#097 : 魔王軍☆ブラック企業説
〈城の上空|サクラ SIDE|10:15〉
《*サクラ視点》
王が窓から大声で叫んできた。
ラウワ王「じゃあ戦じゃなくて……裁判では……どうだ!?」
サクラ「そんな正規の手順なんてどうでもいいんだよォォォ!」
「もう滅ぼさないと気が済まないんだよォォォ!!
「全部壊すって決めたんだよォォォ!!!」
「燃え盛る炎で凍った心の暖を取るんだよぉおおおおおォォォ!!!」
王の顔が、青ざめていく。
── 私は最後の宣告を放つ。
サクラ「だから私は来た!!泣きながら!!怒りながら!!請求書を破って!!」
「王都とお前のクビでチャラにしてやりに来たんだよォォォォォ!!」
サクラ「住民の避難も呼びかけたし!あとは燃やすだけでしょ!?」
「良心的だよね!?ねぇッ!?ねぇッ!?」
「なあ王様ァァァ!?なんで私がッ!!」
「泣きながら請求書と睨めっこしてッ!!!」
サクラ「財布の中身と残高計算してッッッ!!!!」
「……こちとらな、限界まで我慢したんだよ……!!」
「だけどさぁ? “あと何回ご飯を我慢する” とか “モヤシいくらだっけ?” とか考えてたら殺意しか沸かなくてさぁあああああ!?」
《*天の声 : 親領主のジルの家で3食昼寝付きだっただろ》
ぐるん!(白目になった)
ぷつん……!(世界に響き渡った)
[タグ]#ヒロインです #モヤシの恨み
サクラ「あああああああ"◯▲◇†☆◆#$%&$$%☆ッッ!!!」
サクラ「ぐぉおおおお"◎†%¥+▲£ッ!!!!」
サクラ「きゃあああ€~×&*◇◎@$☆あああッッッ!!!!!!」
髪をかきむしりながらのたうち回る。
《*天の声:とうとう言語じゃなくなったぞ!?》
(エスト:お姉ちゃん…怖い……)
(辰夫:これはもう理屈ではない……)
(辰美:狂ったサクラさんも好き)
サクラ「──もういい!!!」
サクラ「知らねぇ!!!!!」
サクラ「灰にしてやるわああああああああああ!!!!!」
私は辰夫の背で仁王立ちし、右手を高く掲げた。
空気がピリついた。モンスターたちが、息を止める。
サクラ「辰夫、いけ」(満面の笑み)
辰夫「……ほんとにやるんですか……」
サクラ「お前の鱗って何枚あるんだろうね?剥がしながら数えてみる?」(満面の笑み)
辰夫「任せてください!すぐにいきます!!」
ゴゥゥゥォォォンッッ!!!!
黒き咆哮が天を突き、空が震えた。
魔王軍の進軍は、今、始まった──。
ラウワ王「ちょっと待てええええええええ!!!」
王の叫びが城に響くが、もう遅い。
サクラ「──魔王軍、進軍開始ッ!!!」
──王都上空を、火の粉が舞う。
街の外れから、小さく火の手が上がった。
合図を受けた者たちが、次々と鬨の声を上げる。
空からは怒れる翼竜軍──
地からは“リズムにノってる魔物たち”。
住民の避難誘導をするアンデット。
荷物を持ってあげるオーク。
お年寄りをおんぶする悪魔。
子供をあやすスライム。
── まさかの理由で始まった “征服戦争”。
そのきっかけは──たった一枚の請求書だった──。
……
── その直前。
モンスターたちが ── 一瞬、ざわついた。
オーク「……あの、やっちゃっていいんすか?」
ゴブリン「いや、支配しに来たんじゃ……?」
サハギン「ってかこのあと住む予定なんじゃ……?」
……なにか聞こえたけど、うるせー。知らない。些事だ。
サクラ「終わったあとで!!魔王軍が!!お前たちが!!」
「徹夜してでもちゃんと建て直せばさああああああああ!!!」
「いいよねぇええええええええええッ!?!?」
── 一瞬の静寂
魔物たち「「「ええ!?ブラック企業じゃね!?」」」
《*天の声:お前ら、気づくの遅くね?サクラだぞ?》
サクラ「はい黙れ!これが魔王軍だッ!!文句ある奴ァ……ここでちょっと殺し合いをしてもらいます。」(右肩をクイックイッしながら)
魔物たち「「「ハイィィィィィィィィィ!!!!」」」
火の手が上がった。
ノリと勢いと押し切りで、侵攻開始である。
── これは戦争じゃない。“感情”だ。
請求書に泣かされた女の、怒りの弁明──。
(つづく)
サクラ「街を建て直す金?王に出させろやぁあああああああ!!!!!」
◇◇◇
《征服ログ》
【征服度】:5 %(王都目前)
【支配地域】:オーミヤ(修繕中)→王都(予告焼却中)
【主な進捗】:
・サクラ、怒りの空中演説で債権回収宣言
・モンスター軍、金属音とノリで団結
・王、意味不明すぎて思考停止
【特記事項】:
鍋は打楽器。請求書は導火線。
魔王軍に必要なのは──サクラの機嫌取りと徹夜の根性。
肩クイはバトロワの呪い。
そして王都は──まもなく炎上予定。




