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魔王がポンコツだから私がやる。これ、私の黒歴史。見るな。【10万PV大感謝!】  作者: さくらんぼん
第07章 : カエデとツバキ──全世界が“理解”を諦めた日。
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#092 : パン屋発☆勇者一行


夕方、パン屋の前。出発の準備が整った。


おっソロ「これ、道中の食料だよ。」

おっソロが大きな荷物袋をカエデに手渡す。



カエデ「おっソロさん……こんなに……」


おっソロ「あと、これも。当面の旅費だよ。あはは!」

おっソロが小さな布袋を差し出す。中にはコインがチャリンと音を立てる。


カエデ「おっソロさん……わたし…わたし…」

カエデの目に涙が浮かぶ。


おっソロ「泣くんじゃないよ!カエデ。」

「お前は強い子だ。一人でここまで生き抜いてきたんだから。それに……勇者様なんだろう?」

おっソロが優しく頭を撫でる。


カエデ「……うん……。」


おっソロ「レベル1でも、勇者は勇者だ。きっと立派な勇者になれるよ」

おっソロが笑う。



カエデ「わたし…もしおっソロさんに出会ってなかったら……」

カエデが声を詰まらせる。


おっソロ「出会えたから、今があるんだ。それで十分だろう?」


カエデ「……うん!」


おっソロ「ツバキちゃん、ローザちゃん、カエデのことを頼む。こいつは優しすぎるから、時々危なっかしいんだ」

おっソロがツバキとローザの方を向く。


ツバキ「その命、預かった…運命ごと!」

ツバキが力強く答える。


ローザ「カエデ様をお守りするのも、私の使命です」

ローザも頷く。


おっソロ「それから……お前が元の世界に帰れる方法が見つかったら、遠慮しないで帰るんだよ。ここはお前の世界じゃない」

おっソロがカエデの肩に手を置く。


おっソロ「でも……でも、もしこの世界に残ると決めたなら……いつでも帰っておいで。ここがカエデの家だ」

おっソロが微笑む。


カエデ「おっソロさぁぁぁん!」

カエデがついに泣き崩れる。


おっソロの胸に飛び込んで、声を上げて泣いた。

あの日、魔物に襲われて倒れていた自分を助けてくれたこと。

毎日温かいパンと寝床を提供してくれたこと。

何も聞かずに受け入れてくれたこと。


おっソロからは優しいパンの匂いがした。

全部、全部、忘れられない。


カエデ「ありがとう……本当に、ありがとう……」


おっソロ「こちらこそ、ありがとう。カエデがいてくれて、毎日が楽しかった」


ツバキ(命の恩人か……私にとってのサクラやカエデのように……)

ツバキも目頭を熱くしている。


カエデ「おっソロさん、私……私、絶対に立派な勇者になって帰ってきます!」

カエデが涙を拭いながら宣言する。


おっソロ「ああ、待ってるよ。レベル1の勇者様!あはは!」


◇◇◇


街の入り口。


3人が振り返ると、おっソロが小さく手を振っているのが見えた。


ツバキ「行こうか」

ツバキが声をかける。


カエデ「うん!」

カエデが力強く頷く。涙は止まったが、目は赤い。


ローザ「これより、聖女様と勇者様の布教の旅が始まります!」

ローザが高らかに宣言する。


ツバキ「聖女じゃないし、勇者はレベル1よ」


ローザ「でも目からビーム出ますよね?それに称号が素敵です!」


ツバキ「『パンくわえて転ぶ者』のどこが素敵なのか……」


カエデ「サクラも、きっとどこかで頑張ってるよね。今度会えたときは、4人で一緒に旅ができるかな」

道中、カエデが改めて呟いた。


ローザ「その時は、もっと賑やかになりそうですね」

ローザが微笑む。


ツバキ「……ふむ、それもまた定めのひとつか……」

ツバキが小さく微笑む。


そして、感動のあまり──


シュンッ……!

……ッんビーーーーーーーーーーーッ♡♡


カエデ「ツバキ!またビーム出てる!」

ローザ「ツバキ様ぁ!?お気持ちは分かりますが!」

ツバキ「せ!せせせ制御不能ッ!この魔眼は感情を喰らい、暴走するッ!!」


振り返ると、街の向こうで看板がまた一つ蒸発していた。



──こうして、聖女(自称否定)と勇者(レベル1)と付き人の布教の旅が始まった。



借金を背負い、友達を探しながら、東のエドノを目指して。


でも3人とも、なぜか楽しそうである──。



(つづく)



◇◇◇


《征服ログ》


(布教対象) 東のエドノ方面の村々

(支配進度) 街を破壊したから据え置き

(備考) 勇者(レベル1)が参戦。サクラ捜索も並行実施予定。

(特記事項) 命の恩人との別れで聖女も感動。

     ビームで看板代がさらに増加。

     修理費は布教費に計上予定。

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