騎士団と鬼人組
最下層は地平線が広がる何もない場所だった。
コタローたちが辺りを見回していると、
「おや、僕たちが一番かと思っていたがどうやら先を越されたようだね」
騎士の集団が現れこちらへとやってくる。
先頭にいた女騎士がボタンに声をかける。
「久しぶりだねボタン君、やはりその装備を纏った君は美しい」
「へっ、ありがとよ」
「ん?見慣れない子たちがいるね。僕は御剣、騎士ギルドの長をやっている者だ」
御剣率いる騎士ギルドは国内最強の一角を担い、御剣は最強の騎士としてトップに君臨していた。
世間に疎いコタローでも知っている位の有名人だ。
御剣はコタローたちと挨拶を済ませると、最下層について説明を始める。
「ここの最下層ボスはレイド前提になっているんだよ」
この樹海ダンジョンの最下層ボスは超大型ドラゴンで複数パーティでのレイド戦が必須となっている。
「単独でチャレンジしてみるのもいいけど僕は一緒に戦うのを推奨するよ」
コタローたちは今回攻略を目標としていたので、御剣の提案を受けることにした。
御剣たちと打ち合わせをしていると新たな集団が現れた。
「おっ、やっぱりいたか」
「アカネ!」
やつてきたのは鬼人の一団。
アカネを筆頭に鬼人の中でも精鋭揃いのメンバーたちだ。
「リンたちがここまで来るのは予想してたが、まさか一番乗りだとはな」
アカネたち鬼人と御剣の騎士ギルドは毎年呼ばれている常連で、大抵どちらかが一番に最下層に到着していた。
今回はコタローたちがその2つを差し置いての一番乗りにどちらも驚いていた。
「やっぱり乗り物があるのは便利だよなぁ。俺っちたちは走るしかないからなぁ」
「僕たちは馬車を使っているけど、地形によっては歩くしかないからね。臨機応変に使い分けられるゴーレムはいいね」
しばし雑談をしたのち、これからのレイドについて話し合う。
「作戦は簡単だ。デカいドラゴンをひたすら叩く。以上」
「へっ、わかりやすくていいぜ。俺たち向きだな」
「アカネ君、説明が足りな過ぎるよ。僕から補足しよう」
作戦はこうだ。遊撃と後衛に別れドラゴンと戦う。
遊撃は鬼人たちとメイを除くゴブダン同好会が行い、後衛フォローを御剣たち騎士たちが行う。
鬼人たち御剣たちのパーティは共に十人。
計25名のレイドだ。
ひとまずはこのメンバーで戦闘を始めるが、後続の冒険者たちは途中参加できるので待つ必要はないらしい。
とはいえ援軍はあまり期待できないそうだ。
例年ここまで来れるパーティは鬼人たちと騎士ギルドの他に二ついればラッキーだという。
つまりゴブダン同好会以外にあと一パーティ来るか来ないかという話だ。
レイド必須の戦いにしては心許ない人数だが、たくさんいればいいというわけでもない。
「それじゃあ皆行こうか」
御剣の号令でボスの現れる場所へと移動を始める。




