世界最強の毒
姿を隠す必要がなくなったアヤメはコタローたちに同行する。
リンにおだてられすっかり気分を良くしたアヤメは絶好調だ。
「第一層は大したモンスターは出てこないのでコタロー殿たちなら楽勝でござる。そもそも試験に呼ばれた時点で皆殿のほぼ合格は決まったようなものでござるよ」
聞いてないのに試験内容をペラペラ喋っていた。
なんとなく察していたが、試験自体は形式的なものらしく、そこまで警戒する必要はなかったのかもしれない。
しかしコタローにとっては自分たちの他に人がいるかどうかは重要だったのだ。
山道をしばらく進むと、先程と同じ様に広場に出る。
「今回は俺一人でやるからメイは皆を頼む」
「わかりましたコタローさん」
今回はコタローたげで戦うようだ。
コタローが広場の中央まで進むと、先程同様地面が光りモンスターが現れる。
先程出た大鬼がコタローを囲むように複数現れ、奥には鎧を纏った中型の鬼が立っていた。
端の方に待機しているメイは自分たちの周囲を水の膜で包む。
「アヤメさんこれを飲んで下さい」
「これは何でござるか?」
「解毒薬です。ほらリンも飲んで」
「うぇー、これ苦くて嫌い」
メイが解毒薬を配る。
「拙者は毒物の耐性はあるので不要かと思うのでござるが」
おそらくコタローがこれから毒を使うのだろう。
しかし忍者であるアヤメには高い毒耐性がある。
「アヤメさんはポイズンベアが倒れるような毒に耐えられますか?」
ポイズンベアの毒耐性は現在確認されている中で一番と言われている。
ユカリに依頼されて色々と毒を作っていたコタローは偶然とある毒を生み出す。
その毒は試しに食べたユカリが卒倒する程だった。
そのためコタローがこの毒を使う時は他の冒険者がダンジョンにいないことが条件となっていた。
今まで試験を受けた冒険者たちは試験官に気付いていない訳ではなかった。単純に見つける必要がなかったからだ。
しかしコタローにはその必要があった。
非常時にこの毒を使う際に巻き込む事がないようにするためだ。
ぶっちゃけ今回の試験で使う必要はなさそうなのだが、他人の反応を確認しておきたかったので使うことにした。
コタローから霧が出てきてだんだん周囲を包み始める。
大鬼たちは無防備なコタローに襲いかかるが、コタローはすでに姿を眩ませていた。
霧に包まれた大鬼たちは次々と泡を吹き倒れ始めた。
奥にいた中型の鬼は霧に当たらないよう立ち回っているが、霧は広場全体まで行き渡るのは時間の問題だった。
その光景を見たアヤメは絶句していた。
小鬼ならまだしも大鬼以上であれば大抵の毒は大した効果はない。
その大鬼たちが霧を吸っただけで倒れているのだ。
中型の鬼は口を塞ぎしばらく耐えていたが、徐々に弱っていくのがわかる。
コタローは鬼に一太刀いれて止めを刺す。
全ての鬼が消えたのを確認したコタローはメイに合図すると、メイは広場の頭上に雨を降らせ霧を消した。
後にコタローの毒はダンジョン学会にて世界最強の毒として知れ渡ることになる。




