大熊フータ
いつものようにラウンジで食事をしていると、入口から人がやってきた。
「ちーす。おっ、コタローとチビ子じゃねぇか」
「お疲れ様です、フータさん」
「アギャ」
大熊フータ、ゴブリンダンジョンのクランメンバーの1人でダンジョンレスラー『レッサーマスク』の中の人。
ダンジョンレスラーはその名の通りダンジョン内でプロレスをするレスラーのことだ。
通常のプロレスと違うのは対戦相手がモンスターということ。
レスラー側の冒険者は武器や魔法は使わず拳のみで戦うガチンコ勝負。
試合はネット配信で誰でも見ることができ、大人気コンテンツとなっていた。
レッサーマスクは可愛らしいレッサーパンダのマスクとは裏腹に豪快な戦い方で人気を誇っていた。
「フータさんいらっしゃい。今日もチャンピオンと練習ですか?」
「おうよ。レオ、チャンプはまだ元気かい?」
「はい、ここ最近は挑戦者もいないので退屈してるそうですよ」
ここの第五層にいる階層ボス、ゴブリンチャンピオン。他のダンジョンと違いここのゴブリンチャンピオンは別格に強化されている。
その為通常よりも難易度が高く、先に進めずこのダンジョンを諦める冒険者は多い。人が来ない理由の一つでもあった。
その原因は
「そーかそーか。そしたら今日はたっぷり遊んでやらないとな」
大熊フータである。
自分のスパーリング相手にここのゴブリンチャンピオンを定期的に鍛えていて、強化させていた。
ダンジョンモンスターは倒さずにそのままにしておくと強化される。
そのため危機的状況以外では手負いのモンスターは倒すのが決まりなのだが、このダンジョンはクランの管理下にあるのでメンバーがある程度好き勝手やっても問題なかった。
「コタローとチビ子は今日も訓練かい?」
「はい、もう少しでリンが進化しそうなので」
「おう頑張れよ」
フータがリンの頭をガシガシ撫で、更衣室へと向かっていった。




