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#093 : 正義襲来☆とりあえず殴った

挿絵(By みてみん)

──ギルドというのは、どうしてこうも人が多いのだろう。


私はオーミヤの冒険者ギルドで、掲示板を前に盛大にあくびをしていた。


サクラ「これ、"凶暴カボチャの駆除"。食べられそう。」

エスト『お姉ちゃん、それはたぶん食用じゃ……』


サクラ「えー、じゃあこっち。"巨大ナメクジの粘液採取"──うん、ないな。気持ち悪いわ」

エスト『お姉ちゃん、もう少し真面目に探そう?』


サクラ「だから魔王討伐10億リフルやろうよ?」

エスト『だから殺す気か☆』


辰夫「今日も平和ですな」

辰美「ですねー」


辰夫と辰美も掲示板を見ながら呟いた。


──そのときだった。


バァァァァァン!!!


ギルドの扉が爆発四散。


ざわざわ!?

「「「「な!?なんだ!?」」」」

ギルド内がざわめく。


白煙の中から現れたのは、白銀の鎧と十字の紋章。

背中に太陽を背負うように、声高らかに叫ぶ女がひとり。


???「この地に"異端"ありと聞くッ!ならば、我が正義をもって──断罪する!!」


サクラ(……ああ、うるさい)


そのまま、正義を叫ぶ女へと向き直る。


サクラ「あら怖い。で、誰に"審問"するつもりなの?白マントさん」

???「貴様だッ!鬼の女!!」


???(ユリシア)「貴様こそが”常闇のダンジョン”を率いた異形の女ッ!この剣と魔法で、正義の審問を下すッッ!! ── ラウワ王直属、異端審問官・ユリシアが裁くッ!!」


叫ぶと同時に、その剣が炎を纏い、雷が唸り、ギルドの天井が吹き飛ぶ。


どうやらユリシアとやらが戦闘体制に入ったようだ。


(早ッッ!?話す気ゼロ!?……はぁ。やっぱり私がターゲットか。面倒ね)


私は軽く髪をかき上げて、その隣にいるエスト様の袖を引いた。


サクラ「……エスト様。少しだけ、耳を貸して?」

エスト『うんっ、なになに☆』


にこにこと顔を寄せてくるエスト様に、私はだるそうに囁く。


サクラ「──ギルドの外に出て……ごにょごにょ……を……お願い」


エスト『あいよ!わかった☆』


ふにゃっとした笑顔のまま、エスト様はぴょんと駆け出す。


そして途中で──


エスト『辰夫!辰美!こっち来て☆』

辰夫「えっ」

辰美「はい??」


エスト『お姉ちゃんのお願いだよー☆』


その一言に、辰夫と辰美の顔色が変わった。


辰夫「……なるほど」("嫌な予感"が全力でしている)

辰美「なんか面白いことやるんだねw」(わくわく)


サクラ「ふふ……小娘楽しそうね。」

私は口元に手を添えて、小さく笑った。


そしてユリシアへと向き直る。


サクラ「はいはいわかった……ったく!うるっせぇなぁッ!!」

──私は考える前に殴っていた。

貝殻ナックルを装着し、そのままユリシアの顔面めがけて拳を振るう!


ドォォォォォン!!!


だが、ユリシアはとっさに剣で受け止めた。

衝撃波がギルド中に響き、ついでに近くの受付カウンターが木っ端微塵になる。


ギルド職員「うわあ!?」「カウンターがあああッ!」

冒険者たち「ギルドが戦場になってる!?」


ユリシア「……いきなり殴りかかってくるとは……!卑怯者め!!」

正義さんが睨みつけながら叫んできた。


サクラ「え?何が?先手必勝よ?──“正義”って叫ぶ奴ほど、話が通じない。だから黙らせろ。ってね?」

私は肩をすくめてニヤリと笑う。


サクラ「まぁ、さっきのをちゃんと迎撃できるなら、手加減しなくて済みそうね?」


ユリシア「ふんっ!」

正義さんが斬りかかってくる。

炎の刃が唸りをあげて、一直線に──!


ユリシア「"聖炎斬"ッ!!」

ズバァァァン!


サクラ「ほいっと」

軽やかに横に跳び、拳で反撃。


サクラ「遅いのよ、正義バカ!」


ガキィィィン!!


剣と拳が激突、火花が散る。だが──


サクラ「チッ」


私の表情が曇る。


ユリシアの剣技は、予想以上に鋭かった。


ユリシア「"雷光連撃"ッ!!」

バリバリバリッ!!

電撃を纏った剣が、一瞬で五連撃を繰り出す!


ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!ザシューッ!!


「いち、に、さん、しー……って多ッ!!ごおおおおおおっ!!?」


私は吹っ飛ばされながら床を滑り、ギルド内を横断した。

舞い上がった埃が視界を覆う。


ギルドの空気が一瞬、静まりかえる。


ユリシア「決まったか……?」

正義さんが剣を構え直し、警戒を解こうとした、そのとき。


── ゴゴ……ッ!

埃の中に、赤い瞳がゆっくりと浮かび上がる。


サクラ「……ふう。終わった?」

私の頭、肩、腹部には、薄く透明な貝殻が張り付いている。


サクラ「ああ、これ?貝殻生成……部分的にね。全身は面倒だから、斬られた箇所だけ」

パリパリと貝殻を剥がしながら、私はにやりと笑った。


サクラ「で?まだ正義ごっこ、続けるの?」


ユリシア「奇妙なスキルだが……正義は、悪に負けんッ!!」


正義さんが跳躍し、天井に向かって剣を振り上げる。


ユリシア「"天罰雷撃"ッ!!」


ゴロゴロゴロ……ドカァァァァァン!!!


ギルドの屋根に巨大な雷が落ち、建物全体が崩れ始める。


サクラ「ちょっと待てよ!!建物壊すなバカ!!」


ユリシア「悪を断つためならば、多少の犠牲は──」


サクラ「犠牲って何よ犠牲って!!修繕費誰が払うと思ってんの!? ── あぁ!もう!マジでムカつく。これ以上ギルド壊されたら仕事受けられなくなんのよ!」


サクラ「外でやりましょうか、正義の騎士様いや、ユリ様」

そう言うと同時に私の手のひらに数十個の貝殻が次々と生成されていく。


サクラ「食らいなさい!シェルバレット!振りかぶってぇー!投げちゃいましたー♪」


ヒュンヒュンヒュン!!

貝殻を弾丸のように連続で投げつける!


ユリシア「"聖光斬"ッ!」


キンキンキン!!

ユリシアは剣で迎撃しながら口を開く。


ユリシア「我が王より命を受けている!!貴様のような異端は──」


サクラ「王様?私、王様に嫌われるようなことはしてないわよ?」


その隙に、長い棒状の貝殻を生成。


サクラ「貝殻バットぉー♪」(*バットの名前は “ルシール” )


一瞬で間合いを詰め ──


サクラ「磯野ぉッ!野球しよう…ぜっ!!!!!」


ブォンッ!!!ガン!


ユリシア「なっ──!?」

正義さんが剣でガードするが、凄まじい威力に吹き飛ばされる。


ドガァァァン!!!


ユリシア「うわああああああ!!」

正義さんはギルドの外まで派手に吹っ飛んでいく。


そのとき ──


エスト『お姉ちゃ〜ん!準備できたよ〜〜☆』


外から聞こえる、エスト様の声。


(よし、タイミング完璧!)


サクラ「あら、ちょうど外に出たじゃない?……さて、後半戦といきましょうか」


私は、ゆっくりとギルドの外へ歩き出した──。



(つづく)



◇◇◇


《征服ログ》


【征服度】:4.05%(“正義”に絡まれただけ)

【支配地域】:オーミヤ(ギルド:天井消失、壁一部崩壊)

【主な進捗】:

・異端審問官ユリシアが登場するも即開戦

・サクラ、問答無用で先制パンチ

・ギルドの天井と受付カウンターが爆散

【特記事項】:

この日のサクラは、話を聞く気がゼロだった。

そして、正義の人はゼロ距離でバットを受けた。

ギルドのHPもゼロに近い。


◇◇◇


──今週のムダ様語録──

『“正義”って叫ぶ奴ほど、話が通じない。だから黙らせろ。』


解説 :

ムダ様の教え。

「正義って叫ばれるとイラッとするから、先に殴っとけ」

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