒られたりしていなかったので叱ってくれる私のことが好きだったのだ。

まるで私と同じではないか。

こんな子を泣かせようしていた自分はバカだと耐えきれなくなってしまい私はその場で泣き崩れてしまった。

「先生泣かないでよ。僕は先生の笑顔が見たいんだ」

お互いに見たかった笑顔と泣顔は見れないで終わってしまった。

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