#095 : 王都決戦☆サクラ in da House
──ラウワ王都・王城・警戒塔。
朝靄が王都を包む中、警戒塔の見張り番は退屈そうに欠伸を噛み殺していた。
最後に敵襲があったのは、三年前。
平和が続きすぎて、最近では「非常鐘の鳴らし方を忘れた」などと冗談が飛び交う始末だった。
だが、その平穏はあまりにも唐突に、終わりを告げた。
王兵A「ん……あれは……?」
空に走る、一閃の雷光。
まるで天から何かが撃ち落とされたような閃光とともに、白煙を上げながら王城の城壁へ叩きつけられた人影があった。
王兵B「なんだ!?ひ、人……!?」
その姿は──白銀の鎧を纏い、金髪をなびかせた女性。
王国最強のS級異端審問官、ユリシア・フォン・ライトハルト。
だが彼女は、見るも無惨な姿だった。
鎧は泥にまみれ、髪は乱れ、頬にはなぜか落ち葉が貼りつき、小枝を持っていた。
王兵A「ユ、ユリシア様!?お怪我はッ!?」
駆け寄った衛兵たちに、彼女はかすれた声で絞り出す。
ユリシア「……王に……伝えて……あの鬼の女が……」
その言葉には、騎士らしからぬ、激しい怒りと悔しさが滲んでいた。
◇◇◇
──王城・玉座の間。
その報告が王に届いたのは、それからまもなくのことだった。
ラウワ王「な、なにィィィィィッッッ!?」
「──おい待て!S級のあいつが、“敗北報告”だと……ッ!?」
王座の間に轟く怒号。
天井の彫刻から埃がパラパラと落ち、廷臣たちが一斉に顔を伏せる。
怒鳴ったのはもちろん、ラウワ王・ガルザム三世。
赤毛に赤ひげ、筋骨隆々の体格と金冠を持つ、“力こそ王道”を体現した戦士王である。
ラウワ王「ユリシアがッ!?ボロボロで帰ってきただとッ!?」
報告を終えた騎士団長・バルドスは、緊張した面持ちで頷いた。
バルドス「魔族との戦闘とのこと……詳細は本人より──」
バタン、と扉が開く音。
そこに現れたのは、件のユリシア本人だった。
泥にまみれ、顔は真っ赤に火照っていた。
ラウワ王「命じたのは“捕縛”だ……それを、お前……」
玉座の間に、怒気混じりの声が響いた。
ラウワ王「なぜ貴様が、泥まみれで戻ってきている……!?」
王は玉座から身を乗り出し、眼前の騎士を睨みつけた。
ラウワ王「“異端の魔物を制す”──それがお前の任務だったはずだッ!!」
ユリシア「……申し訳、ありません……」
ボロボロのユリシアが、かすれ声で答える。
ユリシア「オーミヤにて……鬼族の女“サクラ”と遭遇。敵性を確認後、即時交戦……結果、戦闘不能に追い込まれ──」
ユリシア「……そして……落とし穴に落ち……敗北……しました……」
ラウワ王「なにィ!?」
王が思わず身を乗り出す。
ラウワ王「貴様、戦場で落とし穴に落ちたのかッ!?」
ユリシア「……はい……実に巧妙な罠でした……」(*天の声 : 一直線馬鹿の解釈)
言い訳とも反論ともつかぬその返答に、王は頭を抱えた。
ラウワ王「もういいッ!よく戻った……座っていろ。あとで話は聞く」
王が玉座へ戻ろうとした、そのとき──
バルドス騎士団長が、焦燥を滲ませた声で口を開いた。
バルドス「陛下……もう一つ、報告がございます」
ラウワ王「まだあるのかッ!?今日はやたらうるさいぞこの城は!!」
バルドス「東の地平線より、大規模な砂煙が発生……地鳴りとともに、魔物と思われる影が……」
ラウワ王「魔物……?」
バルドス「はい。確認された数は、ざっと数千以上……種族はバラバラで……整列して進軍している様子が……」
ラウワ王「軍勢か……!」
だが、バルドスの顔には困惑が滲んでいた。
バルドス「ただ、旗も紋章もなく……指揮官の姿も見えません。王国のいかなる敵とも符合せず、まったく“正体不明”であります」
ラウワ王「正体不明だと……?」
王はゆっくりと玉座に腰を下ろし、唸るように呟いた。
ラウワ王「ユリシアは敗北。オーミヤは半壊。そこへ、正体不明の魔物の大軍……」
王は拳を握りしめる。
ラウワ王「──戦…が始まるのか…?すぐに迎え撃つ準備を…」
◇◇◇
──数時間後、警戒塔の非常鐘が遠くで鳴り始めた。
王都が、静まり返った──。
誰もが息をひそめ、祈るように空を見上げた。
バルドス「……来るぞ」
バルドスのかすれた声が、静かに響く。
そして──
ドォォォン!!
空が割れた。
王城を震わせる爆音と共に、サクラの歌声が降ってきた。
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[ラブハリケーン 〜恋は突然に〜]
- 作詞作曲:サクラ feat. オーミヤ少年合唱団
[Intro]
In da house… S・A・K・U・R・A サクラ…
Yo! Yo! Yo! I’m 《Rapper》♪ I'm 《サクラァ》♪
ごきげんよう《ラウワ》♪ これは《カルマ》♪
《まずは》《サクラ》が う《たうわ》 (歌うわ) ♪
[Verse1]
[さー!行こう] ♪ [最強] の [大王] が[来場]♪
さながら [太陽] ♪ [体調] は [快調] ♪ 気分は [最高] ♪
魔王軍[解放]♪今日も[快勝]♪請求書が[罪状]♪
あきらめろ [大将] ♪ そのクビ[刈り取る]♪
これが[代償]♪きっと今日は [大凶] ♪
[Hook] *オーミヤ少年合唱団
私の〝怒りが〟炎になる。
私の〝痛みが〟刃となる。
やがて私の〝慈愛が〟皆を包む。
そして私の〝光が〟希望を与える。
[Verse2]
君たち [敗走] ♪ 濃厚だよ [敗色] ♪
試される [裁量] ♪ オススメよ [再考] ♪
受け取るよ [詫び状] ♪ 送るよ [哀悼] ♪
これは私の [愛情] ♪ 満ちてる [愛嬌] ♪
でも私の恋は [滞納] ♪ あれ?なんか[泣きそう] ♪
[Hook] *オーミヤ少年合唱団
私の〝怒りが〟炎になる。
私の〝痛みが〟刃となる。
やがて私の〝慈愛が〟皆を包む。
そして私の〝光が〟希望を与える。
Yeah! Yeah! Yo!!! Check it out!!(チェケラッチョー!)
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兵士達がざわめく。
ざわ…ざわ…!
「何この人!?何でこんな状況でラップを歌ってるの?」
「しかも全部母音で踏んでるぞ!?す、凄い才能だ!?」
「耳障り気持ち良すぎてやべぇ!?」
「お前ラップ詳しいんだな!」
「へへッ!まぁな!凄いプレッシャーで [吐きそう]♪ 」
ざわ…ざわ…!
ユリシア「……あの声……間違いありません。…あれが──常闇のダンジョンのモンスター“サクラ”です……!」
ユリシアが震える声で呟く。
ラウワ王「なんで歌ってるの…めちゃくちゃ韻踏んでる…こえぇ…」
王の額に、脂汗が滲む。
その直後。
空から──怒りの演説が、始まった。
(つづく)
◇◇◇
《征服ログ》
【征服度】:4.5%(王都が視界に入る距離に到達)
【支配地域】:オーミヤ(修繕中)→ 王都(上空より威圧中)
【主な進捗】:
・ユリシア、城壁に墜落して敗北報告
・王、情報過多で思考停止
・サクラ、空から狂気のラップで登場
・魔王軍、静かに進軍中(まだ踊ってない)
【特記事項】:
祈りの空を破って降ってくるのがラップだったときの絶望感。
王様、韻を踏む敵がいちばん怖いと知る。




