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魔王がポンコツだから私がやる。 ──恥ずか死した私の黒歴史。  作者: さくらんぼん
第08章 : これより、王都を焼きに行きます。
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#095 : 王都決戦☆サクラ in da House

──ラウワ王都・王城・警戒塔。


朝靄が王都を包む中、警戒塔の見張り番は退屈そうに欠伸を噛み殺していた。


最後に敵襲があったのは、三年前。

平和が続きすぎて、最近では「非常鐘の鳴らし方を忘れた」などと冗談が飛び交う始末だった。


だが、その平穏はあまりにも唐突に、終わりを告げた。


王兵A「ん……あれは……?」


空に走る、一閃の雷光。

まるで天から何かが撃ち落とされたような閃光とともに、白煙を上げながら王城の城壁へ叩きつけられた人影があった。


王兵B「なんだ!?ひ、人……!?」


その姿は──白銀の鎧を纏い、金髪をなびかせた女性。

王国最強のS級異端審問官、ユリシア・フォン・ライトハルト。


だが彼女は、見るも無惨な姿だった。


鎧は泥にまみれ、髪は乱れ、頬にはなぜか落ち葉が貼りつき、小枝を持っていた。


王兵A「ユ、ユリシア様!?お怪我はッ!?」


駆け寄った衛兵たちに、彼女はかすれた声で絞り出す。


ユリシア「……王に……伝えて……あの鬼の女が……」


その言葉には、騎士らしからぬ、激しい怒りと悔しさが滲んでいた。


◇◇◇


──王城・玉座の間。


その報告が王に届いたのは、それからまもなくのことだった。


ラウワ王「な、なにィィィィィッッッ!?」

「──おい待て!S級のあいつが、“敗北報告”だと……ッ!?」


王座の間に轟く怒号。

天井の彫刻から埃がパラパラと落ち、廷臣たちが一斉に顔を伏せる。


怒鳴ったのはもちろん、ラウワ王・ガルザム三世。

赤毛に赤ひげ、筋骨隆々の体格と金冠を持つ、“力こそ王道”を体現した戦士王である。


ラウワ王「ユリシアがッ!?ボロボロで帰ってきただとッ!?」


報告を終えた騎士団長・バルドスは、緊張した面持ちで頷いた。


バルドス「魔族との戦闘とのこと……詳細は本人より──」


バタン、と扉が開く音。


そこに現れたのは、件のユリシア本人だった。

泥にまみれ、顔は真っ赤に火照っていた。


ラウワ王「命じたのは“捕縛”だ……それを、お前……」


玉座の間に、怒気混じりの声が響いた。


ラウワ王「なぜ貴様が、泥まみれで戻ってきている……!?」


王は玉座から身を乗り出し、眼前の騎士を睨みつけた。


ラウワ王「“異端の魔物を制す”──それがお前の任務だったはずだッ!!」


ユリシア「……申し訳、ありません……」


ボロボロのユリシアが、かすれ声で答える。


ユリシア「オーミヤにて……鬼族の女“サクラ”と遭遇。敵性を確認後、即時交戦……結果、戦闘不能に追い込まれ──」


ユリシア「……そして……落とし穴に落ち……敗北……しました……」


ラウワ王「なにィ!?」

王が思わず身を乗り出す。


ラウワ王「貴様、戦場で落とし穴に落ちたのかッ!?」


ユリシア「……はい……実に巧妙な罠でした……」(*天の声 : 一直線馬鹿の解釈)


言い訳とも反論ともつかぬその返答に、王は頭を抱えた。


ラウワ王「もういいッ!よく戻った……座っていろ。あとで話は聞く」


王が玉座へ戻ろうとした、そのとき──


バルドス騎士団長が、焦燥を滲ませた声で口を開いた。


バルドス「陛下……もう一つ、報告がございます」


ラウワ王「まだあるのかッ!?今日はやたらうるさいぞこの城は!!」


バルドス「東の地平線より、大規模な砂煙が発生……地鳴りとともに、魔物と思われる影が……」


ラウワ王「魔物……?」


バルドス「はい。確認された数は、ざっと数千以上……種族はバラバラで……整列して進軍している様子が……」


ラウワ王「軍勢か……!」


だが、バルドスの顔には困惑が滲んでいた。


バルドス「ただ、旗も紋章もなく……指揮官の姿も見えません。王国のいかなる敵とも符合せず、まったく“正体不明”であります」


ラウワ王「正体不明だと……?」


王はゆっくりと玉座に腰を下ろし、唸るように呟いた。


ラウワ王「ユリシアは敗北。オーミヤは半壊。そこへ、正体不明の魔物の大軍……」


王は拳を握りしめる。


ラウワ王「──戦…が始まるのか…?すぐに迎え撃つ準備を…」


◇◇◇


──数時間後、警戒塔の非常鐘が遠くで鳴り始めた。


王都が、静まり返った──。


誰もが息をひそめ、祈るように空を見上げた。


バルドス「……来るぞ」


バルドスのかすれた声が、静かに響く。


そして──


ドォォォン!!


空が割れた。


王城を震わせる爆音と共に、サクラの歌声が降ってきた。

====================

[ラブハリケーン 〜恋は突然に〜]

- 作詞作曲:サクラ feat. オーミヤ少年合唱団


[Intro]

 In da house… S・A・K・U・R・A サクラ…

 Yo! Yo! Yo! I’m 《Rapper》♪ I'm 《サクラァ》♪

 ごきげんよう《ラウワ》♪ これは《カルマ》♪

 《まずは》《サクラ》が う《たうわ》 (歌うわ) ♪


[Verse1]

 [さー!行こう] ♪ [最強] の [大王] が[来場]♪

 さながら [太陽] ♪ [体調] は [快調] ♪ 気分は [最高] ♪

 魔王軍[解放]♪今日も[快勝]♪請求書が[罪状]♪

 あきらめろ [大将] ♪ そのクビ[刈り取る]♪

 これが[代償]♪きっと今日は [大凶] ♪


[Hook] *オーミヤ少年合唱団

私の〝怒りが〟炎になる。

私の〝痛みが〟刃となる。

やがて私の〝慈愛が〟皆を包む。

そして私の〝光が〟希望を与える。


[Verse2]

 君たち [敗走] ♪ 濃厚だよ [敗色] ♪

 試される [裁量] ♪ オススメよ [再考] ♪

 受け取るよ [詫び状] ♪ 送るよ [哀悼] ♪

 これは私の [愛情] ♪ 満ちてる [愛嬌] ♪

 でも私の恋は [滞納] ♪ あれ?なんか[泣きそう] ♪


[Hook] *オーミヤ少年合唱団

私の〝怒りが〟炎になる。

私の〝痛みが〟刃となる。

やがて私の〝慈愛が〟皆を包む。

そして私の〝光が〟希望を与える。


Yeah! Yeah! Yo!!! Check it out!!(チェケラッチョー!)

====================


兵士達がざわめく。


ざわ…ざわ…!

 「何この人!?何でこんな状況でラップを歌ってるの?」

 「しかも全部母音で踏んでるぞ!?す、凄い才能だ!?」

 「耳障り気持ち良すぎてやべぇ!?」

 「お前ラップ詳しいんだな!」

 「へへッ!まぁな!凄いプレッシャーで [吐きそう]♪ 」

ざわ…ざわ…!


ユリシア「……あの声……間違いありません。…あれが──常闇のダンジョンのモンスター“サクラ”です……!」

ユリシアが震える声で呟く。


ラウワ王「なんで歌ってるの…めちゃくちゃ韻踏んでる…こえぇ…」

王の額に、脂汗が滲む。


その直後。


空から──怒りの演説が、始まった。


(つづく)


◇◇◇


《征服ログ》


【征服度】:4.5%(王都が視界に入る距離に到達)

【支配地域】:オーミヤ(修繕中)→ 王都(上空より威圧中)

【主な進捗】:

 ・ユリシア、城壁に墜落して敗北報告

 ・王、情報過多で思考停止

 ・サクラ、空から狂気のラップで登場

 ・魔王軍、静かに進軍中(まだ踊ってない)


【特記事項】:

 祈りの空を破って降ってくるのがラップだったときの絶望感。

 王様、韻を踏む敵がいちばん怖いと知る。

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